1-8.ラルスの実験
1-8.ラルスの実験
それから、ラルスは良く川原へ行った。
堤防に石を載せて行った。
「ストーンバレット!」
バシュッ、バシュッ、バシュッ。
発動したストーンバレットは何度か練習する内に10発9中くらい命中した。ウォーターボールも使ってみた。ファイヤーアローは川の中の巻き貝を狙って撃った。
「すごいな…。魔法。相変わらず特殊能力が何かは全く分からないけど。しかもほとんど疲れてない。これだけでも結構恵まれているかもしれない。」
「~♪」
数日ラルスは川原へ行くとニコニコしながら帰ってくるようになった。
「あら、ラルスちゃん、最近ご機嫌ね?」
「うん、母さん。川原で、石を投げたり、貝を拾ったりしているんだ。」
――うん、嘘はついてない。
「まあ、そんなのが楽しいの?」
「そうだね。どうやって当てるかとか、速さとか、真ん中に当たるかとかさ。」
「そうなの。ほら、パンケーキが焼けたわ。食べるでしょ?」
「うん!」
そこは五歳児である。
それから数日、ラルスは、川原へ通っていた。
「タモも網も持たずに、どうしてるのかしら?」
ネリナはある日、こっそり後を付けてみることにした。とはいえ、ラルスは時々キョロキョロと周りを確認していた。
――何か企んでるわね、絶対。真後ろだとバレるから回り道しないと。
ネリナは敢えて上流の方へ分かれ、ラルスが遊んでいるであろう所に川沿いに下ってみることにした。
「ストーンバレット!」
バシュッ、バシュッ、バシュッ!
コン、コン、コン!
置いた石たちが飛んでいく。
――すごいわ。
「ウォーターアロー」
ピシャッ、ピシャッ、ピシャッ。
「ファイヤーアロー」
ブシュ、ブシュ、ブシュ。
――何この子。連発して必中なの?
ネリナは、驚いていた。
――いけない…。音を立ててしまいそう。静かに立ち去りましょう。
ネリナはラルスが集中している内に、姿を消した。
その夜、ピウスは酔って帰って来た。
「ジャンとカードで賭けて、銀貨2枚巻き上げたんだ。へへ。美味いものでも食ってくれ。」
ピウスは、無造作に食器棚の手前に銀貨を置いた。
「わあ!綺麗だね!触っても良い?」
「おお、ちゃんと元に戻しておくんだぞ。」
「はい!」
ラルスは、銀貨を矯めつ眇めつ眺めていた。
「さ、明日も見せてあげるから。子供は早く寝るのよ。」
ネリナが促した。
――今日はピウスはお酒が入ってるわ。ラルスの魔法については相談は明日にしようかしら。
「ネリナ、今日も綺麗で、愛してるぜ。」
「まあ、嬉しい。あなたもかっこいいわ。銀貨も稼いできたし。」
――これ、早く寝た方が良いやつだな。
「おやすみなさーい。」
ラルスはさっさと寝室に上がった。
「じゃ、今夜も良いかな?」
「ええ。」
やがて、夜も十分更けて、親の寝室も静かになった頃…。ラルスは眠気まなこでトイレに起きた。そうして、リビングで月明かりに光る白い銀貨をもう一度手にしたのだった。




