1-16.朝
1-16.朝
その夜、アエミリアは大人だけになり、少しワインなどを嗜むと、良い気分になって客間に入った。そして、ブローチを外し、ネックレスや指輪を、鞄の中の宝石入れにそれぞれきちんとしまい込むと、寝間着に着替えて、布団にもぐり込んだ。
――ネリナはネリナで、幸せな生活をしてる。安心したわ。
――それに、坊やもとっても利発でかわいいじゃない。ルクスより賢いかもしれないわ。
――ハープはちょっと良い新品を送ってあげようかしら。
などと考えている内に、まどろんでいった。
そして、翌朝。
「ラルス!起きてきなさい!」
といくら呼んでもラルスが起きてくることはなかった。
「姉さん、すみません。ラルスちゃん、起こしてきてくれません?私はご飯の用意がありますし。」
「いいわ。きっと親戚が来て興奮したのよ。」
アエミリアもラルスの部屋へ上がっていった。
「ラルスちゃん、起きて。朝ご飯よ。」
「すぅ、すぅ。」
ゆすろうが叩こうがびくともしなかった。
何かをぎゅっと握りしめているようだった。そこに手の色とははっきり違和感のある、カワセミ色のブルーがあった。
――ラピスラズリ!
「まぁ、そんなに欲しいなら、ひと晩くらい言えば貸してあげたのに。夜中にこっそり私の部屋から持ち出すなんて、いけないわよ。」
コツンと叩いてみるのだが、ラルスは熟睡したままだった。アエミリアは仕方なく、ラルスの指を一本一本剥がすと、ラピスラズリを回収し、起こせなかった報告をしようとリビングへ降りていった。
「だめよ、全く起きやしないわ。あれじゃ、雷が隣に落ちても寝てるわね。」
「そうなんですよね。深く眠ると全く起きないことが…?それは?」
「ああ、ラピスラズリよ。私、宝石入れの中のブローチの箱にしまったはずなのに。夜中に、持ち出したらしくて、握ったまま寝ているわ。」
ネリナの顔が見る見るうちに、蒼白になっていった。
「どうしたの。」
「姉さん、怒らないで、聞いてくれる?」
「え、ああ、はい?」
「それと、びっくりすることが起きても、必ず秘密にしてくれますか?」
「どうしたの?」
「いえ、お約束をして頂ければ良いんです。」
ネリナは必死にすがるような目つきになった。
「まあ。良いわよ。」
「絶対ですよ。」
「絶対言わないわ。」
「あの、大変失礼なんですが、宝石入れ、こちらで一緒に確かめさせて頂けませんか?ピウスも呼んできますから。」
「何やら大仰ね。良いわよ。」
アエミリアは客間に宝石入れ一式を取りに行った。ネリナは朝の訓練をしていたピウスを呼び戻した。
三人は食卓に着いた。
「あなた、姉さんが、ラルスちゃんの手からこれを剥がして持ってきたの…。」
「な…?大変な失礼を致しました。」
「ううん。あなた。ラルスがそんなことをすると本当に思っているの?」
「いや、あの子は多少頭の回転は速いが、ずるをしたり盗みはしない。」
「そうよ。」
ここまで言うと、ネリナは改めてアエミリアに向き直った。
「姉さん。疑うわけじゃないの。気を悪くしないで。ラピスラズリのブローチの箱を開けてくれない?」
「え、ええ。」
アエミリアはブローチの箱を取り出した。




