1-15.もう一つのラピスラズリ
1-15.もう一つのラピスラズリ
御者は厩の付いた宿に泊まることになり、アエミリアを歓待すべく、ネリナは手料理を頑張っていた。食事の準備の間、ラルスは、アエミリア伯母さんの話を沢山聞いていた。
「へぇ、アエミリア伯母様のお家にも、男の子と女の子がいらっしゃるんですね。いとこっていうのかな?」
「そうよ。ルクスとデリアって言うの。ルクスが8歳、ラルスちゃんより3つお兄ちゃんね。デリアも5歳よ。同い年ね。」
「わぁ。いつか会ってみたいです。」
「そうね…。会えると良いわね。」
アエミリアは、とりあえず頷いた。
「伯母様は何か楽器はなさるんですか?母はフルートを吹いてくれますけど。」
「あら?フルートをしているの?」
「ええ。」
「ネリナはね、本当はハープがとっても上手なの。私がヴァイオリンを弾くといつも伴奏してくれたわ。」
「へえ!ヴァイオリン!聞いてみたい!」
「ウチの屋敷に来ることがあれば、聞かせてあげられるんだけど。お父さんは警備の仕事がお忙しいから長く村を空けられないかもしれないわね。」
「うーん。そうかぁ。」
「ねえ、ネリナ。ハープを送ったらご迷惑かしら?」
「あ、いえ。その、嬉しいです。持って来忘れたので…。重かったですし。」
――なんか理由があるな、これ。
ラルスは察したが突っ込まなかった。
「じゃあ、ラフードルの楽器庫から出て来たら、使えるように直して送るわね。」
「ありがとうございます。」
「今度来る時はヴァイオリンを持ってくるわよ。」
「ぜひ。姉さん。」
などと言っている内に、ピウスも帰り、夕食会も楽しく終わった。素朴なポトフを出したが、村の人からもらった産地直送の野菜は、伯爵領に運ぶものよりどれも実が大きく味も良かった。
「まあ、田舎だと思っていたけど。田舎は田舎で美味しいものを食べているのね。」
「田舎だからこそですよ。義姉さん。」
ピウスが片目をつむった。
食後はお茶を飲みながら、アエミリアがラルスを膝の上に載せて、持参した王都の絵本を読み聞かせてくれた。ラルスは、アエミリアのブローチをチラチラ見ながら、絵本に聞き入っていた。
「そんなに気に入ったの?」
「う…うん。」
「明日返してくれるなら、持っていても良いわよ。」
「あ、いや。良いんです。もう少しだけ…。」
ラルスは、光にかざしたり、裏側の細工を確かめたり、台座と宝石のつながりを押したり引いたりして、興味深そうに見ていた。
そして、目をこすりだした。
「あら、おねむかな?もう休んだら?」
「うん。アエミリア伯母様、これ、ありがとうございました。」
ラルスはアエミリアにラピスラズリのブローチを返した。アエミリアはしっかり受け取り、また胸元に付け直した。
「それでは、おやすみなさい。」
ラルスは、そうして子供の寝室へ上がっていった。
しかし、なかなかすんなりと寝付けなかった。
――すごいブローチ、あの、ラピスラズリ。綺麗だな。あんなのが母さんにもあれば、良いのにな。
その時、すさまじい閃光が手元から発された。が、ラルスは、確かめる気力もなく、気を失うように寝入っていった。




