1-14.伯母
1-14.伯母
風光明媚な田園風景――といえば聞こえは良いが、畑と道しかない田舎である。
その光景に場違いな四頭立ての馬車がゆるゆると集落の方に向かっていた。
ラルスの住んでいるところは、ディアナの村といい、農業や畜産が主たる典型的な農村である。農民たちは、土の世話が巧みであり、野菜も一回り大きく実も美味しい。
「な~んにも、ないところね。」
馬車の中には見事な金髪をまとめている、貴婦人が座っていた。灰色の瞳を持ち、どことなく、ネリナに似た面持ちである。
御者は道行く人に道を尋ねながらゴトゴトと馬を進めていった。
やがて、ピウスの家の前にその馬車は止まった。
「ここかしら?」
御者が恭しく扉を開けるとその手を取りながら、水色のワンピースの裾をつまんで、貴婦人が降り立った。
洗濯物を干していたネリナがそれを見つけ、駆け寄ってきた。
「姉さん!」
「ネリナ!」
二人ははっしと抱き合った。
「遠い中、ようこそお越し下さいました。狭い家ですが、どうぞ。」
「ありがとう。」
ピウスの家は二階建てである。田舎の広さを生かして、部屋数はあるのだ。が、貴婦人には狭いらしい。
「まあ、こんな小屋に住んで…。お洗濯もお前がしているの?」
「ええ。庶民ですから!使用人はいません!」
ネリナは張りのある声で応えた。
「ささ、姉さん、お茶が入りました。」
「ありがとう、頂くわ。」
そこへラルスがやって来た。
「ラルス!こちら、私のお姉さん。アエミリア伯母様よ。ご挨拶なさい。」
「アエミリア伯母様、ラルスと申します。ようこそおいで下さいました。」
ぺこりと頭を下げた。
「まあ、この子がラルスちゃん?ちゃんとご挨拶も出来て、かわいいわね?抱っこして良い?」
「うん!でも重たいよ?」
「ふふふ、構やしないわ。ウチにもおっきいのはいますからね。よいしょ。」
アエミリアはラルスを抱き上げた。
ラルスは、アエミリアの肩に、真っ青なラピスラズリのブローチを見つけた。
「わあ!綺麗!」




