表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凪のしおり   作者: karo
6/10

6.


──そう決意したまではよかったのだけれど。


翌朝、ベッドから起き上がった瞬間から、私の大パニックが幕を開けた。


「……何を着ていけばいいの!?」


クローゼットを開け放ち、ハンガーに掛かった服を次から次へと引っ張り出す。

いつもは職場の制服があるし、通勤服なんて誰も見ていないから「動きやすくてシンプルなもの」なら何でもよかった。お休みの日の映画やカフェ巡りだって、自分がリラックスできればそれで満足だったのだ。


手持ちの服は、どれも着心地を重視した無難なデザインばかり。

あまりに気合の入ったワンピースを着ていけば、職場の同僚に見つかったときに「神上さん、今日デート?」なんてからかわれるに決まっている。かといって、シンプルすぎて普段着感が強い格好では、彼と会うには少し恥ずかしい。


「これはシンプルすぎるし……あ、これはちょっと気合が入りすぎ……! ああっ、もう、普通って何!?」


ベッドの上が服の山で埋め尽くされていく。鏡の前で何度も合わせては首を振り、最終的に落ち着いたのは、ライトブルーのシャツにベージュのフレアスカート。

いつもは無造作に結ぶだけの黒髪も、今日だけは少し丁寧に櫛を通した。

……よし、これなら「ちょっとそこまで本を読みに来た一般の利用者」に見えるはず。


身支度を終え、最寄り駅へ向かう電車に揺られていると、今度は別の問題が頭を擡げてきた。


(……待って。私、図書館のどこで待てばいいんだろう?)


一度考え出すと、思考のループが止まらなくなる。

カウンターの周りでウロウロしていたら、職場の同僚に「神上さん、休みなのに何してるの?」と怪しまれるのは確実だ。

じゃあ、彼が向かうであろう『今週のおすすめ本』の特設コーナーの前にずっと立つ?

……いやいや、それじゃあ完全に待ち伏せしている不審者だ。彼だって気まずいに決まっている。


(……どうしよう、どこに席を取ればいいの!?)


一般書架の奥にある、外の雨が見える窓際の閲覧席。あそこなら、館内全体がそれとなく見渡せるし、本を読んでいるふりをしてカモフラージュできるかもしれない。でも、もし彼が私に気づかずにそのまま帰っちゃったら……?


気がつけば、電車は図書館の最寄り駅に到着していた。

心臓が口から飛び出しそうなほどの緊張と、手に汗握る慌てぶり。

家でのんびり映画を観ているはずだった私の休日は、人生最大のミッションへと変貌を遂げていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ