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挿絵(By みてみん)


オグデンの森を使い魔に探索させて

「魔物達がスキル稼働する際にチャクラで生じる魔法陣を看破・書き写す」

という作業は、その後も頑張って進めた。


「植物型魔物の『光合成』が『魔力の物質化』として作用する(!)」

事を知り、不可視の使い魔を一部物質化する事に成功してからは

「私が戦うより不可視の使い魔に戦わせた方が強い」

と判明したし


「エルフにも通用する」

と分かって以来

「使い魔達の強化は重要課題だ」

と思ったのだ。


最近はモグラ型魔物から「千里眼」スキルの魔法陣を、芋虫型魔物から「共有化」スキルの魔法陣を得た。


そこで

(この2つって組み合わせれば「監視の魔法陣」のようなものが作れるんじゃないかな?)

と思い、試しに組み合わせてみた。


それを不可視の使い魔に取り付けたアンクレットとお揃いに小さな手鏡状の魔物素材に描き込んだところーー


期待通りに「監視の魔法陣」としての役目を果たせるようになった。

使い魔の視覚・聴覚情報が魔法陣の表面にテレビ画面のように反映し出したのだ。


それによって使い魔の視覚・聴覚情報を直接自分の感覚で受け取るのではなく、魔道具へと反映させる事ができるようになり、精神的負担が随分と減った。


複数の「監視の魔法陣」を覗き続ける事で、限られた時間で多くの情報が得られるようになった。


(これに更に録画・再生機能が付けられれば良いんだけど…)

と思うものの、そういう用途に使えそうな魔法陣は今のところ見当たらない。


古語を使った代替魔術では

「録画」

という言葉自体無い。

道のりは遠い…。


******************


休日も師匠のジョエルの診療所で働いているので、ほぼ毎日病人や怪我人とばかり接している事になる。


この所、王立騎士団の非番騎士がジョエルの診療所によく来る。

「非番の日の怪我は騎士団医務室の利用は認められない」

とかで、非番の日の怪我は自費で民間の診療所へ通って治すものらしい。


その理屈は分かるのだが…

「またですか…」

と、度々押しかけて来るマーティー・ブランドンとエルマー・グローバーに対して溜息が漏れた…。


師匠は

「よっぽどお前の事が好きなんだろうなぁ〜」

とニコニコ顔だ。


フェアバンクス家は王都に本家を置く家だが、スミッソン家の血が入った家であり、西部のグルゴレットヒル侯爵派の派閥だ。 


同じ派閥の騎士が診療所に度々通って来てくれて治安面で安心なのだろう。


「師匠は診療所の安全のためなら平気で私を売りそうで怖いです…」


「良いご縁じゃないか。ブラックウェル伯爵家にメートランド子爵家だぞ?

長男じゃないから爵位を継ぐ可能性は低いがマーティー卿は既に騎士爵。エルマー卿は王太子殿下のお気に入りだぞ?

優良物件じゃないか。何が不満なんだ。

婚約者がいた頃ならともかく、もう自由なんだ。女は愛されてなんぼだぞ?

ケチくさい事を言わずにお試しで付き合ってみれば良いじゃないか」


(…エルマーさんが本当にただの子爵家の次男のようには思えないんだけどね。…何せ彼には、彼に気付かれないように後を尾けてきてる護衛がいる)


「…そういうセリフを言う事で師匠は彼らから幾らもらってるんですか?」


「………何の事かな?」

とトボける師匠の目は泳いでいる。


「フェアバンクス家は銭ゲバ一族だとは聞いていましたが、師匠も生粋のフェアバンクスなんですね…」


「…お前だってフェアバンクスのくせに」


「今はフェアバンクス姓ではありません」


「そう言えば、お前はフェアバンクス家の容姿とは違うよな…」


「オルビス男爵家の最期の当主、ローレンス・ミラの少年期の容姿に似てると言われた事があるので、そっちの血筋を引いた隔世遺伝でしょうね」


「なるほど。西部モルガン家の隔世遺伝か…」


「西部モルガン家?」


「なんだ、知らないのか?ローレンス・ミラは婿養子でオルビス男爵になったんだ。出身は西部モルガン家の出身だ。

優秀なエンチャンターだったのが仇になって、上位貴族をエンチャントにかけた罪で破滅したんだ」


「獄死だったんですよね?爵位も財産も全部取り上げられて…」


「しかも冤罪でな…。元々東部貴族は西部の人間に対して悪意的だったし、何より見下してくる。

東部貴族が王家の後ろ盾として力を持ってた時代はとっくの昔に終わってるのに、その昔の全盛期の夢を捨てきれないんだろうさ。ろくでもない連中だよ」


「壁に耳ありですよ…」


「結界術だけは自信がある」


「そうでしたね…」


「ともかく、ローレンス・ミラは優秀過ぎるエンチャンターだったが故に、北部吸血鬼どもに邪魔だと思われて、北部吸血鬼に操られた人間達から殺されたのだと、知っている者達は知っている」


「人間のエンチャンターが優秀過ぎると、確かに邪魔でしょうね…」


(そう言えば、昔、アルバート先生が言ってたような…。吸血鬼が引きこもって人間と関わらずにいたら人間側のエンチャンターのエンチャントが吸血鬼の暗示能力の影響を上回るようになるって…)


不意に気になった。


何故、北部吸血鬼達がここ100年くらい積極的に南部進出し出して、南部の主だった貴族家を乗っ取ったのか…。

勿論、バルモーラル公爵城の地下遺産庫は魅力的だったろうけれど、何百年も放置し続けてきていて、急にここ100年で興味を持つのはおかしい…。


(…本当にローレンスの死に北部吸血鬼が関与していたのだとして…。吸血鬼は、そうした「人間のエンチャンターを殺す」という行為を内心で忌避しているんじゃないの…?)


考えてみれば、暗示という側面でも、洗脳という側面でも、吸血鬼は圧倒的に人間よりもアドバンテージがあるのだ。

それなのに人間達への影響力という側面で人間のエンチャンターに負ければ屈辱だろう。

しかも負けたから殺すなんて更に屈辱の上塗りだろう…。


ーー直感的に感じた。


(…ローレンスを死なせたのは、イアンおじ様だったのかも知れない…)


初めて会った時のイアンは、私の顔を見て呆然としていた。

単に昔好きだった相手に似た面影に見入ったとか、それだけでは説明のつかない複雑な表情をしていた。


振り向いてくれなかった相手への憎しみの他に、後悔に似た感情を、あの瞳に宿していた…。


(でも、そんな事って、あり得るの?…好きだった人を自ら死へと追いやって、後から後悔するだなんて事…)


私には分からない心理だ。

だけど、あの時のイアンの複雑な表情は、私には理解できない心理ゆえのもののように思えた…。



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