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挿絵(By みてみん)


その後、エルフ側からの追加の襲撃はなかったので多少は安心した。

やはりエルフの人材も無限じゃない。


7年前にイアンを襲ったエルフ達も返り討ちに遭って死んでる。

(イアンも大怪我をしたらしいが3人組をやった)


ジャンを襲ったエルフ達もエヴェリー達が狩り返している。

(そのエルフ達も3人組)


40年かかって100倍超加速を身につけたエルフ達をイアンが処分してくれていたお陰で、その後の「狩り返し」は比較的楽になっている。

個体差はあるが、戦闘向きのエルフも10倍〜40倍くらいまでしか使いこなせないものらしい。

(エヴェリーとダンカンの超加速がやはり40倍くらいなので実力的に拮抗していた)



「…2、3年は襲って来ないだろうし、襲って来たとしても今回逃げられた魔術師の女エルフさえキッチリ始末しておけば脅威になるという事もないだろう」

とダンカンがわざわざ、また国立総合診療所へやって来て事後報告してくれた。


何故かこれまで毎日通って来てたストーカーの皆様はなりを潜めている。

(多分、ダンカンが何かした…)


本当に、平和になったと思う。

毎日大したストレスもなく診療所で扱き使われるだけの日々が続いて、少し気が抜けそうになる。


「そう言えば、お前、雰囲気が変わったよな?やっぱり『先祖返り』の血が【覚醒】したせいか?魔力量も増えてるんだろ?」

ダンカンは意外に鋭い。


「魔眼持ちじゃなくても気がつくものなんですね?」

(魔力が増えたのは良いけど、魔力水と血しか摂取できなくなってて、食費がかかり過ぎてるんだよね)


「…人間からすると『近寄り難くなった』って感じるんだろうが、亜人や魔術師からすると『何故か気になってしまう』感じで存在感が増してる気がするんだよな。

俺は心配だよ。せっかくノークスのバカとの婚約が解消されてくれたのに、お前を誰かに掻っ攫われそうな気がして、落ち着かない…」


「掻っ攫われるも、何も、私は貴方の婚約者でも恋人でも無いんですが?」


「そうか?警備隊の連中は素直で良い奴らだったぞ?『ああ、あの可愛い子が恋人なんですか。そりゃあ付き纏う奴には腹が立ちますよね?分かります』とか言ってくれて、俺達の仲を祝福してくれたんだ」


「警部隊が騙されやすい人達の巣窟だと、この国の治安が心配なんですが…」


「嘘も真実に変われば何も問題ない」


「…真実に変わる可能性が無いなら、嘘はただの嘘なのでは…」

溜息を吐きつつ、事実指摘させてもらったが…


「世の中にはポジティブな願望を現実化させる作用があるらしいぞ?ちゃんと願いは毎日繰り返し『叶った場面をイメージして、叶ったかのような心持ちで過ごす』と叶いやすいんだ」


糠に釘だった…。


******************


多芸自慢の読心術師ヴィクター・モルガンが王都にやって来た事で

「ヴィクターは情報収集が得意分野で、ウォーレスともアルバート先生ともまめに連絡を取り合っていた」

事が分かった。


学院寮の多目的室まで来た時には、ウォーレスの従者のレックスに対しても殊更気にかけてやっていた。


一方でーー

ヴィクターは何故か私にだけ不自然に避けているようだった…。


いちいち口パクで

「バ〜カ」

とか言われるよりはマシだが…


視線が合うと硬直してから、ぎこちなく目を逸らす、みたいな事をされると気になる。

変な嫌がらせを目論まれていないか心配だ…。


王都に嫌なヤツが増えた事で確実に心労が増えたが、ヤツのお陰で収穫があったのも確かなので、ヴィクターの悪口を誰かに言おうとは思わない。


ヴィクターがもたらしてくれた収穫ーー。

「イーリーの本当の顔」

が描かれた似顔絵だが…


学院に居た間に変身していたイーリーの顔は

「無邪気で明るそうな美少女」

だったが…

素顔の方はもっと

「影のある大人しそうな顔」

だった。


「こういう大人しそうな顔の人が、あんな風に虚言癖があって、あんな風にナチュラルボーンに誣告加害を繰り返してたのかぁ…」

と思わず感慨に耽ってしまった…。


ブスではない。

綺麗系の地味目清楚系といったタイプ。

敢えて言うなら花がない。

大人しそうで控えめそうな細面細身の女性。

15歳より歳上に見える。

一見すると誠実そうにさえ見える。

(こういうタイプの人が好きな男性とかも居るんだろうな…)


「そう言えば、ノークスが結婚した侍女って、どんな容姿の人か知ってますか?」

ウォーレスに尋ねると


「お前は知らないほうが良いと思うぞ…」

と言われた。


思わず首を傾げた。

妙な雰囲気を感じる…。


「レックス様も知ってるんですよね?その侍女の顔」

と矛先をレックスに振ると


レックスはウォーレスの方を見て

ウォーレスが首を横に振るのを確認してから

「スミマセンが俺の方からは何とも…」

と言葉を濁した。


そんな風に隠されると気になる…。

「確かエルシーって名前で、昔はジャン様のお気に入りだった子ですよね?」


レックスに詰め寄ると

「(ハァーッ)…勘弁してくれよ」

と八の字眉で言われた。


「…アルバート先生に訊きます」

とクルリと踵を返すと


「あーっ!分かった!話すから!先生から聞くのはやめろ!」

とウォーレスが折れてくれた。


(…にしても、私がアルバート先生に訊くと何かこの人達に不都合があるんだろうか?)

と気になった。


ウォーレスは

「…別に何も悪い事はしてないんだが、多分、レックスがしてる事をアルバート先生から聞くのと、当人から聞くのとでは印象が変わると思うからな。

ここはレックス当人に話をさせるのが丁度良いだろう…」

と、何とも回りくどい言い方をした。


「レックス様が何か不正をしてるという事でしょうか?」


「「………」」


「確かエルシーの話をしてた筈ですが、どうしてレックス様の話になってるんでしょうか?」


「それなんだが…」

レックスが苦虫を噛み潰したような表情になって

「実は…」

と語り出した。


「実は、本物のレックスは、すごいバカなんだ…」


「………」

(コイツ、何言ってんだ?)


レックスの傍らではウォーレスがウンウンと頷いている…。


咄嗟に

(「本物のレックス」って言葉が出るって事は、コイツは「偽物のレックス」って事だな)

と警戒し、魔眼で偽物レックスの魔力回路を見るが…


エルフではない。

吸血鬼特有の魔力回路だ。

不審者ではあるが敵ではなさそう…。


「…ウォーレスは『どうしても王立学院で学びたい!』という意向で頑張って勉強してたし、俺もそうだった。

だが貴種は『独りで王立学院に入学する』事を禁じられている。

本物のレックスの頭が良ければ、ウォーレスは普通にレックスと入学できた筈だが…。

とてもそんな未来は来ないだろうと誰の目にも分かるくらいに本物のレックスはバカだったんだ…。


ウォーレスが1年間入学を先延ばしにして、俺と一緒に入学してくれれば、俺の方でも万々歳だったんだが…

ウォーレスは1年間も待ちたくなかった。

それで昔家庭教師をしてくれてたアルバート先生に相談したんだ。


その時に、アルバート先生の方は俺の事も本物のレックスの事も当然知ってるものだから、ある事実に気が付いて、それを指摘してくれた。

つまり、俺とレックスは声質が似てるので、変身術で入れ替わって過ごしてもバレないんじゃないかって事をだ…。


魔眼持ちのノークスが王国騎士団入団のために王都に行けば、ファレル伯爵家の俺と会う事もなくなるのでレックスが俺に成りすましてもバレない。

逆に貴種は北部から出る際に色目を変えるために変身術を使うのが伝統だから、俺が王都でノークスに会っても顔を変えていると疑われる心配もない。

何せずっと一緒にいるウォーレス自身が偽物レックスの存在を許容してるんだから、レックスをよく知らないノークスには疑いようがないだろ?


それで上手い事入れ替わって、何の問題もなく王立学院に入学してレックスとして学んできたんだよ…。

予定としては、俺は卒業後は本来の自分、ジャン・ファレルとして王国騎士団に入団するつもりでいる。

今現在は、お前達より一つ歳下の14歳だから卒業後すぐに入団すれば15歳での正規入団になる。

本物のレックスはその時に王都に来て俺と再び入れ替わる予定だ」


そう語ってくれたレックスーー

もといジャン・ファレルの顔を見ながら、私は呆然となった…。




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