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挿絵(By みてみん)


糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!


脳内語彙が崩壊している。


ひたすら糞!という悪態を脳内でリフレインし続けながら

レルフへと斬りつけようとしたし

レルフからの攻撃も避け続けた。


しかし、こちらの奮戦虚しく

レルフがほんの少しの隙で投げナイフを取り出し

すぐさま斬りつけてきた。


ザクッとーー

右耳が切れたのが分かった。


縁が少し切れたとかではなく、耳たぶ自体が根本からやられた。

切り落とされてはいないが、少しプラプラしてる状態か。


痛いとか熱いとかの感覚はあるが

やっぱり脳内では


糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!

と語彙能力がゼロの状態でひたすら糞!が連発されている。


首筋も斬りつけられた。

こちらの攻撃は当たらず

相手の攻撃だけが一方的に入る。


涙が出そうになる。

自分が弱いのが悔しくて呪わしい。


(力が欲しい!コイツを殺せる力が!)

そう思いながらも、私は死を予感していたのだと思う…。


不意を突かれて

(あっ!!!)

と思った次の瞬間には


グッサリと心臓にナイフを突き立てられてーー


驚きに目を見開きながらも

ツツーッと涙が頬を伝った。


強くなりたいと…

あんなに願ったのに…


ヴァンパイア・ハンターを狩り返すのだと…

あんなに決意していたのに…


「…弱いから、何も叶わなかった、んだな…」

と自嘲の呟きが漏れた…。


ああーー


歌が聞こえる。


この世の全ての音が遮断されたかのような静まりかえった空間で、あの歌が…

あの歌だけが聞こえる…。


ある朝早く

夜明け頃

少女の唄が聞こえた

谷のふもとから

嗚呼、私を裏切らないで

嗚呼、置いて行かないで

何故そんな仕打ちができるの?


やっと思い出した。

聞き覚えがあると思っていたら【地球世界】の歌だった。

英語の歌詞がグレイス語に超訳されてて気付かなかった。


前世では普段から音楽を聴くような優雅な趣味は無かったので、たまたま動画サイトの投稿を視聴していて聞き齧った曲だ。


(コーネリアおばあ様も【地球世界】の出身だったんだな…)

と分かった。


急に視界にモヤがかかる。

コーネリアおばあ様の声が聞こえてくる…。


「…それにしても驚いた。この子、先祖返りだったんだね。なのに生まれてから今までずっとエリザベスと同じ下位吸血鬼レッサーヴァンパイアの色目で居たのか…。

それこそ無自覚に変身術を使っていて、痕跡を亜空間へ隠している。

かなり高度な術を無意識で使って、今まで、エリザベスの色に擬態してたんだ…。本当にすごいよ…」


「…この子はどうなるんですか?」

ママの声が聞こえた。


「…昔、記憶喪失のミミックが孤児院に紛れ込んでた事があるんだ。そのミミックは自分を引き取ってくれそうな優しそうな大人の姿を真似て、その大人の子供版みたいな姿に擬態してしまって、自分がミミックだって事にすら気付かずに、引き取ってくれた養父と仲良く暮らしてたよ。

だけど何かの弾みで自分がミミックだって思い出しちゃって、このままだと大好きな父親を殺しちゃうかも知れないって思って、独りで森へ帰っていったんだ。

…エルフが人間に成りすまして暮らす際に、『自分の子供版をミミックに演じさせて、子供の戸籍で人生を生き直す』というやり方は、用済みになったミミックを森に捨てる事態に繋がってたし、背後には、そうした問題を生み出していた…」


「それは…ニックとマックの事か?」


「そうだよ。ショーンも覚えてたの?」


「…この子はミミックじゃありませんよ」


「愛されたくて、親そっくりに擬態するところが、あのいじらしいマックにそっくりだなって思い出したんだよ」


「ニックとマックは仲良く暮らし続けた筈だよな?」


「…それはニックが森まで迎えに行ったからだよ。たとえ人間じゃなくても親子なんだって啖呵切られたから、私も絆されてしまったんだ…。

それにミミックは吸血鬼同様に血を飲んで生きる魔物ではあるけど、スライムに毛が生えた程度の戦闘力しかないし、生存に必要な血液しょくじの量も少ない。

血を浄化・デトックスして飲むなら、それこそ微量で充分な栄養も摂れる。

必ずしも人間の血である必要もないし、ミミックの飼育は楽だよ」


「『種族が違っても親子だ』って思いを貫いたんですね…」


「…今は『嘶く若獅子亭』はマックが大将だよ。ニックはとっくに亡くなってるからね」


「…上位吸血鬼せんぞがえり下位吸血鬼レッサーヴァンパイアは同じ種族だろう?」


「…いいや、同じではないね。上位吸血鬼、つまり私のような業深い生き物は本当に血しか受け付けないんだ。魔力水以外は水すら飲めない。すごく不便だ。

そんなだから吸血鬼だとバレる可能性も高い。だから上位吸血鬼は幼いうちは周りが余程強くないと狩られる確率が高くなる。

…お前達が私を呼ぶのが、もう少し遅ければ…肺炎で死んだこの子を新大陸で蘇生させて、上位吸血鬼のまま私の手元で育ててやれたものを…。

死ぬ前に回復させてしまってから、こんな風に髪の色と瞳の色が変わるだなんて…思いもしなかった…」


「…そう言えば、お祖母様が描かれていたという竪琴の絵の魔道具。今は白髪・赤眼の女性が描かれているんですよね…」


「ああ。見させてもらったけど、絵の女性の顔はこの子によく似た顔だし…。色目もこの子の本来の色目だし…。この子が『竪琴の持ち主』で間違いないだろうね」


「…グルゴレットヒル侯爵家は絵の女性をどうしたいんでしょう?」


「レジナルド様の側室に、とか、そういう話になるんじゃないか?」


「…この子の姿、元に戻せませんか?」


「…変身術でただ変身させるのは得意だけど、『術の痕跡を亜空間へ隠す』ような高度な隠蔽術は苦手なんだよ…。

そういうのはハワードとウーナ・アイビーが得意だったけど、ハワードが休眠期の今は誰も使えないんじゃないかな?」


「…でも、この子、変身術の痕跡を亜空間へ隠すような高度な術を使ってたって…」


「だから、こそ、この子は特別なんだろうね…。私の曾孫でもあり、ウーナの曾孫でもあるこの子は吸血鬼の先祖返りの血だけじゃなく、エルフの天才魔術師の血も引いてるんだ」


「才能の遺伝は有り難いですね。…性格まで遺伝されてると困りますが…」


「…一応、強めの暗示をかけておくよ?この子の色目がエリザベスと同じ赤毛に菫色の瞳の持ち主だって…」


「有り難うございます…。お祖母様…。愛してます」


「私も愛してるよ。ベス。…お前も特別な存在なんだ。…私はずっと、お前が生まれる前から、お前を愛してたんだから…」


そんな会話が聞こえて場面が暗転した…。



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