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真っ暗な闇に意識が引きずられそうな状態ーー。
それでも目を開けて、自分の状態を確認しようとすると…
目の前にレルフの死体が転がっている…。
他には誰の姿も見えないが…
通常の剣劇の音とは違う甲高い音が聞こえるので
(超加速で戦闘が行われている…)
という事は分かった。
(誰か助けに来てくれた?…それを待ち伏せしてたエルフの大人もいた…?)
と状況が推測できた。
不思議だ…。
私の回復力だと、心臓を貫かれたら普通に死ぬ筈。
なのに生きてる。
白昼夢を見ていたのか?
夢の中の会話の内容は気になる。
(「先祖返り」だった?…だから死なないで済んだ?)
耳を触ると、ちゃんと回復してる。
胸に穴も空いてない…。
動ける。
身体が軽い。
(これなら、殺れる…)
超加速を稼働すると、今まで以上に世界がゆっくり動いているように思えた。
全てがスローモーション…。
意外な事に、エヴェリー・モルガンとダンカン・モルガンが「エルフ」と戦闘していた。
耳が尖って、緑色の髪で、本当にエルフだ。
(「変身術で消費し続ける魔力」さえ惜しんで、超加速用に魔力消費を全振りしてるんだろうな…)
と分かった。
それくらい超加速は魔力消費が激しいのだ。
エルフは3人組。
大人のエルフ達。
これまでレルフ達と休日に接触していた連中なのだと思う。
今まではイケメン冒険者風の人間の姿だったので
「やっと素顔を晒してくれたんだね…」
と思った。
「フック、おいで」
私は不可視の使い魔の身体を一部物質化する事にした。
羽根の縁や、嘴の先、鍵爪、それらを刃物化するのだ。
それで敵の身体に高速で直撃させると、敵の身体にはカミソリが貫通したような傷がつく。
魔力をふんだんに纏わせて
使い魔にも超加速をかけてやる事で
貫通力が上がるし
攻撃力も上がる。
私が起き上がったのに気付いたエルフの1人が
「死に損ないめ!」
と舌打ちして、こちらへ向かって来たので…
私が懐剣を振るって直接攻撃する前にフックをけしかけた。
「貫け!ヤツが倒れるまで!」
フックは私が指示を出し終わる前に動き出していた。
案外、使い魔への指示はテレパシーでいけるのかも知れない…。
私自身が戦うよりフックに敵を貫いてもらったほうが断然強い。
(レルフがフックを使う準備をする時間を与えてくれてから襲ってきたのだったら、みすみす刺されはしなかったのに…)
と、今更思う。
エルフ側は不利を悟ったらしく
「退け!サモナー達のところまで逃げて合流するぞ!」
と撤退を口にしたが
その弱気が、致命的な隙でも生み出したのか、次の瞬間には
「死ねよ」
とエヴェリーが告げながら、エルフを袈裟斬りに切り裂いていた。
私に襲いかかったエルフのほうは、既に穴だらけになっていて満身創痍だ。
それでも
「外道め…」
と恨めし気な目付きで私を睨む悪意は少しも翳りを見せない。
「なんでアンタ達はそんなに吸血鬼を憎むんだろうね…。私はただ生きてるだけなのに…」
私がそう言うと同時にーー
フックがエルフの喉を貫通してくれて、ようやくエルフは白目を剥いて倒れてくれた。
その後すぐに
「加勢は要るか?」
というエヴェリーの問いに答えるかのように、ダンカンは無言でエルフの首を刎ねた…。
(惨劇だな…)
と、我に返って、改めて思った。
「…お前、結界張るの得意だろ?…ここら一帯を結界張って誰も来れないようにしてくれないか?」
ダンカンに言われて
「…そうですね。こんなの見られたら吸血鬼の悪評が更に広められますね…」
と頷き、言われた通りに結界を張った…。
外部との接続を遮断する結界をーー。
結界の中ではせっせと後片付けした。
エヴェリーがウォーレスに化けたまま死んだレルフの変身を強制解除して、エルフ達の死体を内部空間拡張収納袋に収納してくれた。
(後で捨ててくれるらしい)
それにしてもーー
血とかは「清掃」「浄化」で何とかなるが、壊れた椅子や抜けた床はいかんともしがたい…。
「とりあえず、抜けた床の上には板を置いて、認識阻害で抜けてない映像を被せておこう」
「椅子も壊れてない状態の認識阻害をかけておいて、誰かが腰掛けた時に初めて壊れたかのように演出しよう」
という方針で対処。
「お前は、そういうの得意だよな…」
とダンカンに褒められた(?)ので
「こういう姑息な術の方が戦闘より得意なんです」
と事実を述べておいた。
エヴェリーは
「何となく、お前の正体がバレてる気がしたんで、昨夜から『監視の魔法陣』で監視してて良かったよ。案の定、エルフが釣れた」
と言って、ホッとしたように息を吐いた。
結界の外から
「ルビーさん!無事ですか!」
という声がしている。
アルバート先生の声だ。
「先生!」
即座に結界を一部解いて声をかけた。
「来てくれたんですね」
(…心配してもらえるって有り難い…)
「無事で良かったです…。超加速が使われた戦闘だと、到着前に決着がついてしまうだろうから、もしかしたら貴女の弔い合戦をする事になるのかと、心底心配しました…」
よく見てみると先生の目には涙のあとがある。
(私が死んだと思ったんだな…)
と分かった。
「…それにしても、その髪と瞳…。アルビノだったんですね…。『竪琴の君』と同じ…」
そう指摘されて
(えっ?)
と首を傾げた。
俯瞰術で急いで自分の姿を見てみた。
すると先生の指摘通り、白髪赤眼の自分の姿があった。
当然ーー
私は再び変身術で茶髪・茶眼に変身した。
(目撃者はいないよね?)
と思いたい…。
エヴェリーは
「同時多発的な襲撃だったのかも知れない。別の場所で貴種が襲われてる可能性が高いので、もう行くぞ」
と言って、サッサと姿を消した。
ダンカンは
「…お前とゆっくり過ごしたかったんだが、今日は非番じゃないし、エヴェリーに付き従うしかないんだ。残念だ」
と言ってエヴェリーの後を追った。
先生は
「今日は『欠席する』と転移魔法陣で欠席届を出します。ルビーさんに体調の変化があったら大変ですから」
と言い張った。
(過保護だ…)
だけど、この人は多分、不可視の使い魔を通して、私が攻撃されて身動きできなくなった状態を見た筈だ。
レルフに心臓をナイフで貫かれた場面を…。
もしも立場が逆だったら…
先生がナイフで心臓を貫かれる場合を私が目にした側だったら…
ショックだと思う。
ちゃんと生きてるんだと実感できるまで側に居たいと思う筈だ。
(今日は一緒に居よう…)
そう素直に思った…。
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エヴェリーの予想通り、私が襲撃されていた頃ーー
ウォーレス・モルガンとレックス・モルガンが襲撃されていた。
彼らへの襲撃の可能性はエヴェリーから示唆されていて
ノークス・ファレル
カウリー・ファレル
の両名が予め警戒し、透明化でウォーレスとレックスに張り付いていた。
なので3対4で戦う事ができ、エヴェリーとダンカンが駆けつけるまで持ち堪えていたらしく、狩られた者は居ない。
だが、襲撃者の1人には逃げられたそうだ。
「ウォーレスとレックスが負傷した」
と聞いたので、夜になって寮の共用スペースで治療した。
(勿論、結界を張って)
イーリーとレルフが行方不明になったタイミングで怪我をしてたら、疑いがかかる。
そのせいで彼らは学院の医務室へは行っていない。
ただ止血だけして、認識阻害魔道具で血の気のない顔色すら隠して1日耐えていたらしい。
(我慢強いことだ…)
北部吸血鬼は
「ただ我儘で不遜」
かと思いきや…
こういう所で妙に我慢強さや心根の強さを発揮してくれる。
思わず
(ほんの少しだけなら見直してやって良い)
と思った。




