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挿絵(By みてみん)


(セキュリティーの面で諸々見直すべきなのかも知れない…)

と思いながら、いつも通り透明化して、超加速で走って学院寮まで戻った。


女子寮に足を踏み込む前に超加速は解いた。

10倍の超加速を体感時間で20分

(実際の時間経過では2分)

楽々維持できるようになっているのが自分でも嬉しい。


自分で自分の成長に満足しながら透明化したまま自分の部屋へ向かった。


しかし自分の部屋の前まで来た時点でーー

誰もいない筈の廊下に人の気配を感じ

(あれ?…誰か私の部屋の前で待機してる?)

と気が付いた。


誰かが

透明化して

部屋の前にいる…。

怖い。


ダンカンから怖い話を聞かされて不安になっている矢先にこれだ。

ハァァーッと溜息を漏らしながら認識阻害看破魔道具を稼働。


もわぁ〜っとした影が生じて徐々に人の姿が現れるのを見て、目を見張った…。


「…ノークス…」

(………なんで今更…)


言い訳でもしに来たのだろうかと思い

(このまま外に出て、ファレル伯爵邸に泊めてもらおうか…?)

と思った。


(うん。そうしよう。伯爵邸にはアルバート先生もいるし、ノークスが押しかけて来ても追い払ってくれるだろう…)


そうと決まれば、そのまま回れ右をした。

がーー

流石は3年間騎士団で真面目に修練を積んだ騎士といったところか…

私の気配に気が付いたらしく、ノークスの方でも認識阻害看破魔道具を使って、こちらを見た。


「ルビー!逃げるな!待て!大事な話があるんだ!」

と言われて


(大事な話?)

と引っ掛かりはしたが…


やっぱり

(顔も見たくない!)

という思いが強い。


超加速で走って伯爵邸へ向かう事にした。


ノークスの方でも10倍の超加速を習得しているが、魔力量は圧倒的に私が多い。

伯爵邸まで双方が10倍の超加速で向かえば私の方が確実に先に着くし、ノークスはそこまで魔力が保たない可能性もある。


心のどこかに

(私の方がアンタより優秀なんだよ!)

と見せつけてやりたいという気持ちもあった。

加減抜きでダッシュした。


ーーなのに、あっという間に追いつかれていた…。

肩を掴まれてグイッと引き寄せられ、そのまま抱きしめられた。


いや、抱きしめるような形の拘束と言うべきか。

思いきり抱きしめて逃げられないようにしているので、ギリギリ締め付けられて苦しい…。


「………」

意味が分からない。

苦しい。

なんで私がこんな目に…。


「…今は言い訳はしない。後でゆっくり話したいと思うが、今は緊急事態なんだ」

ノークスが真剣な表情でそう言うので


「…何かあったんですか?」

と尋ねた。


「お前とウォーレスに容疑がかかっている」


「容疑?」


「騎士見習いの殺害未遂容疑だ」


「…騎士見習いの殺害未遂ですか…。一体どうして…」


「一先ず、バルモーラル公爵邸まで来てくれ。ウォーレスは既に公爵邸で待ってる」


「分かりました…」


道すがらポツリポツリと語ってもらった事情によるとーー


王国騎士団へは治癒師見習いの研修としてバレリウス子爵家のカーネル・ウィルソンと、私ルビー・ヒルが派遣されていた。

(要は私の偽物が湧いていた)


当初、研修生は1人と聞かされていたので皆首を傾げたものだが、不思議と誰も学院側へ確認の連絡をしなかった。


見習いなので治療に効果がなかったとしても誰も疑問に思わずルビー・ヒルが偽物だとは、これまた誰も思いもしなかった。


ノークスも

「変身術が使われている痕跡があるのは本物のお前もそうだし、疑問に思わなかった」

そうだ。


「俺に対して『口も利きたくない』という態度だったのが本物っぽかったので、まさか、アレがルビーじゃないなんて思いもしなかったんだ」


その偽物ルビー・ヒル。

偽物ウォーレス・モルガンとつるんで、西部出身の騎士見習いを呼び出して半殺しの目に遭わせたらしい。


当然ながら本物のルビー・ヒルは国立総合診療所で研修中。

連日大勢の患者に存在を目撃されている。


本物のウォーレス・モルガンも学院内の授業に出席。

大勢の学友・教職員に出席を確認されている。


ならば犯人は一体誰だったのか…。


「変身術はお前も知っての通り、変えられるのは姿だけで、声は変えられないだろう?だから声質の似てる者に化けるか、変声魔道具を使うかしなきゃならない。

変声魔道具は生の声と変声された声が微妙に被って聞こえる品質のものしか出回っていないから、それが使われていた感じでもない。

変身術を使うような連中でお前とウォーレスに声質が似ている者がいないだろうか?」


そう訊かれて思い浮かぶのは、当然、例のヤツらだ…。


公爵邸へ着くとウォーレスの声が聞こえた。


ウォーレスの声は予想通りの事を話していた。

「…ですが、イーリー・モスもレルフ・デールも連日学院の授業に普通に出ていたんです…」


「学院の授業に出ていた方の2人がエルフの協力者が化けた偽物という可能性は?」


「まぁ、それはあるでしょうが…。それだとエルフ側も手間でしょう。何故そんな手間をかけてイーリーとレルフがルビーと俺に成りすます必要があるんです?」


「西部貴族を痛めつけたかったから、という事なんじゃないのか?それと揺さぶりをかけたいんだろう。フィリスが処分された事の腹いせもあるだろうし」


「フィリス卿の中身はともかく肉体は完全にこっち側の存在だったのに、そんな風に仲間意識を持ってたりするものなんでしょうか…?」


「謎だよな。エルフどもの無駄に強固な血族主義。肉体がエルフでなくとも自我がエルフなら仲間と見做すような感性。俺達には理解できない代物だが、連中にとっては当たり前のように報復意識のキッカケになる…」


ノークスは私と違って地獄耳じゃないようだし、私は普通にドアをノックして

「入ります」

と告げてドアを開けた。


室内にはウォーレスとエヴェリーの他、西部騎士らしき人がいた。


事情がよく分からないという事もあって

「スミマセン。全てが寝耳に水なんで事情がよく掴めてませんが…その暴行事件の被害者の方は無事なんですか?」

と気になる点を真っ先に尋ねた。


それには西部騎士らしき人が

(髪がターコイズの光沢を帯びた不思議な色なのでセイレーンの血が入った亜人だと思う)

「直ぐに気付いて駆けつけたので無事でした」

と答えてくれた。


(…こういう髪色の人は読心術師だってパパが教えてくれたんだったな…)

と懐かしい気分になりそうになる。


(取り調べに読心術師を使うようなセオリーは騎士団には無いという話だったけど…被害者が西部騎士だった場合には同じ西部人の読心術師がしゃしゃり出て来るって事なのかな?)

という事だけは少し事情が掴めた…。



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