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挿絵(By みてみん)


イーリー達のせいで

「美形を見たら魔眼を起動して必ず変身術の痕跡が無いかを確認する」

ような癖がついてしまっている。


イーリーとレルフは休日も大抵一緒にいるけれど

「冒険者時代にお世話になった方々」

という名目で様々な大人と連絡を取り合っている。


そうした大人は皆が皆、美形だ。

そして変身術を使っている。

その手の連中を何人も見た時点で

「エルフの魔術師」

「エルフの魔力持ち」

の魔力回路の特徴が随分とつかめてきた。

(今後は「敢えて不細工に化けてるエルフ」を見抜くのが楽になると思う)


私が見る限りでは彼らの間のやり取りは全て安否確認に過ぎないように見えるが…

こちらは物陰から不可視の使い魔で覗くだけのもの。

見落としも多い筈。

私の監視の目を掻い潜って悪事の共謀をやり取りしている可能性は充分あるし、十中八九そうだと思う。


******************


その日も

(あ、イケメンだ。怪しい。コイツもエルフかも知れない…)

と警戒して不審な患者を魔眼で見てみた。


変身術を使っている痕跡がある。

しかし、魔力回路はエルフの特徴を示していない。


(あれ?それじゃ…)

とマジマジ顔を見てみると

(ダンカン・モルガンに似てるんだな…)

と判った。


魔力回路は吸血鬼特有の特徴を示しているので

ダンカン本人か

ダンカンを知ってる吸血鬼か

いずれかだろうと思う。


「…えっと、ここで何を為さってるんですか?怪我しても直ぐ治りますよね?」

と訊くと


「一応、俺の事、覚えてくれてたんだな?」

と言われた。


「…お会いする機会自体は少なかったですが、一応モルガン侯爵城に4年間もお世話になっていたんで、北部騎士団の主だった方々くらいは顔を覚えてますよ?」

(クソ意地悪だった使用人達の顔も…)


「そうか、そうか。お前の方でも多少は俺に対して気が有ったって事だな。ウンウン」


「…とにかく、ここで何を為さってるんですか?治療が必要ないのなら、治療を必要とする患者さん達の邪魔です。どうかお引き取りください」


「…お前、本当に可愛げがないな。それとも素直じゃないだけか?別に俺だけじゃないだろ?治療目的じゃなく、単にお前と話したいためだけに順番待ちして会いに来てるのは」


「…『他のヤツもしてるから自分も真似する』というのは非合理行為を正当化する大義名分にはなりません」


「『他のヤツもしてるから自分も真似する』という非合理行為の正当化でスミッソン商会は莫大な富を築いた筈だが?」


「………それで?…『単に私と話したいためだけに順番待ちして会いに来た』貴方は、一体どんな話をなさりたいんですか?」


「…そうだな、敢えて言うなら、お前がここ数年国内の森の地図を作成して、所々に印を入れているのが気になってる。俺にはアレが『天敵を一斉粛清する切り札作り』に見えるんだが、違うか?」


「それ、此処で言うのはやめてください。どこに連中が監視の目を光らせてるか判ったものじゃないんですから。

というか、なんでその事知ってるんですか?ちゃんと結界張って作業してたのに」


「お前は『監視の魔法陣』と『読心の魔法陣』を使って監視すれば大抵のことが分かるんだって事実を知らないんだな…。抜けてるというか、危なっかしいというか…」


「『監視の魔法陣』と『読心の魔法陣』を使った監視…。そんな事されてたんですか?私…。

…エルフが成りすましてるとか、他人の自我を入れられて狂ってるとか、そういう危険人物じゃないんですが…。

なんで無害な私をそこまでして監視する必要があるんですか?オカシイでしょう?」


「おお〜。一応、フィリスの事は聞いてるんだな?だったら話は早い。フィリスの事が片付いたんで、『監視の魔法陣』と『読心の魔法陣』も私的利用ができるようになったんだ。

それに俺達も北部での缶詰め状態から解放される事になった。お陰で俺も今はバルモーラル公爵家の護衛騎士という気楽な身分だ。

エヴェリーがバルモーラル公爵位を継ぐ事になったし、エヴェリーの婚約者が王城で女官見習いをやってる事もあり、エヴェリー共々王都のバルモーラル公爵邸に滞在してる。

お前に婚約者がいる間は接近禁止が言い渡されてたけど、今のルビー・ヒルはフリーだからな。

別に俺が近付いても問題ない。というかお前に逃げられないように誰かしらお前を繋ぎ止める役目が必要だし、皆快く俺がお前を口説き落とすのを応援してくれてる」


「上からの強制とかは一切無いんですよね?それなら『口説き落とされない自由』が私にもありますよね?」


「そうだな。その自由は保証されてる。だから俺以外の有象無象にはキッパリ『二度と来るな』と撃退しても良いんだぞ?」


「無責任ですね。『二度と来るな』とか、そんな酷い言い草をしたら逆恨みされて何されるか分かったものじゃないじゃないですか」


「…そうか。何故お前が有象無象の輩に対してキッパリ拒絶の意思表明をしないのか謎だったんだが…。なるほどな。逆恨みが怖かったのか」


「…『逆恨み』で人生壊されてきたようなものですからね」


「俺が追い払ってやろうか?」


「…それって、見返りを求めない無償奉仕とかですか?」


「んな訳あるか。見返りは求めるに決まってるだろ?」


「なら、遠慮しておきます」


「意固地なヤツだな…」


「そろそろ一人当たりの治療時間を過ぎます。これ以上の質問は受け付けませんので、どうぞお引き取りくださいませ」


「お前って、しみじみ心が荒んでるよな…。昔から俺はお前に興味があって、そのうち自分の女にしてやろうと思ってたのに、ずっとヴィクターとエヴェリーからは反対されてたんだ。

『アレは内心でしょっちゅうエルフどもをぶっ殺してやるとか思ってる復讐心の権化だから、あんなのを女扱いして懐に入れたら寝首を掻かれるぞ』って。

俺としては幼い甘えたい盛りの時期に親を殺されたんだから、そういうのも仕方ないと思ってたが…。

お前、一度ちゃんと、お前の両親がお前にどう生きて欲しいと思ってたのかを真剣に考えてみた方が良いぞ。

我が子を可愛いと思う普通の親は『リスクを抱えながら復讐して欲しい』なんて望まずに『ただ幸せになって欲しい』って望む筈なんだからな…」


「…それは…善処します。とにかくお引き取りください」


「分かったよ。また来る。見張ってないと、思い詰めたゴロツキが妙な気を起こすかも知れないからな。モルガン侯爵城の時みたいに」


「?」


「ドアを障壁で守ればゴロツキは入って来れない筈、とか思ってたんだろうが…。世の中には魔術攻撃無効化魔道具やら、魔力吸引魔道具やらも存在する。

強固な障壁も魔力が急激に消費させられれば一晩保たずに解除されてしまうんだ。

あの城でお前の純潔を守ったのは決して障壁魔道具だけじゃないんだ。少しは冷静になって俺の事も評価して欲しい」


「え?」


「じゃあな」


そう言われて混乱した。

(もしかして、侵入される危険があった?ダンカンが何かしてくれてて無事で済んでいた?)

という可能性について考えた時ーー


ゾッとした。

あの城の使用人達がそこまで悪質だった可能性に思い当たり本気で怖くなった…。



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