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ようやくイーリーと接点がない状態になれたので
「嫌がらせされた!」
「イジメられた!」
とかの濡れ衣捏造はこれ以上降りかからないと思いたいが…
イーリーのようなイカレ女には常識は通じないのかも知れない。
(警戒は怠らずにおきたい…)
イーリーへの嫌悪感が募りすぎたからなのかも知れないが…
ふとコーネリアの話を思い出した。
「エルフ女はレイプされた!性奴隷にされた!と冤罪捏造する生き物だ」
というお話。
その手の性犯罪被害の捏造はもう少し年齢を重ねてからのもので
「低年齢時には同性を冤罪捏造のターゲットにするのものなのかも知れないな…」
と思い当たったのだ。
(とにかく関わらないでおくに限る…)
クラスも違うので寮での接点が切れたら、もう関わる必要はない。
一応バーブを使って「物陰から監視」は続けているが…
正直言って、学院内で彼女の尻尾を掴むのは難しいと思っている。
休日に人間の冒険者に化けた仲間と連絡を取り合う可能性はあるのだろうが。
しかし休日は私自身、師匠の手伝いをしていて、いちいちイーリーとレルフを監視ばかりしていられない。
(『監視の魔法陣』と『録画・再生の魔法陣』のようなものを仕入れられたら良いのにと、しみじみ思う…)
嫌いな相手を見るよりは王都内やオグデンの森を観察しているフリンジとエンドの見ているものを共有したほうが、正直、余程興味深い。
(他人の監視って、実は途轍もなくつまらない作業だったんだな)
と痛感してしまう…。
「私は、余程、性悪な人達に興味がないんだな…」
そう独り言を呟きながら
(ああ、でも、フィリス・モルガンを日がな一日監視し続けて、変身術や超加速を盗み見てた頃はそこまで苦痛じゃなかった。何故だろう…)
と首を傾げた。
ああ、そうかーー
術を盗む目的の監視は
「得られるものがある」
のに対して
自己防御目的の監視は
「得られるものがない」
のだ。
殺人鬼かも知れない鬼畜から身を守る自己防御目的で殺人鬼容疑者を監視し続けるなど…不毛だ。
本来なら普通の人はそんな事まで気にせずに生きていけるのを思うと…
(ハイスペ吸血鬼って、ほんとマイノリティーなんだなぁ…)
という世知辛い現実が判る…。
前世では友達もおらず知人も少なかったため
「SNSで他人の嗜好動向を探る」
ような世論調査的な事をするのが好きだった。
その際に度々思ったものだ。
「何故、世間の皆様はドラマやアニメの中のキャラクターに感情移入する事ができるのだろうか?」
と。
ドラマやアニメは所詮作り話。
キャラクターも所詮存在していない空虚な嘘の紡ぎ手。
私は
「感情移入しないと作り話は楽しめないから、余程、主人公が共感できない人間性じゃない限りは感情移入して見るようにしよう」
と心掛けて感情移入していた。
それは人気擬態要員として「いいね」を付けて回る時にも生じていた感性だ。
全く感情移入せずに「いいね」と思う事はできない。
「いいね」を付けなければならないのだから、「いいね」と少しでも感じてから付けたい。
それなら感情移入しなければならない。
そうやって私は自分の中に欺瞞を蓄積させないために
「感情移入しなければならない」
を実行した。
その結果
「自分以外の他者に感情移入する事は社会的役割を果たすための義務だ」
という義務感が自分の中に根深く刷り込まれていった…。
不思議とイーリー達を覗き見ていると、その頃の義務感が感じられて心底から全く楽しくない。
苦痛だ…。
お陰で
(…AIのような人工知能に監視させて、知りたい情報が出てきた時だけ私の方へ転送してくれる仕組みがあれば良いのに…)
と結構本気で思う。
既存社会に不満を持つ庶民を早めに発見し、危険分子と見做せば排除。
陰湿な既存権力盤石化行動…。
ただ
「脅威を早めに発見して対処しよう」
と自己防御のための情報収集をする事の正当性は
「自国に住む国民である」
という事が絶対条件として必要だろうな、と思う。
よその国に入り込んで好き勝手に振る舞って異邦権力としてのさばって
「既存権力に不満を持つ者は不穏分子だ。早めに発見、排除する」
みたいな事をしてた人達の脳内は一体どうなっていたものか…。
(…そう言えばセントクレア公爵家って、昔コーネリアおばあ様にエンチャントにかけられたって因縁つけてきた家だったんだよね…)
アラスターが話していた話の内容を、後日、詳しく尋ねて内情を聞いてみたのだが…何とも胸糞の悪い、酷い話だった…。
なんでもーー
コーネリアが私の父ショーン・フェアバンクスの父、シャーマン・フェアバンクス(私にとっての父方の祖父)の治療のために王都のフェアバンクス邸に滞在していた時の事。
そこにセントクレア公爵家の使用人が
「うちの旦那様を治療しろ」
と深夜に押しかけてきた。
無視するのも後々拗れると思い、コーネリアは仕方なくセントクレア公爵邸へ出向いて治療してやったというのに…
翌朝には公爵家の連中は
「エンチャントにかけやがった!」
だのと因縁を付けてきて、コーネリアを警備隊に拘束させたというのだ。
何でも、治療を受けて一命を取り留めた公爵は目を覚ますなり
「わしは本物を殺してセントクレア公爵に成りすましたオルテガ人の元冒険者だ」
と自分の身元を語り出したらしい。
その話が本当だとするなら…
セントクレア公爵家の正統な血筋の者達はとうの昔に殺されていて
成りすましジジイの血に入れ替わっているという事になる。
そんな事実。
当然、成りすましジジイの子や孫が認める筈がない…。
結果ーー
棺桶に片足突っ込んでいて死の間際だった公爵を奇跡的治療で全快させたコーネリアに対して、セントクレア公爵家は
「あの女がエンチャントにかけやがったんだ!」
(我々が外国人の平民の血筋の筈がない!)
と決めつける事にしたのだそうだ。
要は公爵家だ何だとふんぞり返っているライオネル・アームストロングは、この国の高貴な血を引く貴公子などではなく、成りすましの外国人冒険者の子孫なのである。
(その時の公爵の名もライオネル・アームストロングだったそうだ…)
それを思うとーー
(本当にムカつく…)
と今更ながらライオネルの事が嫌いでたまらなくなったのだった…。
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珍しく、モルガン家の2人組ウォーレス・モルガンとレックス・モルガンが廊下で声をかけてきた。
「よお。お前、なんかやらかしたんだってな?」
ウォーレスは私に災難が降りかかった事が面白いようだ…。
「不可抗力の災難ですよ」
「ウチのクラスじゃイーリー・モスとレルフ・デールがお前の事、とんでもないクズだって言いふらしてるぞ?」
「何故、あの人達は自信満々に嘘を吐くんでしょう?」
と、常々疑問に思っている点を口にすると
ウォーレスは私の顔をマジマジと見てから
「…お前の情報網は『要点を情報共有してくれる』ような効率化が進んでいないんだろうな」
と言い、レックスに目配せした。
「それは、ファレル家はモルガン家へ情報提供してるのに、モルガン家はファレル家へ情報共有しないみたいな情報共有の不平等があるから仕方ないんじゃないですか?」
「…それはそうだが、言っとくが、そういう不平等は俺達がわざわざ生み出してる格差じゃないぞ?そもそもが初めからそうなってるんだ…」
私は少し意外に感じた。
ウォーレスはファレル家よりもモルガン家の方が有利な状況で多少は負い目らしきものを感じている(?)かのように見える…。
「でしょうね。別に恨んではいませんよ。気にしないでください。私ごときが言う不満なんて羽虫の羽ばたき程度の意味しかありませんから」
私がそう言うと、ウォーレスの頑なな表情がホッとしたように微妙に緩んだ。




