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挿絵(By みてみん)


その後ーー


不可視の使い魔にオグデンの森を探索させる事で、随分と魔物のスキル発動時の魔法陣の図象を仕入れられた。


とは言え、古語の魔法陣とは違い、やはり空中に魔力を使って魔法陣を描いても魔物のスキルは再現できなかった。


だがーー


ジョエル・フェアバンクスの弟子として魔道具製作の助手をする傍らで

「自分も魔道具を作りたい」

と主張して、魔物素材や特殊インクを使わせてもらった所ーー

一部のスキルに関しては再現できてしまった…!!!


(必ずしも魔紙に特殊インクで書いて有効化するとは限らない。特殊インクを注ぎ込む素材自体にスキルの術式との互換性がある程度必要なのだとか)


モルガン侯爵城の立ち入り禁止区画の床に描かれていた図象も、魔紙の表面に傷を付けるように彫刻し、溝に特殊インクを注いだところ…あの時の結界が再現できてしまった。

あの

「自分の魔力を馬鹿喰いする非効率結界」

が…。


使い道が無さそうだが

「魔力切れになってから眠ると子供のうちは魔力が増える」

という迷信は事実なので

「夜寝る前に使おう」

と思った。


魔物のスキルで再現できたものは

「軽量化」

「重量化」

「毒」

「毒耐性」

「麻痺」

「麻痺耐性」

「生命力回復強化」

「魔力回復強化」

「状態異常回復強化」

「魔術攻撃耐性強化」

「物理攻撃耐性強化」

「魔力回復」

「状態異常回復」

がある。


再現できているか試せていないものには

「生命力回復低下」

「魔力回復低下」

「状態異常回復低下」

「魔術攻撃耐性低下」

「物理攻撃耐性低下」

だ。


故意に誰かの回復力を低下させる実験を他人でやるのは悪質過ぎる…。


それこそイーリーやレルフにやる分には良さそうだが、自分の魔力を使ってやるものではない。

魔石で稼働させるタイプの魔道具でやるなら私だとバレる心配も少なそうだが。

(私の仕業だとバレたら後が怖い。敵意がバレると吸血鬼疑惑を持たれかねない)


耐性低下の実験となると自分の持ち物で実験したくない。

自分の持ち物が壊れるなんて嫌だ。

「壊れても良い物って無いですか?」

とジョエルに尋ねたが

「無い」

と言われてしまい、とうとう実験できていない。


イーリーやレルフの持ち物なら壊しても全く罪悪感を感じずに済みそうだが…

これまた自分の魔力を使ってやるつもりはない。

(私の仕業だとバレたら…以下略)


学院内に連中の仲間で魔力探知能力の優れた者は未だいないと思うが…

運が悪いと、私がやった直後に誰か魔力探知能力を身に付ける可能性があるのだ。


なので

「魔石の魔力を動力として稼働するタイプの魔道具へと何とか改良できないものか…」

と検討中。

(できたら当然、エルフ疑惑濃厚な不審者2人が標的だ)


しかし、事故は起きた…。


寮の自室の机の上に

「魔紙に描いた非効率結界の魔法陣」

を置いておいたところーー


私の留守中に私のテリトリーに入り込んだイーリーが勝手に魔法陣に触れてしまった…。


魔力切れになるまでドバドバ魔力を吸い続けて外界との接続を遮断する結界だ。

当然、私が自室に戻ってきた時にはイーリーは魔力切れになって私の机の前で倒れていた…。


******************


他人の留守中に勝手に相手の持ち物に触れる。

そういう行為は窃盗目的、嫌がらせ目的が疑われる。


床に転がられたままだと迷惑なので…

身体強化してイーリーをイーリーのベッドへ運んでやったし、魔力切れになったからといって死んだ訳じゃない。

(私なんて毎晩やってる)

全身が痛くなるのは本人の自業自得だ。

(私なんて毎日我慢してる)


大した問題ではない、と思っていた。

当人に非があるのだから。


私に向かって謝罪もなかったし、謝罪要求もなかったし、事故の責任は自分にあると納得してくれているものと思っていた。


しかし、その後、イーリーの取り巻きのライオネル達が最近、私を探し回るようになった…。

「ルビー・ファレル!どこだ!この性悪め!」

だのと大声で叫んで探しているので流石に離れた場所へ避難していても判る。


(あ〜面倒くさい…)

と思いながら、やり過ごしていたのだが…


その日はとうとう業を煮やしたライオネルが授業時間になっても自分のクラスの教室へ戻らずに、私の教室で私が戻るのを待ち構えていた。


(嫌だなぁ〜)

と思いながら、透明化を解いて、気配隠蔽術だけ使って教室へ入った。


同時に教師も教室へ入って来てくれたので教師が

「アームストロング君、自分の教室へ戻りなさい」

と言ってくれた。


「俺はルビー・ファレルに用があります。ルビー・ファレルのやつが卑怯にも逃げ回っているので授業時間ギリギリまで待っていました。

話は直ぐに済みますので、あと2分ほど待っていただけませんか?」


「…(ハァァーッ)2分だけ、ですよ…」


そんなやり取りが行われる中で私は自分の席に着席した。

気配隠蔽術の良いところは自分が言葉を発するまで、誰も自分の存在に気付かずにいてくれる所だ。

目で見えているのに、風景でも見ているかのようにスルーしてしまう。

勿論、認識阻害の一種なので、認識阻害看破魔道具を持っている教師にもライオネルにも存在は捕捉された。


「…お前が、ルビー・ファレルか…。考えてみれば初対面だな。イーリーと同室でイーリーに嫌がらせしている女だという事で、俺はずっとお前を探していたんだがな…」

そういうライオネルの言葉は、教室内のクラスメイトには

絵の中の人物へ語りかけられているかのような虚しいものに思えた筈だ。


「そうなんですね?」

と、私が返事をするまでは。


私が返事をした事で急に私の存在が教室内で認知された。


「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

と、数名が驚きの声をあげた。


「?」

ライオネルが一瞬不審な表情をしてから

「お前、いい加減にしておかないと、この学院に居られなくなるぞ?元は平民のくせに何故同じ平民のイーリーを嫌う?」

と言い出した。


私がイーリーを嫌ってなどいませんと言ってやれるくらいに嘘吐きになれれば良かったのかも知れないけど…そんな嘘吐きにはなれなかった。


「私はイーリーが嫌いですが、イーリーに何か嫌がらせをした事はただの一度もありません。

先日自室で事故がありましたが、私が部屋にいない時の事でした。

私がいない時にイーリーが私の私物に触れて、盗難避けトラップが発動した。

ただそれだけです。私は私の許可なく私の留守中に私の私物に触れたイーリーに対して『盗もうとしたのか』とも『嫌がらせで壊そうとしたのか』とも詰問もしていません。

イーリーと、ただ、関わりたくないだけなのです。関わりたくないから、責めたり警備兵へ突き出す事もしなかった。

大事にせずにおいてあげた。なのに、彼女はまたも虚言癖を発揮して、私が彼女に何かしたかのように冤罪を捏造してしまったんですね…」


私がそう言うと、教室内の女子は全員がウンウンと頷いた。

皆、イーリーに冤罪捏造された事があるのだろう。


「いや、ホント。イーリーには虚言癖、あるよね」

「イーリーはなんでいつも誰かを悪者に仕立て上げるの?」

「不思議よね」

とか言ってる。

普通の人達は皆イーリーが問題のある人格だと事実を理解している。


のだがライオネルは

「…お前は、そこまで、性根が腐ってるんだな…」

と心底から呆れたような顔をした…。



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