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学院の教師の中からアルバート先生を見つけるのは容易かったが、先生の受け持ちクラスはヘザー達のクラスなので私とは学年が違う。
(アルバート先生に話しかけるのは客観的に見て不自然かな?)
と思い、学院内では無視を貫こうかと思っていたのだが…
先生が音楽部の顧問をしていて、ヘザー達も音楽部に入部しているという話だったので、私も入部した。
部活の顧問という関わりができたのでアルバート先生に話しかけるのは別に不自然という訳でもなくなった。
(それに竪琴の練習ができるようになった!)
「…それにしてもアルバート先生に音楽の教養があるとは知りませんでした」
と私が言うと
「実は音楽の教養は元々あった訳ではなくて、ここ数年で培ったものなんです」
と先生が答えた。
「わざわざ習得なさったんですか?何のために?」
「…実はイアン様に言われて仕方なくだったんです。必ず必要になる教養だから、と」
「それと同じ事は私も言われてたわ」
「俺も」
とヘザーとオルニーも言う。
何気に結界を張ってから
「…ルビーさんは無事に竪琴を頂いたのですよね?」
と先生が尋ねたので
「何故知ってるんですか?」
と驚いた。
「イアン様の話ではグルゴレットヒル侯爵家には『竪琴の君』と呼ばれる絵があって、絵に描かれている人物がこれまで何度も変わってきているそうです。
絵は竪琴の所有者を表す絵であり、竪琴の所有者は不思議な能力を持つ特別な人物らしいです。
以前描かれていた人物が始祖にまで成り上がった事から、今現在描かれている人物にも『何かあるに違いない』という期待が集まってるのだとか。
それで今現在描かれている人物の顔がセルマさんにそっくりで白髪・赤眼だとかで、セルマさんがファレル家の貴種と縁付いて生まれてくる子供がその人物になるのではないかと推測されています」
「…その話、ファレル家側でも知られてたんですね」
「へぇ〜。そんな話あったんだ?」
「俺、『竪琴の君』って絵の話、騎士団上がりの私兵から聞いたことある」
「私も噂話では聞き齧ってましたが、イアン様から聞かされたのはセルマさんがファレル家に引き取られて来てからでしたね」
「それにしても、まだ生まれてもない人物が絵に現れるとか、そんな事あり得るんでしょうか?」
「西部始祖のコーネリア様が描かれていた時期は、コーネリア様が生まれる何十年も前からだったらしいですよ」
「そうなんだ?」
「コーネリア様の前は誰が描かれてたんですか?」
「人間の男性だったそうです。該当者を見つけられなかったとかで、竪琴は絵と一緒にグルゴレットヒル侯爵城に置かれたままになっていて、絵の人物は年月と共に年老いていってたらしいです」
「「へぇ〜…」」
「…何故変わるんでしょう?」
「以前は先の所有者が死んだら次の所有者の絵に変わるんだと信じられていたようですが…コーネリア様は亡くなっていないのに、絵が変わった。別の法則で絵が変わっているのだと思わざるを得ない訳です」
「不思議ですね…」
「イアン様に言わせると、コーネリア様が新大陸へ行ってしまってから絵が変わったという話です。なので『絵の所有者が居る国の特別な存在』が竪琴の所有者に選ばれるのだろう、と推測なさってますね」
「それだと絵の所有者も絵を持って新大陸へ行ってれば絵の人物もコーネリア様のままだった、って事?」
「おそらくは…」
「まるで『特別な人物』を探し出す指針みたいな役目を果たしてる絵なのですね。
それにしても不思議ですよね…。その絵がグルゴレットヒル侯爵家の魔道具の一つというからには海から漂流してきた古代の超文明時代の魔道具なのでしょう?」
「大抵のものが壊れているらしいですが、壊れずに稼働し続けている魔道具にはとてつもない値がつくらしいですね」
「…そういう絵を今のこの国の技術で描く事はできないんでしょうか?」
「あ〜、ソレ気になる」
「作者ボロ儲けできるんじゃね?」
「…できないから特別なんですよ。『竪琴の君』も竪琴も。…その昔はグルゴレットヒル侯爵家の令息が絵の少女に一目惚れして自室に飾るのみならず、騎士団所属中も寮の自室に持ち込んでいたとからしいです。
それを見た別の騎士達も絵の少女に入れ込んで『竪琴の君』は大勢の騎士達の初恋の君でもあるんです」
「…コーネリアおばあ様って罪深いんですね…」
「全くです」
「そんな絵が有るなら見てみたいわ。すごいロマンチック」
「今は騎士団寮に持ち込まれていないんですか?」
「グルゴレットヒル侯爵家の嫡子で該当年齢の方がいらっしゃらないので、何とも…。ですがセルマさんが成長したような姿だという話ですので大層な美女が描かれているのは間違いないでしょう」
「その人物は本当に私の子供なんでしょうか?親戚の中からひょっこり該当者が生まれる可能性もあると思うんですが?」
「それもあり得るでしょうが、今の時点ではセルマさんが一番似ているので、おそらくそうなのだろうと見做されています」
「「へぇ〜…」」
「正直プレッシャーです。そのうち『お前なんか要らない、婚約解消だ』とか言われて捨てられる可能性もあるのに、ジャン様かノークス様に嫁ぐ事が決まりきってるように思われると、放り出された場合、どうなるんでしょう?」
「白髪・赤眼の貴種はジャン様とノークス様だけではありませんよ。安心してください」
「…押し付け合いみたいになられて嫁がされても困りますよ。そんなの絶対幸せになれそうにないし…」
「運命というものは残酷ですよね。コーネリア様を産んだ女性は父親が冤罪で捕まって獄死した後、男爵令嬢から娼婦落ちして、挙句火炙りでの処刑。…偉大な子を産んだ母が不幸極まる人生を送った事例もある訳ですし…」
「…東部貴族って冤罪で下位貴族を処分するのが好きなのかねぇ」
「今の東部貴族もそういう連中だとしたら怖いわね」
「不吉な事言わないでください…」
「…コーネリア様の母上はお気の毒な人生でしたが、コーネリア様のお子様は幸せだと思いますよ。死んでも死体を回収してもらって新大陸で蘇生してもらえるんですから」
「…その話、北部で結構知られてたりします?」
「知らない方も多いですが、知っている者は知っています」
「聞いたことはあるけど…」
「蘇生対象者に張り付いてて、蘇生対象者が死んだ場面に居合わせないと、本当にコーネリア様が死体回収に来るかどうか分からないよね」
「…もしかしてコーネリアおばあ様が転移してくるタイミングを狙って襲撃しようとか、そういう事を考える人もいるんでしょうか?」
「まさか。エルフじゃあるまいし。…ちょっとした嫌がらせならともかく、神様から選ばれた始祖を殺そうとする貴種はいないでしょう。
それこそ神様の選択を否定する事はハワード様の存在否定及び自分自身の存在否定に繋がりますからね」
「そうですか…」
「…ハワード様の寵愛を得たがる方々からすればコーネリア様は煙たい存在でしょうが、コーネリア様に手出しして、万が一それがハワード様にバレればどんな目に遭うか皆分かっているでしょうから」




