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フェアバンクス家は元々は魔力もないただの人間の血筋だった。
それが300年くらい前にスミッソン家の隠れ魔術師が婿養子に入った事がキッカケでスミッソン家の魔力持ちとの婚姻が進められ魔力持ち一族へと変化、商人ギルド内で成り上がり、今に至る。
アルバート先生も言ってはいたが…
「スミッソン家は派閥を広げるのが上手い」
のだろう。
フェアバンクス家に限らず、元はただの人間の一族だった家を実質乗っ取って魔力持ちの家系に変えスミッソン家の傍流に組み込んでいく手法で取り込まれた家は他にもある。
そういう血筋の改変と家の実質的乗っ取りをされた側が
「それによって暮らしも何もかも引き上げられて良くなった」
と満足してるから文句は出ていないが…
普通はそうした一族の乗っ取りは褒められたものじゃない。
スミッソン家のご先祖様に言わせると
「一族内の魔術師同士、魔力持ち同士を結婚させても、血が近いと遺伝病が発生して短命になる」
らしく
「少しずつ一族そのものを広げていく必要性がある」
と説いてらっしゃったらしい。
ともかくフェアバンクス家の隠れ魔術師に弟子入りできるかも知れないので、内心では楽しみにしていた。
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入学式には間に合わないかも知れない、と思っていたが…
そこはちゃんと考えてくれていたらしく、馬車の速度も私が気付かなかっただけで随分とハイペースで進めてもらっていた。
お陰で入学式前日の夜に王立学院女子寮に辿り着いた。
イライアス・スミスとバーニー・スミッソンは入学式には間に合わないようだ。
と言っても在学生は入学式になど出席しても意味はない、時間の無駄だと思う者も多そう。
「あ〜、面倒くさい」
だのと言ってる上級生の姿がちらほら見える。
それにしても不審者のイーリー・モスとレルフ・デールは相変わらずだ。
2人仲良くいつも一緒にいる。
私としては
(この人達が私やジャンと同世代のエルフの魔術師だというのなら、この人達は何故生きているんだろう?)
という点が腑に落ちない。
何せモルガン家はイーリーやレルフのような子供の魔術師を弱いうちに殺しておく大義名分を得るためにジャンの危機を敢えて見過ごしたような連中だ。
彼らがイーリーやレルフを見逃していたのだとするなら…
「あの時に報復で殺された筈のエルフの子供達は一体誰だったんだ?」
という話になる。
モルガン家の吸血鬼達が
「将来的脅威を早めに潰しておくなど、臆病者のする事だ」
「強い者と殺し合う事こそが強者の在り方だ」
とか思う戦闘狂なら
「弱いうちは見過ごす」
のかも知れないが…
超加速の魔法陣がエルフ側に流出している事を知っていたのなら絶対そんな遠慮はしない筈。
子供だろうがキッチリ殺した筈だ。
なのにイーリーもレルフも生きている。
何かおかしい…。
(何らかのトリックが使われて欺かれていた?)
という可能性を感じてゾッとする…。
モルガン侯爵城にいた頃は障壁魔道具をドアに仕掛けていたけれど…
今は同じ部屋にイーリーが居るので自分のベッド周りに障壁を作り出している。
障壁を張る範囲が広いので魔石の消費も大きくなるが…
アラスターは
「金の事は心配するな」
と言ってくれている。
寝込みを襲われる心配だけはせずに済む。
腕輪型の自動障壁魔道具は攻撃を受けた時に自動で障壁を展開してくれる優れものだが、相手が超加速を使って攻撃してきたら障壁展開が間に合わないという欠点がある。
あと、障壁は攻撃特化の魔術師による攻撃で砕けるものが大半…。
今のところ
「攻撃特化した魔術師の攻撃に耐え得る障壁魔道具は生み出せていない」
のだそうだ。
「吸血鬼だとバレない限りは攻撃特化の魔術師に攻撃される事も超加速を使ったエルフに攻撃される事もないだろうから、とにかく正体がバレないようにだけ気をつけろ」
と言われている。
学生の中に運悪く魔眼持ちがいる可能性はあるが…
「魔眼持ちが魔眼を発動してる時、それを別の魔眼持ちが見ると『目の周りに魔力が集まって目が赤みを帯びて輝いて見える』んだ。そういうヤツがいたら、極力、ソイツの視界には入らないように気をつけろ」
というアラスターのアドバイスは役に立つ。
あと、殺人狂の連中の場合は
「眉間の辺りに魔力と一緒に瘴気が集まっている」
という特徴があるのだそうだ。
「そういう連中は『生贄用奴隷』として最適なので知らせてくれたら狩りに行くぞ」
との事。
世の中、物騒だ…。
モルガン侯爵城で虐げられながら縮こまっていた日々は安全だった。
狭くて窮屈な環境だったけれど…安全だった。
(貞操は脅かされていたものの、殺される危険だけは無かった)
ただ命があるというだけの隷属状態。
それは前世と同じだ。
この【世界】の【管理者】が【参入者】に多様な体験をさせたいと望んでいるのだから…
私はあの陰気な城で縮こまって人生を終えるような、そんな運命では無かったのだ。
(とりあえず目立たないように学院生活を過ごそう…)
と決意して、他の1年生達の影になるように俯きながら講堂へ入った…。
学院長は眉間に皺の寄った気難しそうなオバサンだった。
「王族だ…」
「国王陛下の従姉妹の…」
とか囁かれているので、彼女は本当に王族なのだろう。
王族が学院長である間は国がちゃんと予算を回してくれるだろうから、学院に金が無いせいで起こる不具合とは無縁でいられる筈。
その点だけは有り難い。
(それにしても、女性王族を学院長に据えたんだな…)
と、いう点では少し意外だったが…
(ああ、考えてみたら女官育成が優先事項だから、なのかも知れないな)
とも思った。
一方で学院教師の大半は男性だ。
女生徒向けのマナー・ダンスの教師は女性で養護教諭も女性だが、他は男性がズラーッと並んでいる。
新入生の生徒の男女比率は男子生徒8割女子生徒2割といったところ。
上級生を見ると女子生徒の数は1割にも満たない。
他の子達のヒソヒソ話に聞き耳を立てて仕入れた事情だと、どうや王太子候補の王子が私達と同じ歳らしい。
将来的に王太子の妃を近隣国の王室から迎える可能性がある。
国内の大貴族が妃になる可能性もあるが…
王太子と歳の近い女官を多く揃えていた方が
「妃となる女性が自分の身内を女官に抜擢して大量に身内を王城へ引き入れる」
ような真似をさせずに済むだろうとの考えらしい。
これまでの妃が大量に身内を引き立て引き入れる原因が
「有能な女官がいないから、どうせ無能ばかりなら親しいものをそばに置きたい」
という我儘だった、と言われているがゆえの人材育成。
確かに王太子と歳の近い女官を量産しておきたい気持ちも分かる。
新入生代表はライオネル・アームストロング。
セントクレア公爵家だ。
後継ではないものの
「正妃の産んだ王子と同い年の子を作って側近枠へ押し込もう」
という思惑で生み出された貴族。
王太子候補の王子自体は安全性を考慮して学院には籍だけを置き、実質学習はは城での自宅学習だが、ライオネルが城と学院とを行き来して学習の進み具合のすり合わせをする事になっているらしい。
「羨ましい…」
「公爵家はいいな…」
だのと声が上がっているが…
そういった子達も親が
「正妃の産んだ王子と同い年の子を作っておけばもしかしたら」
という思惑で彼らを作っている可能性がある。
(…そういえば「受験者数は例年の2倍です」とか言われてたな…)
ライオネル自身にも護衛とか取り巻きがいる。
王子も護衛と取り巻きを肉壁代わりにすれば、そこまで危険はないのではないかと思うのだが…
事はそんなに単純ではないのだろう。
ともかく
(今日もまた隠れ魔術師を新たに発見してしまった…)
と思いながら入学式を終えた。
(変身術を使っていないから、エルフではなさそうなのが救いだ…)




