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挿絵(By みてみん)


私には運命共同体というものが認識できない。

正確には運命共同体だと思っていたものが、いつの間にか

「民族的自虐利他主義な傾向を持つ足枷」

のようなものに成り下がっていたのを感じてしまい…

それ以降、敢えて

「そんなものは存在しないのだ」

と思い込もうとしていた。


なので運命共同体同士の間で起こる侵蝕・淘汰に関しても

「理解したくない」

という気持ちが強い。


ただーー


もしもあの【世界】でも

「生存競争・政争は団体戦・チーム戦」

だと理解されていて


それでいて、あの国には内ゲバ誘導が降りかかり

「国民同士で団結する」

という生存競争の基礎部分から壊されていたのだとするなら…


「そんな状態を押し付けていた者達」

に対して

「絶対許せない」

という怨念が湧き起こりそうになる…。


それが嫌だから

「生存競争・政争と向き合いたくない」

と思ってしまう。


魂を無念さで汚したくない。

復讐できない恨みなら忘れたい。

すり替え報復をして復讐した気分になれるとも思えないのだ…。



だけどデクスター大伯父様が

「有色人種の奴隷を扱う商売に罪悪感を感じずに済む理由」

の一つとして

「有色人種の魔術師はこれまで会った全員が前世では白人だったんだ」

「白人の魔術師はこれまで会った全員が前世では有色人種だったんだ」

という事実を教えてくれたので、少しは気が楽になった。


前世で悪人だった者達が、この世界で悪人に苦しめられるという確認は取れておらず…

前世で善人だった者達が、この世界で悪人になってしまうという確認も取れていないが…


「この【世界】の【管理者】は決して善なる存在ではないのだろうが…。『【参入者】の皆様に多様な体験を提供するのはサービスです』という方針だけは、実践されている痕跡があるんだ…」

と言われれば…


そうなのかも知れないと思う。


【管理者】の言う

「多様な体験」

というものが

「加害者だった者には被害者ポジションへと生まれさせる」

という

「因果応報の強制執行」

なのだとするなら…


この【世界】の【管理者】は

あの【世界】の【管理者】よりも

かなりマトモなのだろう…。

(情緒的な人間の心などそこには無くて、ただ単に「未体験の体験へ放り込んでいる」というだけなのだろうが…)


******************


デクスター大伯父様は他にも私が知っておくべき話をしてくれた。


「ショーンさんはお前に銀行預金だけでなく土地も遺している。その土地は東部と南部の領境にある旧オルビス男爵領にあるユーウェインの森だ。

今現在は南部の領地に組み込まれているが、その昔は東部の領地に組み込まれていた場所だな。

大昔は東部貴族と南部貴族の領地戦の舞台になっていた土地柄で、数十年前までは大量に未成仏霊が悪霊化していて、『通りかかるだけで人が変わって犯罪者気質になってしまう』と言われるくらいに、いわくつきの土地だったらしい…」

との事。


「それが今ではただの美しい森になっている。母さんが(コーネリアが)浄霊した地の一つなんだよ」


「…コーネリアおばあ様は、その森が旧オルビス男爵領だと知っていて浄霊なさったんでしょうか?」


「勿論知ってただろうさ。当時の東部貴族のバカどもが最後のオルビス男爵ローレンス・ミラを冤罪で獄死させなかったなら、普通にあの土地は母さんが(コーネリアが)相続してただろうからな。

いつか、自分の子孫があの土地の所有権を取り戻してくれると思って浄霊したかどうかは知らないが…

それでもショーンさんがあの土地を買って、お前の名義にしてた事を知らされて喜んでいたよ…」


「いつか…そのユーウェインの森で暮らしたいです」


「そうだな。セルマとしてではなくルビーとして暮らすのなら、北部から離れて暮らすのもありだろうな」


「魔道具でも作って、のんびり暮らしたいですね…」


「お前の伯父のトバイアス・スミスが隠れ魔術師で、魔道具を趣味で作ってるのは知ってるか?

普段は造船業に従事していてテリナに住んでるから、俺もしょっちゅう新作の試供品を貰ってるんだが…」

アラスターにそう言われて


「いえ、知りませんでした。ママは兄弟に隠れ魔術師がいるなんて話してくれませんでした」

と答えた。


「そうなのか?…まぁ、トバイアスは変人だし、お前が弟子入りしたいとか言い出すかも知れないと思って敢えて話さなかったのかもな」


「トバイアス伯父様は変人なんですか?男爵邸でお見かけしませんでしたね」


「常人の理解を超えた感性の持ち主なんだ」


「…性癖に問題があるとか、そういうのでしょうか…」


「…生理的に受けつけないだろ?そういうの」


「ええ、まぁ…」


「お前がナルシストの中年裸族に弟子入りして、一緒に暮らすとか…俺も想像がつかないし…。魔道具作りの師匠になれそうな人材が王都にいれば、学院が休みの日にでも通いで学べるんだろうが…」

アラスターが考え込むと


「王都には確か見習いを募集してる医師が何人かいるだろ?フェアバンクス家の医師なら医療に役立つ魔道具を幾つか開発してる筈だぞ。

ルビーはセルマと親友って設定だからフェアバンクス家の魔術師に弟子入りしても不審がられはしないだろ?」

とデクスターが指摘した。


「そういう手もあったか…」


父のショーン・フェアバンクスは亜人に生まれついたので長生きだが、その異母兄達は人間として生まれついたので短命だった。

とっくに亡くなっている。

今は父の異母兄の曾孫に当たる人がフェアバンクス家の当主。


フェアバンクス家は

「一族内で魔力を保ち続けるために、とスミッソン家の魔術師・魔力持ちを婿養子にとったり嫁に貰ったりしている」

ような家なので…


フェアバンクス家の当主側からすると

セルマ・スミスは

「ショーンおじさんの娘」

というより

「エレインおばさんの孫」

という認識になるらしい。


商人ギルドの銀行業務を仕切ってる銭ゲバ一族という事で評判は良くないが…

スミッソン商会の縁戚一族でもあるので、大物の後ろ盾がある人間以外は嫌がらせもできない。


準男爵家は世襲じゃない筈なのに、父の父シャーマン・フェアバンクスの代には既に準男爵家で、その後もずっと叙爵し続けてきたらしい。


十年くらい前には男爵位と田舎の小さな領地を与えられている。

今や正式な貴族家だ。

(更には分家が準男爵家になった)


デクスターにフェアバンクス家の現在の状況を教えてもらい、私の方でも乗り気になり…


ジョエル・フェアバンクスという隠れ魔術師の医師に

「治癒適性の魔力持ちを弟子入りさせてくれないか」

と話を持ちかけてもらえる事になったのだった。



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