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挿絵(By みてみん)


「皆が元気で良かったよ。私はもう新大陸へ戻るつもりだけど、何か重大な用件とかのある者はいるか?」

コーネリアが皆にそう尋ねると


「重大な用件ではありませんが、クエストール伯爵がヒーリングをお願いしたいと要望を述べていましたね」

と喪主のジョセフ・スミッソンがクエストール伯爵からの依頼を述べた。


「クエストール伯爵…。今のクエストール伯爵って誰だっけ?」


「コーネリアおばあ様は人間が年老いていく事に無頓着過ぎですよ」


「そうか?でも仕方ないだろ?亜人の中でも特別な位置付けの者は人間の中で生きても浮きまくるし、結局隠遁生活をするしかないんだから。

んで?今のクエストール伯爵って誰?」


「シドニー・スミスです」


「シドニー…。そんなヤツ居たっけ?」


「…あの人、コーネリアおばあ様の大ファンなのに…」


「基本的に血縁者の命に関わる問題でしかグレイス王国には居られないんだよ。だから治癒力を底上げしたポーションをあげるから、これを使ってやってくれ」


「エリクサーもどきですか?」


「そう。エリクサーもどき。せいぜいボッたくってやりなよ」


「そうします」


「じゃあね。皆、達者で」


目の前で転移魔法陣の図象が彼女の足元で拡大されて光り出し、光が彼女を包み込むと共に消えた…。


(本当に転移で帰ってしまった…)


******************


(まぁ、いいか…。変身術の強制解除術に関しては教えてもらえたし…)


コーネリアの話では

「エルフは他人に成りすまして悪さをする」

ものらしい。


長期間誰かに変身して過ごす状態で悪さをすれば自分がその後延々と居心地悪い思いをする事になるので…

エルフは悪さをしたくなったら「濡れ衣を着せたい相手」の姿に一時的に変身して悪さをする生き物なのだそうだ。


「だからエルフに対しては公衆の面前で変身術の強制解除をして『エルフとはこういう生き物です』と衆目に晒す事が必要になるんだ」

との事。


イーリーやレルフが悪事を働いている事が明確になったら、強制解除で変身を解いて、本物のその姿の人に迷惑が掛からないようにしなければならない…。


ただ

「エルフは不細工な素の顔を見られると激昂する」

という事も知られている。


単に素顔を見てしまったというたったそれだけの理由で人間が何人も殺されている。

ここ半世紀は美形のエルフもハーフエルフも増えているらしいが…

それでも素顔を見られると激昂する。


「それは、犯罪のアドバンテージを奪われたと感じるからなのでは?」

と思う。


息をするように何の罪悪感もなく他人を欺く。

そこに倒錯した優越感を感じている。

だから欺きが露呈させられると優越感にヒビを入れられたように感じて激昂する。

そんな心理があるように思える。


変身して罪を犯して冤罪を作り出す。

偽証して冤罪を作り出す。

そんな手口を組織的にやってのけるのがエルフという生き物。


「…ウーナ・アイビーがやり出した手口なんだけど…。エルフ女は『レイプされた!性奴隷にされた!』と嘘をついて男を性犯罪者に仕立て上げるような事もするんだ。

狙った標的に対する名誉毀損・信用毀損をやって、尚且つ『報復だ』と言い張って男エルフ達に誣告被害者を襲撃させて、金品や命まで奪わせる。

そういう手口をあの生き物はやっていたし、今でも若い世代の連中が踏襲し続けている。

厄介な事に、今は美形のエルフも増えてて、本当に性犯罪の被害者になりかねない魅力もあるから、そういった性犯罪捏造は客観的に看破しにくくなってるね」


「とんでもない性悪ですね」


「だけどね。エルフの最大の罪はそんなものじゃない…」

と言われて聞かされた話は更に酷かった。


「連中は吸魂鬼ドッペルゲンガーという魔物の能力である『吸魂の魔法陣』を利用して、度々人間の魂を抜いて殺し続けている。

最初は盗賊とかの魂を抜いて、それを『変身の魔法陣』を使ってミミックに融合させ、『知性あるミミック』を作り出していたんだけど…

融合させるのが魂だけだと浮世離れした不思議ちゃんしか作れないから、魂だけでなく自我まで抜き取って、魂と自我をミミックに注ぎ、人間と内面もそっくりなミミックを生み出すようになった。


それに際して『自我まで盗賊のものを使うとミミックが粗暴な性格になってしまう』と気が付いたエルフ達は、『自我は犯罪者ではない普通の人間のものを使おう』って方針に切り替えたんだよ。

お陰でグレイス王国内では子供達が拐われて、子供達の自我が抜き取られるようになってしまってる。


自我を抜いたままの子供はそれこそ浮世離れした不思議ちゃんになってしまって使い物にならないから、盗賊達の自我をミミックに注ぐ代わりにグレイス人の子供達に注ぐようになったんだ。

改心の余地もない盗賊を殺す分には構わないだろうさ。普通の冒険者達も魔物討伐同様に盗賊を討伐してるからね。

…でも何の罪も犯してない子供の自我と人生を奪って盗賊の自我と人生へすり替えるのはオカシイだろ。


そうやって自分達が子供らを盗賊になるように育てておいて、そう仕向けた側のエルフが『盗賊なら殺して良い』って殺すのは、家畜を育てて殺すのと同じ、『命の搾取』を前提とした飼育だろ?!人が人にして良い筈がない!

でもさ…。エルフは種族的自己中心主義が染み付いてて、そういった行為がとんでもない罪だっていう真実に気が付けないんだ。

反省する代わりに、自分達を正当化するために『人間達に差別されてきた被害者史実』まで捏造してしまった。

魂レベルで狂ってる種族なんだよ…。殺してやらなきゃ止まれない…」


そう聞かされて…


(それが事実なら…アレは…)

と王都内での人攫いに関して思い当たった…。


何故、誑かされて連れ去られた子供達が犯罪行為を教えられて素直にそれに従ってしまえるのかが謎だった…。


アレは…

(自分の本当の自我が抜かれて、代わりに盗賊の自我が入れられていたからだったのか!)

と判ってしまうと…


エルフという生き物の外道ぶりに対して心底から気持ち悪くなった…。

(「殺してやらなきゃ止まれない…」か…)


「…変身術の強制解除術は基本的に変身している者自身の変身能力を使うので、エルフが吸血鬼の血を使った変身の魔法陣を何処にも身に付けていないと本来なら発動できない。

だけど魔力量でゴリ押しすれば可能ではある。


エルフの魔術師の魔力量は人間の魔術師より多いから人間にはエルフの変身術の強制解除はできないけど、吸血鬼の魔術師の魔力量は他の亜人の魔術師の魔力量よりもかなり多い。


だからお前なら同世代のエルフの変身術なら強制解除できる。吸血鬼の魔力は肉体の成長に合わせて増えていくから、お前が大人になる頃には大人のエルフの変身術も解除できるようになる筈だよ」


「それはコーネリアおばあ様自身の実感ですか?」


「それもあるし、ハワードとの情報交換で分かった事実の一つでもある。吸血鬼の魔術師は始祖じゃなくても、他の種族の魔術師よりチートだという事さ」


「北部始祖様と仲が良いんですか?もしかして?」


「仲は悪くはないと思うよ。互いの血縁者が一番大事という点も理解できるし。それに北部には私が産んだハワードの子もいる。

契約の一つではあるけど、休眠期と活動期の切り替わり期間に互いの血を受けた子供を1人つくっておく事になってるんだ」


「…それって、北部始祖様もコーネリアおばあ様の愛人の1人という事、ですか?」


「そうとも言う」


「…なのに北部吸血鬼達はコーネリアおばあ様やスミッソン商会が嫌いなんですね?」


「なのに、じゃなくて、だから、なんじゃないかな?」

そう言われてみて


「そうだったんですね…」

と諸々の事が腑に落ちた気がした…。



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