表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/116

60

挿絵(By みてみん)


「どんな輩が紛れ込むか分からないから」

という警戒心丸出しの理由で

「身内のみの葬儀を行います」

と他家へ申告しているとかで…


血縁者以外の出席はなく

「お悔やみ申し上げます」

という定番のメッセージだけが転移魔法陣で届き続けた。


「俺は身内の魔力回路に関してはちゃんと記憶してるから姿だけ変身されても、直ぐにそれと判る」

とアラスターは玄関ホールに陣取って、訪れる血縁者達を1人1人確認していた。


「でも、使用人までは分からないんだよね?」

と私が訊くと


「それを言うな」

と仏頂面が返ってきた。


アラスターが殺したエルフは使用人に変身して屋敷内に入り込んでいたのだ。


コーネリア自身が屋敷の裏庭に仕掛けている転移魔法陣で転移してきて超加速で屋敷の外、中を確認。

家人は勿論、使用人に至るまで

「変身術を使った偽物ではないか?」

「本物だとしても変な暗示を埋め込まれていないか?」

をチェックしたところ…


「使用人に変身術の痕跡を見つけてしまい、強制解除で術を解いて本来の姿へ戻し、金縛りにかけた」

という状態の時、丁度私達が到着していた。


護衛の私兵はこの屋敷にも居るので、エルフは即座に縄で縛られたものの…

「尋問をしてから殺すのだろう」

と、その場の誰もが思っていたらしく


コーネリアがエルフの顔を見た途端に怒り心頭となり

「早く!今のうちに、そのエルフの首を落とせ!」

と叫んだ時、アラスター以外は誰も反応できていなかった。


(あのエルフ…余程の危険人物なんだろうな…)

と思った。


(あのエルフの話をする時、コーネリアおばあ様は涙をこぼしてた…)

多分、尋問をと思って会話すると

「また誑かされる」

と感じていたのだと思う。

だから尋問もせずに殺させた…。


(判る気がする…)


私は前世で人間の倒錯性と醜さを見せつけられたと思っているが…

こうして事実を事実として認識していられるのは、あの人達が今ここにいないからだ。


今もあの人達と一緒に暮らして日々ダメ人間として貶められ続ける状態が延々と続いていたら…

多分、あの人達の側の理屈に精神が呑まれていた筈。


「自分自身を激しく正義だと思い込みながら悪を為す人達」

の側の主観とナルシシズム。

あまりにも業深く独善的な人達の粘着かつ執拗な集団妄執。


そういう歪んだものに精神が呑まれる状態の狂気を体験してしまうと

「無自覚な洗脳を仕掛けてくる人達とは二度と関わりたくない」

と思ってしまう…。


(コーネリアおばあ様も同じ状態だったのかしら…)


まぁ、分からない。

彼女は実年齢はともかく、若くて美しい。

絵姿でも

「こんな綺麗な人、絶対、他にはいない」

と言い切れるほどに美しかったが…

実物はそれを更に凌駕している。

厄介な男にわざわざ引っ掛かる必要性がない。


美とはーー

顔立ちの美しさや肌の美しさの他、雰囲気の美しさのような、明確には認識されない要素も混じっていると思うのだが…

彼女はそうした点で、おそらく世界一美しい。


「始祖だから」

という理由でそうなのだとしたら…

ハワード・ローガンもきっと相当な美男子なのだろう。

(会った事ないけど)


この屋敷に忍び込んでアラスターに殺されたエルフは、エルフとしての名はランス・アイビーというそうだが…

人間としての名はオズバート・ガードナー。


オズバート・ガードナーは

「冒険者ギルドや商人ギルドの高性能カードの製作者」

「おそらく、世界一の金持ちだ」

との事。


彼はハワード・ローガンとウーナ・アイビーとの間にできた息子だが…

母親側の血が濃く吸血鬼にはならずエルフとして生まれついた魔術師。

(エルフの女が産む子供は大抵エルフかハーフエルフになってしまうものらしい…)


因みにハーフエルフは耳が尖っていて金髪。

地球出身者にとってのエルフそのもののイメージ。

一方でエルフは耳が尖っていて髪と瞳が緑色。

先祖返りのエルフだと肌の色も木肌色で

「樹木の精霊」

とでも言うべきイメージ。

「エルフらしいエルフ」

というものは決して美しくはない。


オズバートもウーナも髪の色こそ緑色だが…

肌の色は白くてエルフらしくない

寧ろ人間っぽい美しい容姿だったらしい。


そのオズバート。

人間として暮らしてる時の社会的地位は高く有名人。

「そんな大物を殺してしまって大丈夫なの?」

と心配になるが…


「大物だからこそ、いつ誰に殺されても不思議じゃない環境だった」

らしく…

「盗賊の死体をオズバートに変身させてガードナー邸へ置いてきたから大丈夫だろう」

との事。


「急死した盗賊の死体がベースだから傷一つない。医師は心臓発作で死んだと診断するしかないよ」

と宣うコーネリアは既に平常心を取り戻している様子だ。


随分と綺麗な死だ。

「オズバートのせいでエルフが不相応な力を得て吸血鬼を低リスクで狩れるようになった」

のだとしたら…

(拷問して苦しめて殺してやりたい…)

と思ってしまうのだが…。


それは私が

「狩られる側だから」

という自分の立場を理解した上での恨みなのだろう。


多分、こういう気持ちは人間達には分からない。

亜人にも分からない。

コーネリアのような規格外にも分からない。


「自分が」

命を搾取される

「狩りの標的」

にされるなど…


やられる側からすればとんでもない人権侵害だし

自己防衛がかなわなければ、まんまと命を搾取されるのだ。


そんな立場に置かれている者からするなら

「なんでエルフみたいな鬼畜な生き物が人間社会から排除もされずに受け入れられてるんだろう…」

と思うし、そんな鬼畜に超加速のようなアドバンテージを与えたオズバートは何回殺しても殺したりない気がする。


吸血鬼側が侵略者か何かなら

「ただ、この国で生きているだけで罪だ」

などという屁理屈も通るのかも知れないが…


北部吸血鬼などはそれこそ何1000年も前からグレイス島の北部で暮らしていた。

現在、東部の森に拠点を置いてグレイス王国全土で繁殖して調子に乗ってるエルフの方が数100年前から徐々に大陸側の森から移り住んできた侵略者なのだ。


全くもって、この国が

「エルフのような鬼畜な生き物を生かしたままにしておいてやる」

ような正当な理由が何一つ見つからない。


(「スミッソン商会総帥の葬儀」という割には人が少ないけど、エルフみたいなのに、これ以上忍び込まれないためには、これで良いんだろうな…)

と思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ