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コーネリアの話ではーー
コーネリアが吸血鬼として覚醒した事件自体がウーナ・アイビーによるものだったのだそうだ。
「当時の転移魔法陣て、手紙以外のものを転移できないのが当たり前だったんだよ。
小動物とかも肉片になって転送されてしまうし、人間を転移魔法陣で転移させて肉片に変えるだなんて、すごい悪趣味な殺し方だって思うだろう?
私だったら、他人をそういう殺し方で殺そうだなんて思いつきもしない。
なのに、ウーナは、私の事を目障りに思ってたとある高貴な夫人からの依頼で私を排除する事に決めた時に、よりにもよってそんな殺し方を選んだんだ。
酷いだろ?酷いよね?あり得ないよね?流石にあの時は『ああ、死んだな、これは』と自分でも思った。
なのに、何故か死ななくて、それどころか地下に転移させられた後、また元通りの部屋へ転移して戻れたし、自分でも変だなって思ったんだ。
それで翌朝には日光がダメな体質になってて血しか飲めない身体になってしまってる事に気が付いた」
「………」
(ツッコミどころが多過ぎて何も言えない…)
「…エルフが元々は美形じゃないって話は知ってるね?それと今はだいぶエルフの美形も増えてるって話も」
「はい」
「昔からエルフの女は面食いで、イイ男がいると、それが他人の男でも平気で寝とって子種を得てたらしい。
つまりエルフ女は伝統的に『美形遺伝子の取り込み』に熱心な生き物だったって事だね。
そしてエルフ女が産む子供は相手の男が人間や他の亜人でも、エルフやハーフエルフとして産まれる確率が高いらしくてさ…
お陰で変身術を使わずに素のままでいても充分に美形で通用するエルフも増えていったんだ。
だからエルフ女は『美形遺伝子の取り込み』に熱心で居続ける必要が無くなっていった筈なんだけど…ウーナ・アイビーは昔からのエルフ女の特徴をそのまま残した性質の女だった。
西部貴族家はセイレーンの子孫とかの血が入ってて北部貴族同様に美形が多い地方だったから、昔から『エルフ女が人間に化けて西部の男を誑かす』ような事は度々あったみたい。
アーサーのお祖父さんに当たる人がこれまたすごいイケメンだったらしくて、ウーナは愛人の1人ってポジションに収まるために『監視の魔法陣』を開発して、魔術師の不可視の使い魔の視覚・聴覚情報が『監視の魔法陣』に反映するシステムを構築したんだ。
それによって魔術師じゃない者達も『コイツを監視しよう』と思った標的を監視できるようになったって訳さ。
余計なことをしてくれたもんだよ。あの女のせいで、この国の情報戦が一気に陰湿化してエスカレートしたんだと言っても良い。
あの女、イケメン好きの淫乱は、アーサーのお祖父さんに色目を使ってたのと同時期に王都のフェアバンクス家でも『妻を殺して成りすます』みたいな事をしてて、実のところ、ショーンはウーナの孫だったりもするよ。
つまりセルマ、お前は私のひ孫というだけじゃなくて、ウーナ・アイビーのひ孫でもあるんだよね。
ショーンは、あの女の遺伝子が入ってるとは思えないくらいイイ男だったけど、お前も同様にあの女の遺伝子が入ってるとは思えないくらいに可愛くて、本当に安心した。
とにかくウーナ・アイビーという女はエルフの悪いところをキッチリ全部詰め込んで作ったかのような最低最悪の魔術師だった。
さっきのエルフはーーランス・アイビーは、ウーナと似た男だったよ…。見た目も、気質も…。
私はバカだったから、随分とあの男に誑かされてた。…お陰で超加速がエルフ側に流出して、エルフの戦力が底上げされてしまい、エルフ自体の悪質化もより一層進んだ。
結局は『こんなヤツらに力を与えてはいけない』と言わざるを得ない種族だったんだ。エルフという生き物は。
吸血鬼に生まれる以上に、エルフに生まれる事は、清らかだった魂を捻れて歪んだ鬼畜な性根に染めてしまう…。そんな『聖人の試練』がエルフに生まれる者達には降りかかっていたんだよ。きっと…」
「…さっきのエルフが超加速を流出させたエルフの魔術師本人なら、コーネリアおばあ様は『次に姿を見せたら殺す』と予告してたんですよね?
それなのに、さっきのエルフはノコノコ現れたんですか?…その心理が分からないんですが…」
「…私が甘いから、『どうせ殺せないだろう』と踏んだんだろうけど。…私が自分では手をくだせなくても、他の誰かにやらせる事ができるって、その事実には思い至らなかったんだろうね。ナメられたものだよ。
蘇生させたとはいえ、エレインとエリザベスが殺されたんだ。昔の誼なんてとうに無効なのにね…。
…やっぱり私にはアーサーしかいない。あの人だけが私を愛してくれてたって、今ではハッキリ解るんだ…」
「…本当に、とんでもない事をしてくれたエルフだったんですね。…そいつのせいで、この国の吸血鬼が危険に晒される可能性が跳ね上がったんだ…」
「…ああ。この国は未だ危険だ。…だから、お前、新大陸へ来る気はないかい?」
「…一緒に転移して行くとかはできないんですよね?」
「…そうだね。誓約的に一緒に転移は無理だ。…ただ物理的には可能だよ。【管理者】の元へ行く転移だけが特別で、あの場所へは自分1人しか転移できないけど、それ以外の場所へなら何処へでも何人も連れて転移自体はできる。
ただ誰かを新大陸へ転移して連れて行くと、こちらに残る身内がハワードの眷属に殺されるからできないだけさ。
だから飛んで行くとか、船で行くとか、転移以外の方法で移動する事になる」
「私は…。…多分、エレインお祖母様やママと同じでバカなんでしょうね。家族の命がかかってるなら、迷わずコーネリアおばあ様と一緒に行くって言うんだろうに…。かかってるのが自分の命だけだと、どうしても好きな人と一緒に居たいって思ってしまう…」
「…それは、誰だってそうなんだよ。多分…。ああ、因みにエレインも新大陸に居るよ。とっくに蘇生済みだ。エレインに関してはお前に関する記憶を封じてはいない。
ただしショーンとエリザベスには言わないように口止めはしてるけどね。
そのエレインからプレゼントがある。ここ数年は魔道具作りにハマってるらしくて、試作品といって珍妙な物を私も幾つか擦りつけられたけど、コレはそういう物の中でも使えそうな代物だよ。大事におし」
そう言って手渡されたのは懐中時計だった…。
寝ざまし機能付きの懐中時計。
便利は便利だけど、間の抜けた魔道具だ。
戦いの役に立たず
防御の役に立たず
それでいて
平和な日常の持続を想定して
平和な日常の持続を願って作られた魔道具…。
「…お前がこの国に居る限り、一生エルフと遭遇せずにいるなんて事は不可能だ。だからお前に、今の時点で知っておくべき事を話しておく。
お前がもっと成長して、もっと多くの真実を理解・咀嚼できるようになったら、更にお前に話してやれる事は増えるだろう…」
コーネリアはそう言って、その後もエルフに関する重要な予備知識について話してくれた…。
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それによって新事実を知った。
「エルフは元々は樹木型の魔物が(魔木が)従魔化・擬人化した亜人」
「エルフには『運命の番』と呼ばれる木が世界の何処かに在って、その木が何処かで切られると急死する存在でもある」
「よって、エルフよりも人間の血の混ざったハーフエルフの方が寿命が長いこともある」
そういった新事実を知って
(エルフのくせに寿命が運命の相手と同じだなんて随分とロマンチックだな…)
と少し癪に触った…。
一方で
(何処に居るのかも分からない相手が何処かで死ねば自分も急死するだなんて…不条理で怖い、とも考えられる)
とも思った…。
だけど考えてみれば
「生きてるものはいつか必ず死ぬ」
のだ。
それなら
どうせ死ぬんなら
「死ぬ時くらい独りじゃない方が良い」
とも思える。
(いつか…「一緒に死にたい」とか思ってしまうような、そんな離れ難い相手に出会えるのかな…)
朧げな期待ともつかぬ微妙な感情を覚えながら、そう思った…。




