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昔は
「シルヴィアス子爵家=スミッソン商会」。
つまり
「シルヴィアス子爵=スミッソン商会総帥」
だったのだそうだ。
しかし曾祖母コーネリアの夫、曾祖父アーサー・スミッソンは
「シルヴィアス子爵家の長男として産まれながら同性愛者で、子孫を残せないからという理由で爵位継承権を放棄させられた」
人だった。
それでいて商才はあったのでスミッソン商会総帥の座は引き継いだ。
それによって「シルヴィアス子爵=スミッソン商会総帥」という状態が終わった。
その後、スミッソン商会総帥となったアーサーは男爵位を得た。
(商売上、爵位があった方が都合が良かったからだそうだ)
シルヴィアス子爵家はアーサーの異母弟エリックが引き継いだ。
エリックの子供ゴドフリーが当主となった頃にはシルヴィアス子爵家は伯爵家へと陞爵。
グルゴレットヒル侯爵家の側近的位置付けに就く事となった。
それによって
「シルヴィアス伯爵家=グルゴレットヒル侯爵家の側近=スミッソン家の本家」
「シルヴィアス男爵家=スミッソン商会の本拠地=グルゴレットヒル侯爵派の商業部門」
という位置付けが固定。
「伯爵家の者が男爵家の者と親戚同士で結婚してるし、結びつき自体は強い。ただ伯爵家が政に深く関わる家なのに対して、男爵家はどこまでも商売人根性の家風だな」
とアラスターが述べた。
「…王立学院に在学中のシドニスティリュス伯爵家のイライアス・スミス、シルヴィアス男爵家のバーニー・スミッソンの2人は魔術師ですよね?バーニーは私の再従兄弟ですよね?」
と訊くと
アラスターはニヤリと笑って
「そうだ」
と答えてくれた。
「グルゴレットヒル侯爵派の貴族家は遠縁の血筋の者の中から魔術師を発見し、養子にして家に取り込み貴族家の魔力を維持する事が多いんだが、シルヴィアス男爵家の魔術師には実子が複数いる。これはこれで、実はすごい事なんだぞ?
アーサーお祖父様は王族に仕える竜騎士にはその名を連ねてはいなかったけれど、飛竜を駆るSランク冒険者でもあったんだ。
あの時代の戦闘特化の魔術師の中では実質最強だったと思う。優秀な奴隷商人でもあったから、デクスター伯父さんと俺はそれを継いで奴隷商人を兼ねてるんだ」
と自慢げに胸を反るアラスター自身は魔術師じゃない。
「…それで、アラスターおじさんは魔眼持ちだから行商がてら魔力持ちや魔術師を見つけてるんですね?」
と訊くと
「…何でも見え過ぎるってのも考えものだな?」
と苦笑された。
「不思議なのは、何故、男色家だった曾祖父様が子供を何人も残せたのかって事ですよね。
実は結婚はカモフラージュで、2人の子供って事になってる大伯父様達は皆、実は曾祖母様の愛人の胤だったって事でしょうか?」
私が一番の謎を指摘すると
「それな。俺も昔、疑問に思って訊いたんだよ。そしたら『始祖は生殖器官を完璧に構築できる高度な性転換の変身すら可能だから始祖なんだよ』って、言われた。
つまりコーネリアお祖母様は元々は男だったって事だな」
と爆弾を落としてくれた。
ヘイゼルを見ると
「驚きますよね」
と笑っている…。
事実のようだ…。
「始祖、すごい…。それじゃ、北部吸血鬼の始祖も女に変身して妊娠とかできちゃうんだ…」
「だと思うぞ」
「…それ、北部吸血鬼の皆様は知ってるんでしょうか?」
「年長組は知ってるんじゃないのか?若い連中は知らんだろ?あの人種は何考えてるのかよく分からんが、同性愛者ってだけじゃなく近親相姦傾向が強いからな…。
そういう病んだ性癖のままでも始祖を苗床にすりゃ子供を作れると知れば、皆で始祖に襲いかかって孕ませようとしかねないんじゃないか?
年長組の連中は始祖を独占したいだろうから、年少組にはそういう事実は教えない筈だ」
「うわぁ〜…」
(エグい真実を知ってしまったのかも知れない…)
「とにかくそういう訳で、俺達には間違いなくスミッソン家の血が流れてるんで安心しろ」
「エレインお祖母様がパパと曾祖母様との間の子とかじゃなくて良かった。もしそうだったらママはパパの孫だったって事になるし、パパは孫と結婚した事になるものね。それだと近親相姦が過ぎる…」
「笑えない冗談だ…」
「それにしてもパパが曾祖母様と付き合ってたのって、いつ頃なの?人間を吸血鬼にできないからと言って別れたの?」
「いや、当人が言ってた話では、北部吸血鬼達から存在を捕捉された以上、自分で自分の身を守れない男と懇意にして人質に取られたら困る、みたいな話だった。
結局Sランク冒険者でもあったアーサーお祖父様だけが頼りになるって気付いたって事だな」
「へぇ〜…」
「それでも愛人全員と別れた訳じゃなくて、エルフの魔術師とその後も付き合ってたみたいだが…。
ソイツが『超加速』の魔法陣の図形を他のエルフに流出させたのをキッカケに急遽険悪化したとかで『次にヤツが目の前に現れた時は殺す時だ』って言ってた」
「…『超加速』。エルフの手に渡ってるんだ…。ヤツら、使えるんだ?…」
「いや、魔術師じゃないと使いこなすのは難しいシロモノらしい。流石にその情報は北部吸血鬼とも共有していて、『エルフに魔術師が産まれたら超加速を使いこなせるようになる前に大義名分をこじつけて殺しておく』という事で方針が一致してるそうだ」
「…エルフの魔術師…。それじゃ、いても強くなる前に殺されてくれてるんだよね?」
「多分…」
「殺し漏らして、余計に復讐心に燃えられて強くなられちゃうとか、そういう事態は絶対起きないで欲しい…」
「そうだな、キッチリ死んでくれてると良いな…」
私はイーリー・モスとレルフ・デールの事を思い出しながら
(アイツらが早めに死んでくれますように…)
と内心で祈った…。
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「それにしても、この馬車、全然襲われませんよね?」
と不審に感じた。
「襲われないのが楽で良いだろ?」
「不気味です…」
「透明化と気配隠蔽をしてるから対向車があったり先行車・後続車との追い越し追い抜きがある場合は危険が多い。
だから近くに他の馬車が来た時にだけ透明化と気配隠蔽の効果を切るんだ」
「ほんと、魔道具って便利ですよね。やっぱり開発は隠れ魔術師がやってるんでしょうか?」
「そう。お前もそのうち錬金術師に弟子入りして魔道具を作りながら暮らしても良いかも知れないな。ルビー・ヒルとして」
「私、何故かいつの間にかノークス様の婚約者のルビー・ファレルになってしまってて、このままだとファレル男爵夫人にされそうなんですが?」
「…お前がそれでも悪くないと思うなら、それでも良いんじゃないか?仲良いんだろう?ジャン様の時と違って…」
「…ヴァンパイア・ハンター達から『吸血鬼じゃない』と思ってもらえたところで、『吸血鬼を誘い出すための人質にできる』とか思われると、やっぱり危険なんじゃないですか?私は自分の身が危険に晒されるのは嫌です」
「一番良いのは、超加速の魔法陣をエルフから取り返して、その魔法陣の図形を覚えてしまってるエルフ全員から記憶を消してしまう事だろうな。
それで随分と脅威は減る。エルフ狩りも楽になるし、上手く行けばこの国から連中を一掃できる」
「…いつか、そうなってくれると良いなって思います。そうなってくれれば、後は安心して暮らせます」
(ノークスと一緒に…)
私は、ノークスと自分が田舎でのんびり暮らしている理想の隠遁吸血鬼生活を脳内で思い描きながら…
心から未来の平和を願った…。




