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挿絵(By みてみん)



そんな風に私の中で渦巻く憎悪など何も知らずにーー


イーリーは

「そう言えば、寮監のオバサンが女子寮は男子禁制だって言ってレルフの出入りを許してくれないの、酷いでしょう?」

などと言って、周りに賛同を求めている。


「全く、融通が効かないんだな」


「どうせブスな行き遅れのオバサンのやっかみよ」


「私もそう思って『自分が男性に縁が無いからと言って僻んで嫌がらせするのはやめてください』ってお願いしたの。そしたら『黙りなさい』って怒鳴られちゃった…。ほんと、嫌な女…」


「可哀想に…」


「妬まれて嫌がらせ受けるようなら、もっと別の姿にした方が良かったんじゃないか?」


「今更、変えられないよ。それに…美形だから妬まれる、とかなら、うってつけの人材がいるもの」


「ああ、ルビー・ファレル?」


「そう。吸血鬼に誑かされるようなおバカのくせに、見た目だけはすごく可愛いの。…あの子が嫌われるように、周りを唆せば、みんなの悪意はあっちに向かってくれて、良い風除けになってくれると思うんだよね」


(死ねば良いのに…)


何故イーリーが私を見た途端に笑顔になったのか。

不可解な心理だった。

不気味だった。

その原因がこんなに直ぐに分かった事自体は喜ばしいのかも知れないが…


(風除けに使ってやろうだなんて最初から思ってたのか…)

と道具扱いされてたのを知るのは精神衛生上宜しくないと、しみじみ思った…。


******************


ノークスは入団審査を通過して即日入団を許されていた。

そのまま入寮手続きを終えて、王国騎士団寮へ入寮した。


騎士団では男色が蔓延ってる事もあり、基本的に寮のルームメイトは身内同士となるように振り分けられる。

そうしないとガタイの良い先輩が後輩の美少年を犯して、そっちの性癖へ調教してしまうような悲劇も起こるからだ。


「…貴種は排泄しないだろ?お陰で尻は常に清潔だ。そっちの趣味の御仁にとっては『途中からスカトロプレイになる心配』が不要の便利な穴って風に認識されるみたいでな?

なんかすっごい狙われるらしい。…騎士団で5年間過ごした貴種が何故どいつもこいつも性格が捻くれてるのか、分かった気がする…」

とノークスの実感が手紙にも書かれていて、思わず微笑ましくなった。


(ノークスは性根の腐った連中の性格に関して「そうなってしまうような経験を経たのだろう」と好意的な解釈をする人なんだな)

と思ったら、少しホッコリしたのだ。


私から見れば捻くれた意地悪な連中は元々そうだったとしか思えない。

好意的に解釈する、という事がどうしてもできない。

それは私が北部人じゃないからなのかも知れない…。


多分、私は西部貴族に対しては、性根の腐った性格を見せつけられても

「そうなってしまうような経験を経たのだろう」

と好意的に解釈してしまうと思うのだ。


悪意的に解釈しようとするとーー

アラスターや両親の顔がチラついて悪意的な考え方を維持できなくなる感じか…。


そういう内面の現象からも

「人同士の関係は当事者個人同士だけのものではなく周りの人達の関係とも関連するものだ」

と感じる。

それを理解できない者が平気で内ゲバに流れるのだろう。


そんな事を思ったのが、フラグにでもなってしまったのか…。


「ジョージ伯父さんがーーお前の大伯父がーー危篤だ」

という手紙が転移魔法陣で届いた。


急きょ西部のシルヴィアス男爵家まで行く事になった。


勿論、私は疑い深い。

「来なくて良い」

と言われても疑うし

「来るように」

と言われても疑う。


他人の真意なんて分からない。

そもそも罠かも知れない。


転移魔法陣を使った手紙のやり取りは使い魔を使った手紙のやり取りとは違う。

必ず相手に届いている保証はない。

届く手紙も本当は別人が筆跡を真似て書いてるのかも知れない。


なので思わずフリンジを使って転移魔法陣で転移させた。

転移魔法陣の向こう側の状態を確かめたかったからだ。


(本当に不可視の使い魔は転移魔法陣で転移できるんだな…)

と少し感動しながらフリンジの視覚・聴覚を借りて、辺りを見回すと


「葬儀は大々的に行う必要はないので準備も小規模を想定したもので良い。お祖母様が新大陸から帰還されるそうだし、下手に大勢を呼べば確実に場が荒れる」


「遺産に関する手続きはどうなさるおつもりなのか、何かお聞きおよびですか?」


「それは伯父さんの実子と内孫が気にする問題だが、まぁ、ウチも無関係ではいられないだろうな。

ウチのような非合法のものも何でも取り扱う部門に関して新会頭のジョセフはイイ顔をしないからな」

などといったやり取りが聞こえた。


こうしたやり取りが私に見せるための幻影で、予め幻影が仕掛けられてるとかじゃないなら、ジョージ大伯父様が亡くなったのは事実。


「そうだ!セルマを呼ぶには色々工夫が必要だから、その事もセルマに詳しく説明しておかなければな」

とアラスターが言い、手紙を物凄い速さで書き、それを転移魔法陣に乗せて、転移魔法陣を起動させた。


と同時に私の手元の転移魔法陣が光り出し、手紙が出現した。

なので、どうやら、本当に、大伯父は危篤らしい。


(曾祖母様は死んだ人間を生き返らせる事ができるって話だけど…。ジョージ大伯父様を生き返らせたりしないのかな?)

と少し疑問に思った…。


「実はお前の父がお前に遺産を遺している。とある土地と商人ギルドの銀行サービスを利用した預金だ。

セルマ・フェアバンクス名義の預金も相当な額だがショーン・フェアバンクス名義の預金は更に巨額だ。既にショーンさんの預金はセルマ名義の口座に移してある。

商人ギルドに入り込んでいる敵側にもそうした情報が漏れている筈なのでセルマ・スミスとして預金をおろす時には細心の注意を払ってくれ。

ただの強盗を装って生き残りの吸血鬼を狙ってくる可能性が高い。

そもそもセルマ・スミスが北部以外の場所をウロつくのはリスクが高い。

ルビー・ファレルにはセルマ・スミスと同じように『モルガン侯爵城で暮らしていた』という履歴があるので、2人が親しいという設定を追加しても問題はないだろう。

なのでセルマ・スミスの影武者を用意するので、お前はセルマ・スミスの友人のルビー・ファレルとしてシルヴィアス男爵邸へ来てくれ。

馬車の手配はこちらで済ませる。2時間後に女子寮の前に着ける。セルマ・スミスの影武者は本当にお前にそっくりだから、驚き過ぎるなよ?

親戚を亡くした友人に付き添うという役柄通りに演じてくれ。どこに監視の目があるか分かったものじゃないからな」


速く書いた事でいつもより字が乱れているが間違いなくアラスターの字だ。


(3歳の頃以来なんじゃないかな?親戚の人達に会うのなんて…)

緊張で身体がこわばる気がした…。



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