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「冒険者登録は10歳からできるから、私達は10歳から冒険者をしてるのよ」
イーリーにそう言われて
「そ、そうなんだね…」
と返すのが精一杯だった。
(動揺し過ぎるのは目を付けられる原因になりかねない。冷静になろう…)
「冒険者ランクは15歳になるまではEランクで打ち止めだから、私達もEランクから上に上がれないんだけど、冒険者ギルドのお偉いさんが『魔術師かも知れないから王立学院へ入学してみたらどうか?』って勧めてくれたの」
「…冒険者ギルドのお偉いさんって具体的にお名前とか役職とか分かる?」
「ううん。分からない。親切なオジサンって事くらいだよね?私達が知ってるのは」
「…本名は分からないけど、他の職員さんから『ピットさん』って呼ばれてたのは知ってる」
(本当にそんな人、いるのかな?)
「因みにどこの冒険者ギルド?」
「王都の冒険者ギルドだよ?」
「王都の冒険者ギルドって1つだけ?」
「王都の冒険者ギルドは中央本部と北支部と南支部の三つだね」
「イーリー達はどこのギルドだったの?」
「…さぁ、どこでしょう?」
「中央本部とか?」
「…ルビー。どうしてそんな事、知りたがるの?」
「…イーリー達を『魔術師かも知れない』と言った人が魔眼持ちなら、本当にイーリー達は魔術師かも知れない、から?」
「…魔眼持ちって、稀少なの?」
「魔眼持ちは分かる事が多いから、みんな仲間に引き入れたいって思うらしいよ。『どこそこに魔眼持ちが居るらしい』って情報を北部の偉い人に教えれば褒めてもらえるかも知れないでしょう?」
「北部の偉い人?…とやらに褒められたいの?ルビーは…」
「私は元が平民だから…。偉い人に評価されて貴族の家の養子になれて、貴族の婚約者もできたんだよ。役に立つ事を示し続けないと捨てられるかも知れないでしょう?」
「…つまんない人生だね。…貴族に媚びて楽しいの?ルビーも冒険者になればいいのに…」
「イーリー。ルビーの人生はルビーのものだ…」
「…ルビーは北部のきゅ…田舎貴族には勿体ないよ。だから自分の価値を自分で理解して欲しいだけ」
「それでも、お前のそういう考え方は押し付けがましい。ルビーに嫌われたいのか?」
「嫌だ!ルビーに嫌われたくない!」
「なら、イヤミな言い方をした事を謝れ」
「………」
「…私は別に気にしないよ。ただ魔眼持ちかも知れないオジサンの居るギルドを知りたいだけ」
「悪いな。北部貴族からのスカウトだなんて、そんな面倒な事態があの人に降りかかるのは俺達から見ても好ましくない。
あの人の居場所を今ここでアンタに教えてしまうと恩を仇で返す事になっちまう気がする。だから教えられない」
「そうなんだね…」
「「………」」
そんな会話をしながら内心では
(うわぁ〜…。何なんだろうね。この運の悪さは…)
と自分自身の運の悪さを呪った。
とりあえずイーリーとレルフに関しては
「要観察だな」
と判定。
ノークスにも「リー」を通して伝えた。
寮内では極力自分の目で監視して
「自分の目が届かない時はフリンジかエンドに監視させよう」
と思った。
早々に尻尾を出してくれるなら嬉しいが
(彼らの仲間に魔力探知能力の高い人が居なければ良いけど…)
という心配も出てきた。
魔力探知能力の高い人は
「不可視の使い魔の魔力から術者を割り出せる」
のだから、そういう人物の周辺での使用は避けたい。
私も変身術を使ってる魔術師だ。
私以外の魔眼持ちから見たらすこぶる怪しい生き物だと思うのだ…。
他人に変身術をかけて変身させるのはそこまで難しくない一方で、他人のかけた変身術を解いて、本来の姿へ戻すような解除術はとても難易度が高い高等技術。
それこそモルガン家の貴種くらいしか使えない。
(エルフには当然できない)
なので私が自分で術を解かない限り
「本当の顔が不細工なので『見るに耐えない』と言われて、この顔に変身させられました!」
という言い訳が使える。
その言い訳が通用する限り
「変身術を使ってる=怪しい=吸血鬼だ=狩ろう!(殺ろう!)」
とはならない筈。
(多分)
早速、使い魔をイーリーの観察に回す事にした。
…だけど、それは精神的に苦痛を伴うものだった。
私の直感が
「2人はエルフだ!」
と捉えている以上、そうした監視は
「エルフの生活を覗く事」
なのだ。精神的に。
グレイス王国以外の国に居るエルフ達は変身術を使わず吸血鬼の血も狙わない。
なのにグレイス王国のエルフ達は変身術を使い、吸血鬼の血を狙う。
殺人の必要性がないのに
殺人が必要な事だと
集団で思い込み
吸血鬼を殺す殺人行為を
「狩り」
と称して吸血鬼を
「亜人ではなく魔物だ」
と断定し敵視する。
吸血鬼は生きるために血を啜るが
エルフは活きるために吸血鬼を殺す。
生きる事と活きる事は違うもの。
生き物は生きようと足掻くものだが、活きようと足掻く必要はない。
活きていなければ生きられないなどという事はないのだ。
この国のエルフは、そうした生き物の摂理を無視した気持ちの悪い生き物。
そもそもが吸血鬼が他所の国から入り込んできた乗っ取り侵略者だというのなら敵視される理由にもなり得ようが…
他所の国から入り込んできた乗っ取り侵略者はむしろエルフの方。
元々他所の国に居たのだから、元の国へ帰れば良いものを…
連中はしつこくグレイス王国にしがみついて、吸血鬼の血を狙い続ける鬼畜な生き方を続けてきた。
そんな連中が何を考えて生きているのかなんて知りたくないのだけれど…
いつ自分が吸血鬼だとバレて襲われるのか分からない以上、気持ちの悪い鬼畜な生き物の生態を観察する事が、たとえどんなに苦痛でも監視は必要なのだった…。
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イーリーとレルフは、どうやら「冒険者仲間」とやらに大事にされていたようだ。
寮に入ったその日のうちに「冒険者仲間」と思しき大人達と出かけた。
その「冒険者仲間」の大人5人も全員、変身術を使っている痕跡が見える。
(コイツら全員エルフなのかな…)
気持ち悪い。
ひたすら気持ち悪い。
ママのーー
母の血を盗んでいったヴァンパイア・ハンター達は、母の血を仲間と分け合って、変身術の魔法陣に血を注いで魔法陣を有効化させた筈だ。
(彼らを変身させている魔道具に使われている吸血鬼の血はママの血かも知れない…)
と思った瞬間に全身の血が煮え立つような錯覚を覚えた。
人間の冒険者に化けているヤツが、人間の学生に化けているヤツに笑いかけて、親しみの表現として頭を撫でている…。
そんな光景を見せつけられながら
(コイツらに、こんな幸せな日常を送る資格なんか無いんだ)
と憎しみが無限に湧き起こる気がした。
許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない、許せない…。
他人の幸せを奪っておいて…
こちらを魔物扱いして
人扱いをしないという
差別をしておきながら
何の罪悪感も持たずに
殺人鬼同士
吸血鬼の血を利用した者同士
ネチネチ馴れ合って
ネチネチ癒着して
仲良く笑って過ごして
親しみを交わし合って
幸せそうにそうやって生きていたのか…
お前達は…。
そんなヤツら、許せないし、許していい筈がない…。
自分自身の負の念で思わず目眩を感じた。




