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基本的に南部貴族家の人達は見た目が悪い者が多い。
東部貴族家にはエルフの血が混じっていて、西部貴族家だとセイレーンの血が混じっているのに対して、南部貴族家はドワーフの血が混じっていると言われる。
(北部貴族は言わずと知れた吸血鬼…)
エルフ自身は変身術で美形に変身するがそれほど美形ではないので東部貴族の見た目は醜くはないもののパッとしない。
ドワーフの血が濃い南部貴族に至ってはハッキリと残念な容姿だ…。
バルモーラル公爵家の養女令嬢ミカエラ・モデスティー。
彼女はちょっとした女王様待遇で周りからチヤホヤされている様子。
(南部貴族家の血筋にしては普通の見た目だし…。南部人の中にばかり居たなら「自分は美形だ」と勘違いしてもおかしくないのかなぁ…)
と思う。
世の中の美醜基準は案外アテにならず
「肌が綺麗=美人」
という見方をする人もいるくらいなのだ。
(鼻がアグラをかいてようが、目が三白眼だろうが糸目だろうが)
ただし魔眼で見てみると
「魔術師だ…」
と判るので、覚醒済みなのだとしたらなら…
それがカリスマ感に繋がってそれなりに魅力はあるのかも知れない。
覚醒済みの魔術師なのか
非覚醒の魔術師なのか
魔眼でも分からないけれど…
魔力回路の精密さは彼女が紛れもなく魔術師だと示している。
「貴族家に引き取られる養子って実は大半が魔術師なんじゃ…」
と嫌な予感を感じて、食堂内の学生達の魔力回路を見ていくと、ミカエラ以外にも4人魔術師と思われる学生がいた。
なのでヘザーとオルニーに
「ミカエラ嬢もですけど、あの人と、あの人と、あの人と、あの人も魔術師です。名前分かりますか?」
と尋ねた。
2人はヒュッと息を呑んで
「すごいな」
「精度の高い魔眼持ちは魔術師が判るんだ?」
と驚いていた。
「教会の魔術師が大量に魔力使って術使って見分ける識別より優秀なんじゃないの?」
とヘザーが苦笑した。
「シドニスティリュス伯爵家のイライアス・スミス、シルヴィアス男爵家のバーニー・スミッソン、コールリッジ子爵家のジミー・ジャクソン、コールリッジ男爵家のザック・ヒューストンか…」
「今まで気付かなかったわ…」
「魔眼で魔力回路を透視しないと、分からないものだと思いますよ。…相手が魔術師固有の魔術を目の前で使ってくれた場合ですら、大抵の魔術が魔道具で再現可能だったりするし、見分けは難しいでしょうね」
「今日は入寮可能日初日だし、今後新入生が入寮してくると、更に魔術師が発見できるのか…」
「因みにオルニーさんがジミー・ジャクソン、ザック・ヒューストンと呼んだ御二方は変身術を使ってる痕跡があるのでエルフの可能性が高いです」
「………エルフ。こんな所にまで潜り込んでるのか…。しかも魔術師…」
「ジャクソンって姓から身元を怪しんで、『ジャクソン商会の御曹司』って事は割り出してたんだけどね」
「豪商が爵位を買って子爵家を名乗ってるなんて、スミッソン商会と同じパターンなんですね」
「悪徳商会の行動パターンは何処も似てるって事だろう」
「…それはそうと。ノークス様の入団で騎士団内の魔術師やエルフも今夜にでも発覚してるんじゃないでしょうか?」
「それも情報共有しないと、だな」
「お二人は騎士団内のどなたかと鳩のやり取りはしてますか?」
私が何気なく訊くと
ヘザーが
「ライアン様と…」
と答えた。
ライアン…。ライアン・ファレル。騎士爵家の貴種。
ジャンを嘲笑してた頃が16歳だったから今は20歳くらい。
騎士資格は取得済みで御礼奉公期間といったところか。
「それでは私はノークス様にお伝えして、ヘザーさんはライアン様にお伝えください。オルニーさんは…」
と言いかけると
「俺は自分の鳩をファレル伯爵家とモルガン子爵家へ飛ばす事になってる」
だそうだ。
「できるだけ事細かに情報共有していきたいと思います。明日の夜も何か分かったらお伝えします」
「「了解」」
夕食時間に情報共有するのは実は理に適っている。
何せヘザー達はこれまでも結界魔道具を使って情報共有してきた。
結界内の音は認識阻害看破魔道具を使っても外から聞く事はできない。
勿論、不可視の使い魔が結界内に侵入していると使い魔と感覚共有している術者に聞かれてしまうが…
私が加わった以上、そんなヘマはさせない。
私の場合は「普通の食事を摂れている」幻影を結界の膜に投影する必要があるので、どの道、食堂では結界を張る。
ヘザー達が張る結界に幻影を投影する事でちゃんとヘザー達が結界を張れているのかの確認にもなる。
(魔石のエネルギーが切れると結界が張れない時もあるらしい)
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初日は順調な滑り出しに思えた。
何せ寮の2人部屋のもう1人の入居者はまだ入寮していなかったから…。
前途多難だと思ったのは翌日からだった。
入学式までまだ2週間あると思い、安心していた。
12歳のお子様は普通は親元を離れたがらずギリギリまで実家に居座る。
なので入学式の前日に慌てて入寮してくるのが全体の8割超えなのだそうだ。
(そういうお子様の行動パターンに関しては寮母が話してくれた。愚痴混じりで…)
私と同室のルームメイトは2割の自立性あるお子様だったらしく、私が入寮した翌日に入寮してきた。
「イーリー・モスです」
と笑顔で挨拶してくれたルームメイトは変身術を使っている魔術師の美少女だった…。
(顔を変えているなら、本当の顔かどうか分からないが…)
そのイーリーが
「幼馴染みなの」
とか言って紹介してくれた少年もまた変身術を使っている魔術師の美少年…。
(顔を変えているなら…以下略…)
「レルフ・デールです」
と言われても偽名にしか思えない…。
貴族家の猶子にもならず養子にもならず、冒険者ギルドに後ろ盾になってもらっての入学だそうだ。
変身術を使っている魔術師の美少女、美少年の2人組。
(エルフだ!)
と私の直感が告げている…。
4年間の学院生活が無難に済みそうもない予感をその時にハッキリと予感したのだった…。




