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合格通知が来たがーー
ちゃんと学院の合格発表の張り出しも見に行くつもりである。
何せ
「通知は間違いでした」
「誰かの悪戯でした」
という事もあり得る。
私は疑い深いのである。
入寮手続きは入寮希望日の三日前には済ませておく事が規則なので、どの道合格発表を見に行ったついでに手続きをしておく事になる。
合格発表のリストは丸一日張り出される予定なので朝一番に行く必要もない。
なので昼過ぎに行ってみた。
はい。
ちゃんとルビー・ファレルの名がありました。
(ファレル子爵家の養女設定なので、設定上、今後はカウリー・ファレルの妹という事になる)
「そう言えば、モルガン家からも受験してたんですよね?」
とノークスを見遣ると
「朝に来て、入寮手続きを済ませて帰ったんじゃないのか?」
との事。
「…モルガン騎士爵家の男子って事でしたよね?それってフィリス卿みたいな人格破綻者だったりするんでしょうか?」
「どうだろうな。ウォーレス・モルガンも、その従者も別に問題があるような噂はないが…。それを言うならフィリス卿だって悪い噂は一切無いからな…」
「善い人である事を期待します」
「…どうしても学院生活が辛くなったら別に逃げても良いんだからな?事務職に必要な資格取得試験でできるだけ多く資格取得しておけば民間でも採用されやすくなる。
女官になれなくても貴族家の家政婦に採用されて活躍する婦人もいる」
「そうなんですね…」
「北部から南部貴族家へ婿入りする者が増えてるとかで、婚家へ引き連れていく上級使用人を多く必要としているらしい。
上級使用人には教養ある北部人を多く確保したいらしいから、中途退学だろうと王立学院へ通ったという履歴の持ち主だと需要があるんだ」
「分かりました。教えていただき有り難う御座います」
学院生活で心休まる点があるとすれば
「アルバート先生が算術の教師として学院に所属する」
という点だろうか…。
私は特にモルガン家のウォーレス・モルガンや、その従者とかいうレックス・モルガンについて考えもしなかったのである。
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私の入寮希望日が丁度、騎士団入団審査が行われる日だ。
「お互い頑張りましょう」
と言ってファレル伯爵邸を出た。
「…俺の方の合格の成否は使い魔の鳩を飛ばして知らせる。その時にお前の方でも不審な事がないかどうか知らせて欲しい」
と言われた。
ノークスは鳥型の使い魔を2匹使用している。
鳩の「ジー」と「リー」だ。
「ジー」はノークスの父親マーカス・ファレル男爵とのやり取りに使っていて、頻繁に親子間を行き来している。
「リー」はノークスの祖父ルーカス・ファレル前男爵との安否確認のやり取りに使っているが、それほど頻繁にやり取りしている訳ではないので他の用途にも使える。
なのでノークスが私へ飛ばしてくる鳩は「リー」のほうだ。
家族との私信に使っている鳩を寄越されると
「なんだか家族扱いされてる?」
気がして少し嬉しい。
最初はノークスの人物像は
「ジャンへの意地悪な視線や態度」
の印象が残っていた。
そのせいで身構えたが…
ノークスは私に対しては「善い人」なのだと思う。
婚約者というより友達感覚だけれど、私達くらいの年齢なら婚約者同士のやり取りはこんなものなのだろう。
(ずっと仲良くできたら良いな…)
と思う。
馬車は真っ直ぐに王立学院の女子寮へ向かってくれた。
荷物を寮の自室へ運び込むのにすら男子禁制という事らしいので…
荷物の大半は内部空間拡張収納袋に入れて、鞄はダミーで持ってきた。
中身がスカスカの鞄なので軽い。
寮母の他に寮監がいるらしく清掃や洗濯を担ってくれている。
ノークスの親戚のヘザー達は私より二学年上なので次は3年生。
教室も寮内の自室の区画も違うので、男子寮と女子寮との中間区画にある全学年共有使用の食堂や多目的室で集まって情報共有する事になっている。
食堂での席は誰が何処にと決まってはいない筈だが…
「上位貴族家の嫡子らが好んで座る席近辺は空けておく事」
が暗黙の了解となっている。
行方不明になって途中でいなくなる生徒や死体で発見される生徒というのは、大抵、暗黙の了解が分からずに地雷を踏んだ生徒達らしい。
本来なら寮母や寮監がそういう暗黙の了解を生徒達に教えておくべきだと思うのだが…
大人による児童保護の放棄はこの【世界】でも常態モードのようだ。
上位貴族なんて関わらないでおくに限る…。
しかし関わりたくなくてもーー
中央貴族のロヴェル公爵家。(露骨に王家の親戚)
東部のオークニー侯爵家、セントクレア公爵家。
南部のセントギルフォード侯爵家、バルモーラル公爵家。
西部のグルゴレットヒル侯爵家、ストリーモニス公爵家。
そういった家の子息・令嬢は
「騎士団に入団しよう」
などとは思わないらしく、取り巻きを引き連れて王立学院へ入学するものらしい。
北部のモルガン侯爵家も上位貴族家だが、モルガン侯爵家の場合、決して子沢山という訳じゃない。
エヴェリー・モルガンが嫡子として正式に認められた侯爵家令息という事になるものの…
エヴェリーは学院で勉強などするヤツではなく、王国騎士団の方へ入団して御礼奉公期間も終えている。
今や北部騎士団の幹部。
北部以外の貴族の場合
「同じ地方の上位貴族に媚びる事で快適な学院生活を送ろうとする」
ものらしいが…
北部の場合、上位貴族家が学院に籍を置いていないのみならずOBでもないので庇護下に入れてもらえる傘がない状態である。
ただ、南部貴族家に対しては
「婿入りして婚家を乗っ取る」
ような手口で着々と南部貴族家を北部貴族家が呑み込んでいるので、令嬢・令息の意識次第では仲良くしてくれるそうだ。
「その点、ウチの学年の成績トップのバルモーラル公爵家の令嬢は全然ダメだね…。公爵家の親戚の優秀な子が養子として引き取られたみたいだけど、何ていうか…嫡子でもないくせに自分を勘違いしてるし、いちいち偉そう。いちいち上から目線…」
とヘザーが苦笑する傍らで
「バルモーラル公爵家は60年くらい前にスタンリー様が(ハンフリー・モルガン侯爵の嫡男が)婿養子に入って当主になられてるし、今も代替わりしてないし、代替わりするならエヴェリー様にお継がせになる筈なので、エヴェリー様の嫁候補に当たるんだろうけどね…」
オルニーがバルモーラル公爵家の事情を説明してくれた。
「そういう社会情勢を理解できてなくて、北部人に気に入られる必要性も分からないんだから、幾ら座学で優れていても生き延びるための直感みたいなものが致命的に欠けてるんだと思う」
「そうなんですね…。3年生の成績トップって、そういう人間性なんだ…(うわぁ〜…)」
「エヴェリー様がああいう女を気にいる事は絶対無いと思う。顔もそんなに良くないし、性格は良くないどころか最悪だし」
(一体、どんな子なんだろう?)
と気になって
「その人、今、この食堂内に居ますか?」
と尋ねると
「ん〜…。あっちに居るね。あっちのグループの真ん中に居る子」
と教えてもらえた…。




