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挿絵(By みてみん)


不可視の使い魔を使った陰湿な監視。

そういうのを仕掛けている人達を欺くのには全く罪悪感を感じない。


なのでフリンジを使った幻影術が成功してから数日経った時点で

「自分は結界内にいて、結界外からの監視者には読書をしている幻影を見せる」

のもかなり上達していた。


ただ、それだと

「監視者の目を欺くという事しかできていない」

ので、大して自分自身の役に立っていない。


そんな事もあり不可視の使い魔をもう1匹創造した。

新しい使い魔は「エンデ」と名付けた。


フリンジには監視者の目を欺く幻影を投影する媒介として今後も働いてもらうつもりでいるし、エンデの方には情報収集を命じるつもりでいる。


何せ私は世間知らずだ。

盗み聞きで得られる情報は私の耳が聞き取れる範囲内。

夜ならかなり遠くの音も聞こえるが、昼だとせいぜいが半径50メートル以内の範囲くらいか…。


そういった情報不足をエンデで補える。


そんな訳でーー


北部騎士団の幹部執務室や

北部の街や

北部の森で

色々見聞きさせる事にした。


しかし基本的に

「私に関する陰口」

を盗み聞きなどするもんじゃないな、と思った。

(エゴサーチは心を荒ませる)


城内の使用人や騎士達が

「あのガキ」

と口にすれば、それは私の事を指していた。


「あのガキ」

という言葉の後に続く言葉をそのまま聞いていると耳が穢れる気がするくらいに、誰もが口汚なくて、心が汚かった。


「何故そんな悪意的な見方でこちらの言動を悪し様に解釈できるのだろうか?頭がオカシイのか?」

と驚くような悪意的な物の見方を皆がしていた。

正直、傷ついた。


ただ、口汚なく悪口を言われているのは私だけではないようだとも気付いた。

「モルガン騎士爵家の面汚し」

という言葉が使われる度に

「フィリス様のことまで悪く言うようなら許さねぇぞ」

と急にフィリスを擁護する男達が湧くので…


(「モルガン騎士爵家の面汚し」と「フィリス・モルガン」は何か関係がある?)

という事は分かった。


ともかくーー

人々の噂話に聞き耳を立てて情報を得ると心が荒む。


(前世で私は人々の悪意に慣れてた筈だったのに…)

と少し自分自身にもガッカリしてしまう。


と同時にーー


(ああ、そうか…。私はネットユーザーとしては結婚後に人気擬態要員として存在しただけだったから、ネットとは疎遠で、ネットいじめされていた時に周りの人達の悪質さを本当の意味では理解できていなかったんだな…)

と理解した。


あの頃の意地悪な人達の妄執と悪念がいつまでもしがみついてきて

「絶対に、お前を傷付け苦しめ、自殺したくなる絶望へと叩き落としてやる」

と主張しているかのようだと思った。


それにしてもーー


【世界】変われど

人種変われど

文明レベル変われど

「意地悪な人達の妄執と悪念はどれも同じなのだな」

と感じた。


「立場の弱い、味方のいない、報復できない弱者」

に対して

「皆で嫌悪し排除感情を共有する事で、皆の団結力を維持する」

ようなスケープゴートをする人達というのは皆、似ている。

個性など持っていないかのようだ。


敢えて連中を一緒くたにせずに分類していくとするなら

「自分達がしている事は卑怯な事だ」

「自覚できている者」

「自覚できていない者」

とに分類できるのだろう。


「自分の感情を周りにも共感してもらいたい」

と思うような同調圧力を生み出す人達は


周りに対して

「別にお前の損になる事じゃないんだから共感してくれても良いだろう?」

という同調圧力を普段から強いている。

自己開放的なのだ。

気まぐれでもある。

積極的に他人と関わろうとするので人懐こいように見えなくもない。


だが人との関わりの中で好き嫌いを言い過ぎる。

「俺が好きなモノをお前も好きになってくれ」

「俺が嫌いなモノをお前も嫌いになってくれ」

といった具合に自分の好き嫌いに対して賛同を求める。


「自己否定に繋がる」

ような同調圧力に対しては皆

「共感できない」

と突き放すようだが…


標的にされるものが自分にとってどうでも良ければ

「へぇ〜。そうなんだぁ」

と受け入れて共感してしまう。


波風立てるのが面倒くさいなら、特にそうなる。


私という存在は、そうやって嫌われ憎まれていた…。

そういう図式が如実にこの城では可視化されていた。


前世ではーー

「そういう図式がある」

のを知らないままだったが…

前世でも同じ図式が作られていた可能性は高い。


(私は…「人の輪」に参加した事が無かったんだなぁ)

という事がしみじみと分かってしまった。


社会内の人同士の心理的駆け引き。

波風立てないための処世術。

どうでも良い者への切り捨て。


そういう心理が

「社会にはずっと存在していたのだ」

という事が今更ながら理解できた…。


******************


魔木や魔草は動かない。


不可視の眷属も森に侵入しない限り人間を攻撃しない。

魔木と魔草の森にいつの間にか魔物が湧いていても、不可視の眷属が餌にして、常に間引きし続けてくれる。


なのでモルガン家の領地では魔物の脅威は少ない。

だが同じ北部でもモルガン家の領地以外の場所はそうじゃない。


町や村近辺の森や野原では普通に魔物が出るし、北部騎士団も魔物が民間人を襲う前に魔物狩りを行う。


北部騎士団の本拠地はモルガン侯爵領の城砦の中だが駐屯地を北部の要所要所に設けている。


行事がある時以外は、騎士団内の貴種の面々も散り散りになって活動しているのが分かった。


私としては

「モルガン家の貴種が変身能力と超加速を使うところを覗き見したい!」

と思った。


しかしヴィクター・モルガンの関しては

「アイツが読心術を使えるなら、使い魔で覗き見するコチラの思考まで読んでくるかも知れない…」

と不安を感じるので

「エンデをアイツの側に近付けるのはやめよう」

と思った。


そしてそうした不安を裏付けるかのように…

使い魔越しに覗いてるのに、何故か使い魔の視点越しで目が合う。

しかも口だけ動かして口パクで

「バ〜カ」

と言ってたりする。

絶対、関わっちゃいけないヤツだ…。


そこで

(ヴィクターを除外した)

エヴェリー・モルガン

ダンカン・モルガン

ジェイラス・モルガン

フィリス・モルガン

の4名を

「術を盗むための観察ターゲットにしよう」

と決めたが…


エヴェリー、ダンカン、ジェイラスはヴィクターとの遭遇率が高い。

フィリスは不思議とヴィクターとの遭遇率が低かった。


それで短絡的にフィリスを観察対象に選んだのだが…

「ああ、なんでフィリスがヴィクターを避けてるのか、判った気がする…」

と、すぐに思った。


フィリスは子供の1人もいないくせにホモなのだ。

貴種同士の同性愛とかではなく…

「イケメンなら誰でも良さそう」

な感じのホモだ。

(あの陰湿な性格でホモとかやめて欲しい…。他のホモの皆様がヤツと同じイメージで見られたら可哀想だ…)


フィリスは夜には男を部屋に引き込んで気持ちの悪いアレやコレやするので、夜間は観察は中断せざるを得なかった。


そもそも私がエンデと感覚共有してる時に

「フィリスが都合良く術を使ってくれる」

とも限らず、他の騎士達の戦闘を見る時のほうが圧倒的に多かった。


勿論、お陰で色々な魔法陣の図象を仕入れる事ができた。


斥候役の騎士がよく使う

「透明化」の魔法陣

「気配察知」の魔法陣

「気配隠蔽」の魔法陣

は絶対役に立つと思った。


あと辛抱強くフィリスを観察し続けた事で

「変身」の魔法陣

「超加速」の魔法陣

も仕入れる事ができた。

(使いこなすのは難しそうだが…)


私は独学で勉強し、鍛錬して、コッソリ魔法陣の図象を仕入れ、日々自分の隠し玉を増やしていったのだった…。


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