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挿絵(By みてみん)


パトリック・アッシュクロフトの妻はクレア・アッシュクロフト。

彼女は

「夫が孤児院から連れて来た養女を手籠めにする」

ということが初めから分かっていたかのように、アガサに対して初っ端から当たりがキツかったらしい。


アガサが連れて来られた3年前には既にアガサは13歳にしては発育が良かった。

なのでクレアは

「嫌な予感」

を感じて居たのかも知れない。


「初めから『お前』呼ばわりで罵られて、一度も名前で呼ばれた事が無かったわ」

とアガサが言うが、それは私も同じ。


思わず

「あのオバサン、養女の名前を覚えられない特殊な脳の病気とかなんじゃない?」

と文句が口をついた。


クレアは養女となった私に対して、ただただ

「お前の仕事だ」

と命令してアレコレ家事をやらせるのだが…

労働量が8歳児にやらせて良いような量じゃない。


お腹の膨らみだしたアガサの身の回りの世話をする時にアガサがこの家の事情を説明してくれたので、この家の事情把握はある程度済んでいるものの、それらの情報は全てアガサ目線の情報が元になっている。


私は8歳なのでクレアの夫パトリックが私に手を出そうなどと血迷う日は当分訪れそうにないというのに、クレアは私にも初めから当たりがキツイ。


クレアが度々口にするセリフは

「私の目の黒いうちはお前のような薄汚い野良犬に好き勝手はさせない」

だ。


目付きからして

「養女は犯罪者予備軍だ」

とでも思い込んでるような感じの偏見まみれのオバサン…。


「夫が堂々と浮気して庶子まで孕ませている」

という彼女の状況に関して、もはや全く同情を感じない…。


一方で彼女の息子のパトラス・アッシュクロフトはというと、父親似で女好き。

しかも面食いらしく、私の容姿を気に入ったらしい。

(8歳の美幼女に色目を使う16歳男子なんて気持ち悪い…)


クレアの私への悪意は

「孤児を嫡男嫁に迎える事は絶対に無いが愛人として喰らい込んでくるかも知れない」

という心配の反映なのだろう、というのがアガサの推測。


そんな気持ち悪い理由で直ぐに

「穢らわしい!」

と叩かれて

「これでもか!」

とこき使われているのだとするなら

「ふざけるな!」

と怒り出したいところだ。


だけど今のところ私は他人の内心など察知できないので、クレアが本当は何を考えているのかなど分からない。


パパはーー父のショーン・フェアバンクスはーー

耳が異様に良かったので他人の心音や呼吸音を聞いて

「嘘をついているかどうか」

「本当はどんな感情を持っているのか」

を見抜いていたものだが…

私はまだそういった技術を上手く使えていない。


聴覚自体は父に似て鋭敏ではある。

だけど

「どんな心音や呼吸音が相手のどんな精神状態の反映なのか」

その辺のデータが圧倒的に不足している。


何せ3歳から両親と一緒に森暮らしだったので他人と接する機会が無かったのだ。今現在がデータ収集中といったところか。


このアッシュクロフト家。

従僕や女中を雇う金をケチって養子をもらうような家だ。

貧乏ではないくせに、とにかく金には汚い。


与えられた服は何処かからもらったお下がりというより、捨ててあったのを拾ってきたのではないかと思うようなボロ着。


アガサからは

「元々着てた服は孤児院で取り上げられちゃったんだったね…」

と哀れみの視線を向けられた。


こんな待遇で女中代わりに炊事掃除洗濯を一手に担わされ、更には将来的には不細工な男に手籠めにされるとなると、奴隷レベルで酷い待遇だと思う…。


両親に愛されて暮らしていた頃の感覚を引きずると衝動的に自殺したくなるので、幸せだった愛情たっぷり時代の記憶は少しずつ薄れさせていった方が良いのかも知れない…。


前世の記憶を取り戻してからも、両親といた頃の私の人格はセルマのままで、前世の根暗な人格が顔を出す暇は無かった。

だけど両親の死と共に私の人格は前世の根暗な人格へと後退しつつある。


客観的に見て、今の私はさぞ可愛げが無い事だろう。

だけどそうならなければ生き残れない気もしている…。


ある意味で奴隷も、奴隷扱いの孤児も

「ご主人様の人間性の質次第」

で待遇がピンからキリまで幅広く格差がある。


運が良ければ、その辺の貴族令嬢並みに楽して遊んで暮らせる愛人生活をゲットできるが、運が悪ければ、無賃でこき使われるのみならず不細工な男にこれまたタダで股を開かなければならない。

まぁ、普通に逃げ出すに決まってる。

だからこそ奴隷は逃げたら処刑される。


孤児の養子の場合は

「名目上は奴隷ではないので逃げても処刑はされない」

のだが

「せっかく不自由なく育ててやったのに恩を仇で返しやがった」

だのと虚偽告訴されて捕まれば

「無銭飲食罪」

の延長にある

「養育費返済義務放棄の罪」

(通称「忘恩罪」)

に問われて

「奴隷落ちさせられる」

事もあるのだそうだ。

(虚偽告訴する養父が強力なコネを持っていたら特にそういう非道が罷り通る)


アガサはそういった一連の流れを理解しているので

「私は運が悪いから…」

と弱気で、逃亡したくてもできない状態らしい。


私の場合は運が悪かろうとも

「魔術師なんだから、何とかなるんだよね?」

「社会的にも、ママは一応伯爵令嬢だったし」

「フェアバンクス家は資産家一族らしいし」

と思いたいところ。


現状では

「魔術師だから何とかなる」

はあまりアテにできない状態ではあるが…


自分の体内にある魔力に関しては認識できている。

可視化も可能。

(「魔眼」の持ち主)


古語を使った代替魔術で魔力水を出す事もできる。


「吸血鬼は魔力水を摂取できれば餓死だけはせずに済むから」

とママはーー母のエリザベスはーー

祖母からそれを教え込まれていたし、私にもそれを教え込んだ。


あと、両親が魔力を注いで魔道具を使う場面を目にする機会もあったので

「魔道具に魔力を注いで、魔道具を稼働させる」

事もできる。

「着火魔道具」で暖炉に火を入れることも。

「転移魔法陣」で手紙を送ることも…。


(…元々森の中で不便な暮らしをしてたから家事も得意だし、ここでの労働も「できない事をさせられてる」って訳じゃないんだけど。でも「労働量」って年齢や体格ごとに限界があると思うんだよね…)

というのが目の前にある悩みなのだった…。




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