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私、セルマ・フェアバンクスには前世の記憶がある。
自分が【地球世界】を退会して【水鏡世界】へと新規参入した事もしっかり自覚している。
基本的に【世界】は「フルダイブ型SNS仕様のVR」。
しかしただのVRとは違い【世界】は「質量を伴うVR」。
そして【世界】は物質と半物質とでできている。
【地球世界】を退会し、別【世界】へと乗り換えるのは、かなりハードルが高かったが、それでも私は無事に古巣を発って、【水鏡世界】へと新規参入を果たす事ができた。
今どきは一応、何処の【世界】も
「新規参入者特約」
(通称「乗り換え特約」)
というものを用意してくれていて
「参入して直ぐの初回人生はチート転生となる」
ように配慮してもらえる。
この【水鏡世界】の場合は「幻影魔術の素質がある肉体での新規参入」がウリ。
特約契約者は生まれながらに魔術師となれるのである。
それで、その「幻影魔術」というのがかなり曲者だと思う。
「幻影魔術は『騙す』事こそが力の源」。
元素を騙す
精神を騙す
それによって
空間魔術に属する物理的改竄も
精神操作魔術に属する精神的改竄も
自己都合で弄れる訳である。
ただ、まぁ、この【世界】。
内部の一般参入者達の搾取欲が逞しい【世界】でもある。
この【水鏡世界】ーー。
多くの国々が国教を制定していて、その国教の宗教施設を(教会を)国内の各町々、各村々に設置している。
そして「魔術師を見分ける」為に、親が自発的にそうした宗教施設に赤ん坊を連れて来るように仕向けているのだという。
「魔術師としての素養がある」
と見做されれば
「国に所属する者として様々な優遇を受けられる」
のだという認識が広められている。
それは事実であり、どんな貧民の出であっても、その出自に関わらず魔術師は衣食住の保証された環境が与えられる事になる。
ただ「王族・貴族に刃向わない」という暗示が施されて精神的に去勢される事態も受け入れなければならなくなる。
能力が制限され、覚醒しないように強力な暗示がかけられるのである。
一方で、王族・貴族の側は何百年も前から魔術師や亜人などの魔力持ちのうち、容姿が優れている女性を側室に取り立ててきていて、そのお陰もあって王族・貴族には魔力持ちの美形が多い。
なので王族・貴族は平民とは根本的に肉体のスペックからして異なる存在になってしまっている。
こういう世の中では魔術師は覚醒できないままとなり、能力を発揮できず、ただただ権力者に搾取される事となる可能性も高い。
「なんか詐欺っぽい特約だよな…」
(大丈夫かな、この【世界】…)
と内心で不信感を持ったものだった…。
ともかく内部で覚醒できて幻影魔術を使いこなせるかどうかは
「当人の運次第」
の面が大きいのである。
2026年04月11日完結予定です。




