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挿絵(By みてみん)


グレイス王国は島国で、縦長のため、北部は緯度が高い。


グレイス王国は大陸側の国々よりも自然を保護する傾向があり、全体的に森の多い国だが…

北部を見る限りでは、郊外の殆どでゴツゴツした岩場と堅い不毛の地が広がっている。

グランドカバーになる雑草もまた少ない。


北部では視界が緑に惑わされる事もないためだろうか、複数の鉱山が発見されている。

ゆえに鉱山奴隷が多く誘致されていて治安はお世辞にも良いとは言えない環境。


そして奴隷を使った採掘により、北部は年々豊かになりつつある。


本来なら魔石は魔物から採れる筈のものだが、ここ北部の一部の鉱山では鉱物と一緒に魔石も採掘されている。


魔物の巣が何らかの原因で生き埋めに遭い、そのまま死んだ大量の魔物が肉体の朽ち果てた後で魔石だけ残したのだろう、という説が最も信じられているとの事だ。


宵闇の情念アートルム・ランコーレ

という呼び名でも呼ばれる黒い最上級魔石。

それが採れると発覚した事で北部の経済は一気に好転したのだという。


私、セルマ・フェアバンクスはグレイス王国西部の森に

(北部との領境が近いダゴネットの森に)

両親と住んでいた。

両親亡き後、独りで北部まで逃げて来たのだ。


何故ならグレイス王国北部は

「吸血鬼の血を引く者達は庇護される土地柄」

と言われているのだから。

ここまでは吸血鬼狩人ヴァンパイア・ハンターは追って来ない筈…。


そう期待して、北部まで避難して来たものの…

別に北部に知り合いがいるとかいう事でもない。


私の血統の始祖アンセスターは、北部に古くから根を張る吸血鬼の始祖とは別派閥。

北部で親戚を探すのは骨が折れると思う。

当然、北部に来た当初はお金もなく、泊まる場所もなかった。


普通なら冬に路上で寝れば即日凍死する筈だが、私は寒さに強い。

路上生活でも食べ物・飲み物を確保出来れば死なないのが強み。


私の体は人間・蜥蜴人リザードマン・エルフ・吸血鬼と、四種類の血が混ざったハイブリッド。

蜥蜴人の血が寒さへの耐性に綻びをもたらしても不思議ではないが、蜥蜴人の血は私に熱感知能力をもたらしてくれていて、他は特に問題ない。

頭部は低体温気味だが吸血鬼の血のお陰で運動能力も高く丈夫。


血の気のない肌色のせいで益々吸血鬼くさい外見として反映しているらしいが…両親は美男美女なので私も美形なのは間違いない筈。


もしも孤児院で受け入れてくれてたなら上手く猫をかぶって周りに馴染めたかも知れないと思うのだけど…


私は孤児狩りに遭って、孤児院で二、三日保護された後すぐに

「丈夫な養子が欲しい」

と要望を出していたというアッシュクロフト家へと送り出された。


この国だけではないという話だが

「孤児の養子」

とは

「無賃無休で働かせる未成年労働者」

の事。


生きるのに必要な最低限の衣食住を与えるだけで無賃無休で扱き使える労働力。奴隷と同じようなもの。


しかも

「奴隷を使ってやがる」

などと周囲から後ろ指を刺される事もない。


大人ほどの働きは期待できないが、便利な労働力である事は間違いないので、こういう「養子縁組=未成年労働者売買」という図式が改善される見込みは、これからも無さそうだ。

(使役する側にとっては便利だからね)


パトリック・アッシュクロフトという人物。

フリンという街に住む酒飲みの鍛治師。

(グレイス王国では鍛治師の多くがアッシュクロフト姓を名乗る)


そのパトリックが私の名目上の養父で、実質上のご主人様。

腹の出た脂ぎった中年のオジサンである。


私よりも前にアガサという女の子を養子にもらっていたが…

このオジサン、何と自分の実の息子とほぼ同じ歳のアガサを手籠めにして孕ませてしまった。


「妊婦に無理な労働はさせられない」

という訳で新たな奴隷を欲して孤児院へ

「丈夫な養子が(奴隷が)欲しい」

と要望を出していた訳である。


孤児院の職員達にも

「長く一緒にいた子には愛着を感じてしまって、過酷な環境へは送り出したくない」

と思う程度の人間味はあるらしく…


アッシュクロフト家のような家への養子縁組は、それこそ

「孤児狩りに引っかかって数日保護しただけの子供になすり付ける」

のが常套手段のようだった。


聞けば、アガサも私と同じく孤児狩りに引っかかって間もなくアッシュクロフト家へ寄越されていた。


私の場合、吸血鬼であるお陰で暗示術が使える。

(遮光術・暗示術・水生成術は習得した)


実際には手籠めになどされずに

「やる事はやった」

かのように錯覚させる事ができるだろうから、その辺の心配は私の場合はいらないだろうが…。

若干8歳。低年齢で色気もヘッタクレもない私は労働力として扱き使われている真っ最中である…。


ふと

(この家、私が逃げたらどうなるんだろうね…)

と少し気になる。


「あ〜あ…。誰か私をこんな環境から救い出してくれないものかな」

と独り言を呟く時間が徐々に増えていった…。



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