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たった一人きりで両親の遺骸を埋葬して…さすがに疲れたようだ…。
少しウトウトしていたらしく、今も少し寝ぼけているのかも知れない。
歌が聞こえるーー。
ある朝早く
夜明け頃
少女の唄が聞こえた
谷のふもとから
嗚呼、私を裏切らないで
嗚呼、置いて行かないで
何故そんな仕打ちができるの?
そんな歌詞の歌。
ママが以前歌っていた歌…。
「誰かを責めながら恨むような歌詞なのに、ママが唄うとまるで祈りのように聞こえる」
と、ずっと思っていた。
同じ事をパパも思っていたようで
「ベスが歌うと、嫌な歌詞すらも祈りの言葉のように美しく聞こえる」
と褒めていた。
「お母様がよく歌ってらっしゃったのよ。お母様の話では、お母様のお母様もよく歌ってた歌らしいわ」
ママが自分の血縁者の話をする時は少し寂しそうな表情になっていた。
パパが
「本当は俺も歳が歳だし、結婚する気はなかったんだがな…」
と言いながらもママと結婚したのは…
ママにベタ惚れだったからというのもあるが、ママの血縁者と少なからぬ因縁があったという話だ。
(パパ。ママ。…結婚して、私が産まれて、後悔しなかったのかな…)
と疑問が浮かぶ。
私が産まれて
私が吸血鬼だったせいで
私が完璧に遮光術を使えるまではと
街中での便利な暮らしを捨てて森の中で暮らしていた人達。
私がいなければ街中で暮らせて
私がいなければ街中に身内もいたのに
森の中で襲撃されて命を落とした人達。
(本当はパパもママも、もっと幸せに長生きできた筈だった…)
「吸血鬼の血筋の者達が魔力を持って産まれたら『真名』がつけられるの。セルマの『真名』は『ローレンシア』だから、忘れないようにね」
と教えてくれたママの真名は『フェリシア』だった。
真名は当人の運命を表すものだが、悪意ある他人に知られると運命が捻じ曲げられるのだという。
『フェリシア』は「幸福」を意味し
『ローレンシア』は「月桂樹の冠を戴いた」という意味なのに…。
全116話完結です。




