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ポーションの材料は大雑把に分けて4種類ある。
「薬効はあるが魔力含有量が少ない薬草」
「薬効はないが魔力含有量が多い薬草」
「薬草を漬けて抽出液を作るための酒」
「抽出液を薄めるための水」
それらで先ずは抽出液を作る。
その時点では種類の異なる薬草をブレンドしない。
一種類ずつ薬草毎の抽出液を作る。
その際に魔力も注ぐ。
魔力に治癒適性が無いとポーションにならないし、治癒適性が低いとポーションの効果も低くなる。
尚、薬草を漬けるベースを油にして作った抽出液は蜜蝋と混ぜると軟膏になる。
「魔力の治癒適性って、どうすれば分かるの?」
「それも教会で行われる識別と同じです。『相似投影術』が使われます。対象の体内の魔力回路の相似図を水晶玉へ投影させ、魔術師かどうか識別する時に適性も明らかになります」
「具体的に魔力の適性毎にどう違いが出るの?」
「人にはチャクラが最大7つあると言われているのはご存知ですね?」
「うん」
「実際にはチャクラの数は定まっていません。只人の場合はチャクラは眉間辺りにあるチャクラ1つです。魔力持ちだと2つ以上。魔術師は3つ以上。
適性は『どこのチャクラが発達しているか』で見分けられます。
何の適性もない魔術師も多いので、具体的にどことどこが発達してると、どの適性になると明確にはなっていませんが…治癒適性がある人の発達したチャクラはエーテル体の一番上のチャクラと一番下のチャクラの双方が発達していて、性器付近のチャクラも発達してます」
「性器…」
「生命力に対する自己保存本能が高いと性器付近のチャクラが発達するらしいです」
「自己保存本能…」
「そうした生命力に対する自己保存本能の外部発露が治癒、という事のようです」
「それは南部の教会ではそう教えられている、という話?」
「ええ」
公的機関が嘘を教える筈がない、という先入観を逆手にとった嘘が社会内で蔓延る場合もありそうだが…
治癒適性の魔術師の割り出しは教会にとっては金蔓の筈なので、わざわざ嘘は教えない筈。
多分、本当に、そうやって治癒適性の魔術師は看破されているのだろう…。
「…アンディーが私の事を治癒適性だって知ってたって事は、誰かが私の魔力回路を『相似投影術』とやらで見たって事だと思うんだけど…」
「…スミマセン、スミマセン…。本当にスミマセン…。そういう命令だったものですから…」
(一体、いつの間に…)
とアンディーの有能さが意外だった。
(…不可視の使い魔を使った監視体制というものがグルゴレットヒル侯爵派には存在するのだという話は、随分前にパパが漏らした事があったけど…)
吸血鬼一族もそういった手法の監視を行なっているという事か…。
いつも付き纏ってくる魔力の気配。
それは昔からあった。
今現在も複数ある。
このところ大抵いつも4つ気配があり、たまに5つに増える。
たまに3つに減る時もある。
そのうちの1つはどうやらアンディーのようだ。
「…ともかく今日は抽出液を作るのよね?」
「…はい」
「ポーションは作らないの?」
「薬草成分の抽出が済んだ抽出液を使ってポーションを作ります」
「そう。それじゃ、作り方を教えてね」
「はい!」
アンディーのお手本を見ると、先ずは浄化の繰り返しだ。
作業場の浄化。
自分自身の浄化。
材料を浄化。
瓶を浄化。
そうしてやっと瓶に薬草とアルコールを入れていく。
その間に祈願しながらアルコールと共に魔力を注ぐ。
アルコールは蓋の位置ギリギリまで注ぐ。
極力空気を入れないのが注意点だそうだ。
そうやって注ぎ終わって蓋をしてから、また浄化。
これを冷暗所でしばらく寝かせる。
そうやって作られた抽出液。
この場合はチンキ剤か。
それをそのままで使うとアルコール成分の刺激が強すぎる。
だからチンキ剤を決められた比率でブレンドしたのち水で薄める。
アンディーは水生成を知らないらしくて、井戸水を浄化した水を使っているが…
(どうせ「魔力を込めながら水を足していく」のだし、水生成で出した魔力水でも良くないか?)
と思った。
だけどそれを指摘すると、水生成術を教えて欲しいと言われそうなので躊躇しそうになる。
(多分アンディーには魔力は見えてない。古語も学んでいない。監視映像も自分でチェックしてるのではなく、何処かに転送している。多分、モルガン侯爵のところへ)
水生成術を教えてやるのが勿体ない気がする。
私がケチだから、というのもあるが…
この人自身が悪人じゃなくても、この人を使役してる人が悪人じゃないとは限らない。
悪人の手先をスキルアップさせてやるのは世の中にとって有害かも知れない。
なので非合理的な気がしつつもアンディーの言う通りに水は井戸水を浄化してから、ブレンドしたチンキに水と一緒に魔力も注ぐという手順を踏襲した。
出来上がったポーションは20本。
材料のチンキが20本分しかないからだ。
出来上がったポーションを鑑定するのは、鑑定魔道具に魔力を流しての鑑定のようだ。
「はい。ちゃんとポーションになってます。セルマ様の魔力は間違いなく治癒適性です」
と笑顔で宣告してくれた。
疲れた…。眠い…。
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「吸血鬼には睡眠が必要ないと思ってる人達もいるが、吸血鬼には睡眠が人間以上に必要だ。
慣れない作業をして魔力を消費した日は特に眠い。
エーテル体が魔力を生み出すのには充分な睡眠が必要になる。
睡眠時間が取れない環境では瞑想で睡眠不足を補う事になる」
『ハワード・ローガンの手記』によると、そうなっている。
私の実感的にもハワードの持論は正しいと直感が告げている。
「魔力はエーテル体のチャクラが空気中の魔素を精製する事でできるもの。
魔力はエネルギーとして利用可能なものだが、魔素はエネルギーとして利用できない劣化版魔力。魔力のない只人の中には魔素が流れている。
只人達の中に流れているその魔素。濃度が高いとヘイト感情が誘発される。
ヘイトを向けられる事で魔素も一緒に投射される。
どうやら吸血鬼には魔素を吸引する性質があり、人間からヘイトを向けられやすい。
なので吸血鬼は『吸引した魔素を次々と魔力へ精製する』のでなければ無駄に魔素を吸引し続けて、周りからのヘイトが集まりやすくなる。
吸血鬼が憎まれ、ヴァンパイア・ハンターが人間達から支持される事態は、吸血鬼が自分自身の魔素精製能力を超えて魔素を吸引してしまう事で起きている」
(アルバート先生が言ってた「魔素濃度とヘイトの関連」って、元ネタはハワードさんの手記だったんだな…)
と思いながら手記を詳しく読んでいく。
「ヘイトを向けられる事と魔素吸引自体が鶏と卵のようにセットになっている。ヘイトを向けられるから魔素が吸着してくる、魔素が吸着しているからヘイトを向けられる、といった具合に」
「魔素を魔力に精製する能力が高い魔術師や吸血鬼は嫌われれば嫌われる程、魔力を作る材料が集まってくるので魔力に満ち溢れた状態になる。
一方で魔素を魔力に精製する能力が低い魔術師や吸血鬼は人々から嫌われて大量の魔素が自分に吸着してきても、全てを魔力へと変換しきる事はできない。
そうした魔力へと精製しきれなかった魔素が、ヴァンパイアハンターに狩られた吸血鬼の死体から漏れ出て北部一帯を魔素濃度の高い地域にしてきている」
「【覚醒】済みの魔術師の魔力量が、非覚醒の魔術師のそれを大きく上回るのは、【覚醒】によって得られる前世の記憶や魂の記憶の中に『他者から向けられるヘイトの悪影響を中和するもの』があるからなのだと思われる。
【世界】を乗り換えるに際して体験する『カルマ精算のための生』で多くの者が無力な弱者でありながら罪人であるかのように忌み嫌われる不毛な人生を味わうが、そこで得たものが、何故かこの【世界】では魔力量の上限の高さとして反映する」
ハワードの考察によると
「【覚醒】済みの魔術師は周りから嫌われれば嫌われる程、魔素が集まり、魔素を魔力に精製する能力にも優れているので、魔力に満ち溢れた状態になる」
という事らしい。
ただそのためには
「充分な睡眠か瞑想が必要になる」
のだと。
「…私、この城に来てから魔力量が増えた気がするんだけど…。それってやっぱり私が周りから嫌われて魔素が私の元に集まってるせい?なのかな…」
と思い当たり、少し惨めな気分になったが…
「だけど、魔物が自然界で周りからのヘイトを集めて集中攻撃を受ければ、多分、普通に死ぬだけだろうし…。
人間は嫌いだからって理由でいきなり子供を殺したりしない分、私は恵まれてる?のかも?
嫌われまくってて食事すら用意してもらえてなくても、あの人達からのヘイトが私の魔力増量に繋がってるみたいだし…」
と思う事にして、とりあえずは溜飲を下げる事にした…。




