表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/116

27

挿絵(By みてみん)


「森の中でベケットとテートが見つかりました。重傷ですが命は無事です。ジャン様に関しては連れ去られた可能性が高いです」


アルバート先生にそう告げられた。


「…捜索はどうなってるんでしょうか?」

あんなクソガキでも、死なれるとなると流石に寝覚めが悪い…。


「捜索に関しては心配要らないと思います。殺されてない限り貴種は、特にファレル家の貴種は、どんな大怪我からでも回復できますし、イアン様がモルガン家に応援要請もしてくださってます」


「モルガン家に、ですか?」


「セルマさんは北部のしきたりに疎くていらっしゃるので、モルガン家がファレル家に比べて『手段を選ばない一族だ』という事をご存知ないのですね。

捜査をお任せしておけば、必ず見つけ出してくださり、報復も代行してくださる事でしょう」


「手段を選ばない一族、ですか…」


「領地の位置的にもファレル家は北部の南東部。つまりは東部にも中央にも近い事は分かりますね?」


「はい」


「昔からファレル家の領地はエルフの戦闘員やエルフの魔術師が貴種と対決する前哨戦の起こる地域でした。

そういった土地柄のせいか、ファレル家の者は他の貴種一族よりも回復力が高めです。

おそらくジャン様なら首を落とされても6時間以内に繋げれば仮死状態から息を吹き返します」


「そうなんですか?!」


「貴種の瞳は皆赤いのに、髪の色は黒、白、銀色と差がありますが、基本的に髪の色が白い貴種は他の髪色の貴種よりも回復力が高いです。

なので白髪の貴種はファレル家以外の他家で生まれてもファレル家に籍を移される事が多いです。或いはマクファーレン家へ。


因みに姓に『マク』『マック』とつく家は北部に古くから住み着いていた土着の人間の一族でマクファーレン家も貴種の血が入ったとは言え、本来は人間の一族です。


白髪の貴種は当人の自己回復力が高めなだけでなく、他者を癒す適性がある事もあるので、そうした特性を強めるよう意図して、白髪の貴種にファレル伯爵家とその傘下の家を継がせる血統の振り分けがなされています。

それと同じ事は黒髪の貴種、銀髪の貴種に関しても言えます。


黒髪は戦闘力・防御力が高くて滅多に怪我をしない事もあり、回復力がハワード様以外の者達は低めです。

超加速を使う戦闘のエキスパートですが、ローガン伯爵家を守護する事のみが彼らの関心の全てなので、ローガン伯爵領にエルフが侵入しない限りヴァンパイアハンターを狩り返す戦闘に参戦してくる事はありません。


銀髪は変身能力・政争における洗脳及びエンチャントに長けていて、戦闘力もある謂わば万能型。

王都や南部に進出している北部貴種と言えば銀髪のモルガン家を指します。


それぞれの髪色で生じている適性を『混じり合わせずに強化しよう』という方針で、それぞれの一族の強みが保たれてきています。

そうする事で時折、『先祖返り』と呼ばれるような純血性の高い貴種が生まれてくるのです」


「髪色の違いって、意味があったんですね…」


「その昔にはハワード様以外にも始祖様がいらっしゃったのはご存知ですよね?不思議と始祖を無くした子孫は力を失っていくので、前の始祖様の胤からなる貴種は全員ヴァンパイア・ハンターに狩られて亡くなっています。


今現在、北部の貴族家の当主はハワード様の胤による者達で占められていますが、ハワード様のご子息である方々は『ハワードの息子達』と呼ばれ、ハワード様に次いで能力を持ち、北部で尊敬されています。


ハワード様は黒髪の貴種を代表するローガン家当主。代替わりは為されずに永遠に当主でいらっしゃるので、ローガン家の黒髪の貴種は『当主代理』という形で家を預かります。

ローガン家の方々は基本的に自領から出る事がない方々ですので、モルガン家でもファレル家でも、具体的にどんな方々なのかといった個人情報がほぼ無い状態です。


銀髪でお生まれになったモルガン侯爵家当主ハンフリー・モルガン様、モルガン伯爵家当主リンドン・モルガン様、モルガン子爵家当主レスター・モルガン様は、『ハワードの息子達』の中でも1000歳越えの年長組です。


ハワード様がご存命である限り、ハワード様の胤からなる貴種が脆化して狩られ尽くすような事はあり得ませんが、孫や曾孫の代になると『先祖返り』以外はそこまで能力が高くないので油断していると簡単に狩られます。


イアン様は『ハワードの息子達』の中では断然お若いほうですし、白髪ですが超加速がお得意ですので、不意打ちされる以外では簡単にはやられません」


「…イアンおじ様って、北部始祖様のご子息だったんですね?孫とか曾孫とかじゃなくて」


「ええ。北部の貴種の場合、始祖様との血が近い者ほど能力が高いので、始祖様が休眠期を終えて北部へお戻りになられるまで生き延びていられる可能性が高い方のお一人です」


「それだとイアンおじ様の曾孫のジャンは能力が低くなるのでは?」


「ジャン様はハワード様から随分と血が離れているのに純血性が高い。所謂『先祖返り』です。今は甘やかされて聞かん気の強い幼児ですが、彼は『ジョンの再来』と呼ばれる超回復の貴種となる可能性があります」


「『ジョンの再来』?ですか?」


「かつてのモルガン家の始祖エルヴィス・モルガン様がご存命でいらっしゃった頃に、エルヴィス様のご子息のジョン様が白髪でお生まれになり、ファレル家をお興しになられています。

つまり最初のファレル家当主ですね。そのジョン様は始祖ではないのに首を落とされても死なず、断面からは首が生えてきていたと言われています。

『超回復の先祖返り』として貴種の間では有名な方ですね」


「始祖様じゃなくても、首って、生えてくるものだったんですね…」


「…大昔は、それこそ5000年以上前には、『貴種全員がそうだった』ようです。四肢を切断されようと、首を切断されようと、断面から手足や頭が生えてくる。全員が文字通り不死で、陽光だけが唯一貴種を殺せる武器だった。貴種の全盛時代ですね。

その時代の貴種はやはり皆が皆、始祖様のように転移魔法陣で転移できていたとか。

しかしその代わりのように、なかなか子宝に恵まれなかった時代でもあったと言われています。

今の時代は『生まれにくくなった』とは言っても、全盛時代ほどではないし、各個人の能力も全盛時代のそれに遠く及ばないかと」


「『先祖返り』…。確か西部始祖の曾祖母様もずっとそう呼ばれていたとか…」


「…ああ。今の時代は遮光術が普及してますし、貴種の方々も人間の飲み物を色々摂取できる方が増えてますから、北部以外では『現代に吸血鬼は実在しない』と思っている人間も多いらしいですね。

そうした認識の方々に合わせると血液以外を摂取できない上位吸血鬼は『全員先祖返り』という事になります。

まぁ、実際、西部始祖様は『本当に先祖返りだった』から転移魔法陣で転移して神様の元へ辿り着けるんでしょうが」


「先生はジャン様も『先祖返り』だから、ジャン様が死なない可能性が高いと思ってらっしゃるんですね?」


「端的に言えばそうです」


「随分な信頼ぶりですね」


「あの方の潜在力は異常です。同じ事はセルマさんにも言えますが、セルマさんの場合は魔力量と能力の高さが魔術師並みなのですが、回復力などの貴種特有の能力の方は他の貴種と比べても高くない、というか低い。人間よりは死ににくい、というレベルですよね」


「…そう仰る先生こそ魔術師ですよね?肉体は人間でしょうが、魔力回路がただの魔力持ちと比べて精巧過ぎます」


「…セルマさんは魔力が見えるんでしょうか?しかも体内の魔力まで?」


「…見えたらオカシイですか?」


「いえ。見える事自体がオカシイという事はありませんが…。そういう場合、セルマさんがファレル家に居続ける事がオカシイという事になりそうです」


「先生も私をモルガン家へやろうとするんですか?」


「ヴァンパイア・ハンターは『潜在力の高い貴種をまだ弱い子供の頃に殺す』事でアドバンテージを得ようとしています。

セルマさんくらいの回復力で、それでいて魔眼持ちの魔術師となると、連中はセルマさんを最優先ターゲットとして狙ってくる可能性が高くなります」


「………」


「セルマさんの身柄に関してはイアン様がお決めになる事でしょうし、私には何も決定権はありませんが、どうか長生きしてください…」


先生はどうやら私がこのままファレル家に居続けると、そのうちヴァンパイア・ハンターに私の情報がバレて狩られてしまうと思っているようだ。


(魔力持ちの私兵が50人もいる家でも命を脅かされるって…。ヴァンパイア・ハンターって、そんなに強いの?)

と微妙に不安になってしまった…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ