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魔力の鎧の上に自分が見た自分の姿を立体的に投影。
そしてソッと鏡を覗いて見ると、ちゃんと美幼女の自分の姿が映ってる。
「これで髪の手入れとかがしやすくなるな…」
と大満足。
(美しい容姿というものは一種の武器だな…)
と思う。
(こんな可愛い子に「お願い」とかされたら、普通、何でも言いなりになってあげたくなるものなんじゃない?)
両親は親バカ気味だったと思うけど
(ああなるのも仕方ないよね。こんなに可愛いんだもん)
アッシュクロフト家の連中が異常だったのだ。
美幼女を平気で扱き使うなど普通ではあり得ない。
(大人に対しては両親に接していた時と同じ感覚で甘えて接すれば、相手が普通の感性の人間なら良くしてくれる筈)
と思う事にする。
自分の容姿が可愛くて可憐なのを知る事ができて本当に良かった。
一方で、ふと気になって、ジャンのほうを見やるとーー
ジャンはなかなかに苦戦している様子。
先生がチラリとコチラを見て苦笑した。
(多分、ジャンの能力が低いんじゃなくて、私が優秀過ぎるんだ)
と少し自惚れてみる。
それはそうと
(今後の朝の日課が増えるな…)
と思った。
遮光術は毎朝自分自身にかけている。
それに加えて今後は物理攻撃耐性強化で魔力の鎧を纏い、魔力の鎧へと自分自身の姿を投影しておく事になる。
遮光術も物理攻撃耐性強化術も「術を解く」と意図して解くまで持続できなければならないものなのだが、ふとした弾みに術が解けたり、寝てる間には勝手に解ける。
母からは
「そのうち、寝てる間も遮光術が解けないようにならなきゃね」
と言われていたので物理攻撃耐性強化術も同様だろう。
どんな時でも油断せずにおきたい…。
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不審に思う事がある。
私には魔力が見えるのだが
(所謂「魔眼」持ちなのだが)
自分が居る室内に、いつも魔力の塊が複数見える。
それが私の移動と共に私について来る。
私が自室に居る時には自室に
勉強部屋に居る時には勉強部屋に
訓練場に居る時には訓練場に
といった具合にいつも近くに居る。
思えば物心ついた頃から、そういうモノは見えていた。
物心ついたばかりの頃は
(…精霊とか妖精とか守護霊とか、そういうのかな?)
と期待していたが今は多少現実を知っている。
そういうモノは
(誰かの使い魔で、私を監視してる可能性が高い…)
のだ。
父は鳩型の使い魔を使役していた。
「転移魔法陣で届ける手紙は『本当に手紙を届けるべき相手が転移魔法陣を持っているのか』分からない。
転移魔法陣が盗まれていたら手紙が転移魔法陣を盗んだ泥棒の手に渡ってしまうんだ。
だから本当に大事な手紙は使い魔を使役して届けなければならない」
と言っていた。
使い魔は手紙を届けるのに血を必要とする。
発送者側も受取人側も使い魔へ血を与えてねぎらわなければならない。
なので1人で何羽もの使い魔を使役する事はできない。
使い魔を飼っている間中、血液を提供しなければならないからだ。血が足りなくなる。
だけど今の世の中は「透明化魔法陣」なんかもあって、使い魔を「透明化魔法陣」で不可視化しておくと、余りにも便利だ。
なので鳥型魔物を透明化して誰かを監視させたり攻撃させたりするような事もあるらしい。
更にはーー
魔術師には「不可視の使い魔」を創造する能力があるらしく…
そうした魔術師が創り出す使い魔だと逆に「物質化魔法陣」で身体の一部を物質化してやらないと何も運搬できない。
つまり使い魔には
生物を使役するものと
非生物を使役するものとが
あると言う事だ。
その双方の使い魔に共通する特徴が
「術者が使い魔の視覚や聴覚を借りて、使い魔の周辺を観察できる」
という感覚共有術を使えるという事。
目に見えない何かに付き纏われている場合には、そのいずれかが張り付いていて、こちらを監視している可能性がある。
「魔眼で見ると、使い魔はいずれも魔力の塊として見える」
のだから。
「セルマは精度の高い魔眼持ちで体内魔力も微量の魔力が見えるから、多分、監視されている時には自力で気が付けるだろうと思うが…」
と心配していた父の話では
監視用使い魔を撃退する方法として
「魔力を纏わせた刃物で切り付ける」
というものがあるものの
「使い魔を傷付ける=使い魔の主人に対する宣戦布告」
となるので、相手の正体も分からないうちに傷付ける訳にもいかないのだそうだ。
そもそも本当に透明化している使い魔なのかも確信が持てない。
精霊とか妖精とか守護霊のようなものを傷付けた場合、どんな事になるのか想像もつかない。
(放置しておくしかないのかなぁ…)
と思う。
だけど四六時中誰かに監視されてるのかも知れないと思うと…
とても気持ち悪い。
コワイ。
(…読心術が使えたら、使い魔を通して監視している者の思考が読めたりとかもするんだろうか?)
と少し思う。
読心術用の魔法陣も森の隠れ家にはあった筈だが、それもやはり襲撃者が盗んでいったらしい紛失物の一つ。
閉心術の訓練のために時折母が私の心を読んで驚かせた。
楽しかった優しい思い出が絡んだ品でもある。
(ヴァンパイア・ハンターは人殺しの上に泥棒…。ヤツらを根絶やしにしたいと思うには充分の罪だよね)
便利な魔道具をアラスターが提供してくれるという事は
「誰かが製造している」
という事だ。
錬金術師の技術力は
「レアな魔法陣の図形を幾つ知っているか」
という情報収集能力と直結している。
私はその点で他の人達よりも有利かも知れない。
魔力が見える魔眼持ちで、尚且つ体内魔力まで透視して見える。
魔物がスキルを使う時には魔物の活性化されているチャクラの辺りで魔法陣の図形のようなエネルギーの流れができている。
難点があるとすれば
「覚えきれない」
という点。
呑気に紙に書き写すまで、こちらに攻撃もせずに居てくれる訳もない。
アシッドスライムですら瞬間的にスキル発動して酸を飛ばしてくるのだ。
後で思い返して紙に書こうとしても部分的にしか思い出せなかった。
なのでそれに関しては前々から
「瞬間記憶力のようなものを鍛える必要がある」
と感じていた。
そうすれば沢山の魔法陣図形を知識として蓄えられる。
魔道具製作技術でも覚えれば色々魔道具を作れそうだ。
(チェスの棋譜でも仕入れられないかな…)
と思う。
棋譜を数秒だけ見て正確に再現する訓練を繰り返す。
それで瞬間記憶力が鍛えられる。
傍目には
「ボードゲームが好きなんだな」
としか見えないだろうし警戒される事にはならない筈。
私が魔眼持ちの魔術師である事を悟られずに自分の能力を伸ばせる…。
(あっ、ホント、これ良いアイデアかも)
そう思ったら
すぐさま転移魔法陣に
「ボードゲームとルールブックと棋譜が欲しい」
と書いて送ってしまっていた。
かなり衝動的な注文だったが、それでも私は後日、ボードゲームにハマった。
それが
「友達もいない孤独な生活の中での数少ない心の慰めになった」
のだから、そういった衝動買いもそんなに悪いものではないと思っている…。




