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挿絵(By みてみん)


「それで?どうやって『物理攻撃耐性強化』を行うんでしょうか?」

私が先生に質問すると


「回復力を高める魔力使用の時には魔力を怪我の箇所へ集めましたよね。今度は魔力を体外へ出して皮膚を薄く覆うように伸ばす練習が必要になります」

と答えてくれた。


そう言われて、思い出したのは前世でお馴染みのスキンケア。

冬場には、子供の肌が荒れないようにとベビーミルキーローションを薄く伸ばして全身に付けてやっていた。

(ああいうイメージで全身に薄く膜を張るように魔力を伸ばせば良いのだろうか…)

と連想。


この【世界】でもスキンケアは行われているらしく、先生は

「入浴後に侍女達が香油を薄く伸ばして塗ってくれる時の事をイメージしてください」

とジャンにアドバイスしている。


(私は入浴後に香油を塗ってもらうサービスとか受けた事ないけど…)

と待遇差が見せつけられた感を微妙に覚えた。


前世でも、私が子供に付けて上げていただけで、私が子供の頃に付けてもらった事はないし、自分自身で付ける事もなかった。

自分自身にお金を使う事が徹底して禁じられていた環境だった。


ジャンに香油を付けてやっている侍女達も自分自身には香油を付けていない筈だ。使用人なのだから…。

それを思うと、前世の婚家での私の扱いは使用人のそれだったという事が分かる…。


ジャンは先生に言われた通りにイメージしたのか

「あっ!できた!」

と喜んだ。


私の方も、自分自身で自分自身の全身にミルキーローションを塗るイメージで魔力を纏ったところ、ちゃんとできた。


勿論「できた」と口に出して事実申告したりはしない。

ジャンは直ぐにできて、私は直ぐにはできなかったという茶番を私も先生も演じてやらなければならないのだ。


先生と目が合うと先生がコクンと頷く。


それが、いちいち「セルマさんもできたんですね」と言わずに済ます合図のようなものなのだ。


******************


ある日ーー

「先代ミルミドネス伯爵が亡くなった」

という知らせが入った。


ショーン・ファレルに呼び出されて執務室へ赴くと、その訃報が書かれた手紙を見せられた。


先代ミルミドネス伯爵ーー。

チャールズ・スミス。それはつまりは私の祖父。


年齢的には60歳くらいの歳だったが持病を患っていた筈。

この【世界】の只人の老衰死は平均40〜50歳くらい。

魔力持ちの老衰死の平均は60〜70歳くらい。

魔術師だと70〜80歳くらいとされている。


持病があった事を思うと魔力持ちの祖父は60歳で亡くなっても不思議ではない。

チャールズの正妻キャサリンは3年くらい前に亡くなっている。


曾祖母のコーネリアは死者蘇生ができるだけでなく病気を治療するヒーリングも得意だったらしいが…


新大陸とグレイス王国との物流を繋いでいる転移魔法陣で

「チャールズの病を治療して欲しい」

と依頼が何度もなされたにも関わらず


エレインを死なせたチャールズの事を許せなかったのか、治療しに来る事はついぞなかったらしい。


(結局、お祖母様の事をヴァンパイア・ハンターに密告した犯人は誰だったんだろう…)

という謎はずっと謎のまま…。


先代ミルミドネス伯爵の死亡の知らせは、森の隠れ家から持ってきた転移魔法陣からも受け取っていた。

書類上の私の養父となった伯父ーー現ミルミドネス伯爵グレゴリー・スミスーーからの手紙で。


「葬儀への出席は不要」

という内容の手紙だ。


まぁ、遺産相続とかで用がある訳ではない限り遠方からわざわざ駆けつける事もないのが、この【世界】の葬儀事情ではある。


高速バスも飛行機も特急列車もない【世界】だ。

「来なくて良い」

と言われるまでもなく行かなかっただろうが…

わざわざ

「来なくて良い」

と言うものなのだろうか?という疑問は起きた。


(伯父様は本当は私に対して悪意を持っている?可能性がある?)

と、不意に不安を感じた。


(情報収集って、ホント大事だよな…)

と、しみじみ思う。


この屋敷の人達も奥歯に物の挟まったような言い方だったり態度が不自然な事が多い。

父親譲りの耳の良さで聞き耳を立てていると、結構な情報が仕入れられる。


私をファレル伯爵家へ呼んだイアン・ファレルがこの屋敷にいない理由も分かった。


イアンはミルミドネス伯爵と交渉して私の身柄を引き取る事にして、その決定を屋敷の者達へ使い魔で伝えた後、ヴァンパイア・ハンターに襲撃され大怪我をしていた。

(辛うじてヴァンパイア・ハンターを返り討ちにした)


ファレル伯爵家へ戻ろうとすれば新手が出てくる可能性もあると見て、行方をくらませ療養中という事らしかった。


その事実が使用人にまで知れ渡ると、使用人達が私に対して

「お前のせいでイアン様が怪我をなさった」

などと怒りを向けるかも知れないという事で、一部の上級使用人しか事実を知らない。


現当主のジョアン・ファレルが不在の理由は打って変わって

「恋人との(同姓の貴種との)蜜月」

らしい。

こちらは

「貴種のお手つきになる事を夢見て従順に使えている女性使用人達を絶望させないため」

に事情が伏せられているのである。


そんな感じでーー

屋敷内で囁かれる事情は耳の良さで仕入れられるが、それ以外の情報を仕入れるツテはない。


「先生が早めに『使い魔の作り方』を教えてくれると良いんだけど…」

と溜息が漏れた…。



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