表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/116

17

挿絵(By みてみん)


流石は吸血鬼の本場という事かーー

北部の吸血鬼達は自衛策の回復力増加方法や武術を幼少時から習う。

北部の吸血鬼は男ばかりだからという事もあるのだろうけど…

ジャンは7歳だというのに1年前から体術と剣術の初歩を習っている。


あと、北部の吸血鬼達は吸血鬼同士仲が良いという事も分かった。


仲間意識が強いので仲間がヴァンパイア・ハンターに狩られた場合の報復も苛烈。

それが牽制になっていて、凄腕のヴァンパイア・ハンターもおいそれと北部に足を踏み込めない土地柄を醸し出している様子。


正直、ドン引きしたのは

「北部吸血鬼の多くが実は同性愛嗜好者である」

という事実。


「仲間意識を強めるため」

という目的もあり、吸血鬼同士の同性愛は肯定されてきたらしい。


ただ子孫を残さなければならないので

「同性愛の輪への参加が許されるのは女性に貴種を産んでもらってから」

という制限がある。


故に、ジャンのようなお子様は普通に異性愛者。


ジャンの父親であるファレル家現当主ジョアンはジャンを産んだ女性に感謝して正式に妻に娶ったものの…

同性愛のお誘いを受けて以降は同性愛に鞍替えしてしまっているのだとか。

(ジャンの母親はお飾りの女主人として侍女達に軽んじられている)


そういった何気にエゲツナイ真実が使用人達のお喋りに聞き耳を立てる事で発覚した。

ジョアンの侍女達がジョアンの妻を嘲笑する陰口などは

「盗み聞きしているこちらまで気分が悪くなる」

くらいに口汚なく容赦がない。


尚、それらの盗み聞き情報は蜥蜴人の血が濃かった父譲りの耳の良さによって得た情報なので、ジャンですら知らない筈だ。

(教えてやる気もない)


しかし何故吸血鬼達が同性愛へ走ってしまうのか。

その理由は吸血鬼の体液による効果が関係しているらしい。

つまり吸血鬼の唾液には快楽作用があり精液には催淫作用があるという事。


要は連中は

「快楽に負けて女性との子作りよりも同性愛へ流れている」

のである。


「そんな奴らが団結力があってヴァンパイア・ハンターを退けているのか…」

と思うと…

「天敵のヴァンパイア・ハンターどももその程度の精神レベルなのだろう」

と思えてしまい…

私からすれば益々体術と剣術の鍛錬に身が入るモチベーションとなった。


体術と剣術は

「私兵団の訓練に参加させられる」

事で学んでいる。

屋敷内の子供達も参加している。


「子供のうちは基礎体力を上げるのが訓練の主要課題だ」

と言われて、柔軟体操後にひたすら走らされてからの組み手や素振り。


吸血鬼は私とジャンだけの筈だが、やたらと強い子達もいる。


(魔力量が多い子ほど強くなるとか、そういう法則があるのかも)

と思い、魔眼で観察してみると案の定だった。


私には

「ジャンより劣っているフリをしなければならない」

という縛りはあるものの…

ジャン自体に伸び代が随分とある。


それに私兵団の戦闘力レベルが随分と高い。

縛りプレイのままでも周りに合わせるだけでそこそこ強くはなれそうだ。


それに私が「強くなりたい」のには明確な目的がある。

ジャンや他の子供達とは違う。


(…いつか、きっと、ヴァンパイア・ハンターのクソエルフどもを1匹残らず根絶やしにしてやるんだ)

そう思う事で私は剣術がメキメキ上達していったのだった…。


******************


使用人達のお喋りから得られる情報は多い。


どうやらファレル家は私を引き取った事でモルガン家から圧力を受けているらしい。

つまり

「女吸血鬼は貴重なのだから大御所であるモルガン家へ寄越すべきだろう」

という圧力である。


ジャン自身が私の事を気に入っていない事もあり正式に婚約契約が結ばれているわけでもない。

私をファレル家からモルガン家へと移す障害は無いように思えるが…

私はミルミドネス伯爵の姪に当たる。


ミルミドネス伯爵家と交渉したのがファレル家である以上、ミルミドネス伯爵の許可もなく当初の予定を勝手に変更して私の所在を勝手に移す事はできないという大義名分があるので、ファレル家はそれを振りかざして私をファレル家へ引き留めている状態らしい。


(ホント、不安定な身の上だよな…)

と我が事ながら心配になる。


(多分、「実は魔術師だ(特約契約者だ)」とカミングアウトすると余計にややこしくなる…)

そういう不安もあって、自分が魔術師だという事を誰にも明かせない状況だと言える。


ミルミドネス伯爵家の方では私が魔術師だと知っている筈。

両親も「そのうち隠れ魔術師を家庭教師に雇わなければ」と理解していた。


この世の中では

「隠れ魔術師」

という存在は存外多くの人達から認知されている。


それでいて、世の中の皆様は

「魔術師という存在は新規参入者特約契約を結んだ者達であり、覚醒者だと前世の記憶も持っている」

という事実に関して不自然なくらいに知らない。


私も両親に

「私は前世の記憶があります。覚醒してます。中身は大人です」

などと言わなかった。


この肉体に憑依して元々宿っていた魂を追い出して成り代わったとかじゃなく、この肉体に正規で胎児転生していて、間違いなく自分は生まれた時から自分だと言い切れるものの…

客観的にはそれを証明はできないのだ。


下手をしたら「未成仏霊が身体を乗っ取った」みたいな解釈をされかねないのだから、前世の記憶があり当時の人格が残ってる云々の話はしないに限ると思っていたのである。


人というものは

「自分が体験した事のない体験」

をしている相手に対しては理解できないのが普通。

そして理解できない相手に対して好意を持ちにくいのも普通。


未体験

未知

そういうものは

「もしかしたら致命的な厄災を招くキッカケなのかも知れない」

という不安をもたらす。


ある意味で

「理解できないものを警戒し差別する」

行為は

「人類の潜在的存続力を支持する知性」

から見れば

「正しい」

行為だ。


ただ、その差別は

「病原菌罹患者を隔離して感染を阻止し、学者が安全を確保して病原菌を研究し、特効薬を開発する」

ような意図の差別であるべきであり

「卑しめ苦しめ嫌悪し、全てを奪う」

ような意図の差別であってはならない。


けれど多くの人達がそうした

「差別の質の違いの必要性」

について考えもしないものなのだと思う…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ