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ジャンとの関わりはーー
挨拶しても無視されるのは当たり前。
こちらから話しかけても返事はないが、向こうから話しかけてこられたら必ず返事をしなければならない。
批判・否定の言葉ばかり浴びせられ続ける。
そんな感じで毎日不愉快にさせられてはいるが…
「ムカついてるのに何とも思ってないフリをする」
という感情労働こそが
「衣食住や教育の対価である労働なのだろう」
とも思う事で、そこは割り切れる。
他人様の家に入り込んで
衣食住を提供されて
教育も受けさせてもらえるのだから…。
我慢、我慢…。
しかしジャンは事あるごとに私を
「ブス赤毛」
呼ばわりする。
(美人のママに似ていると言われていたこの私を!)
「おい、そこのブス赤毛」
「お前だよ、ブス赤毛」
「ブスのくせに調子に乗ってる赤毛が」
などなど…
とにかくいきなり殴りかかってきたりはしないものの、いきなり暴言をぶつけてくる。
(「エルシー」とかいう、私より前に居た子はそんなに美形だったのかな?)
と思わず首を傾げたくなる。
私は母のエリザベスを美人だと思っていたし、エリザベスに似てるなら私自身も美形の筈だと思い込んでいたのだけど…
(もしかして私の美醜判定は前世基準で、実はこの【世界】の美醜基準とはかけ離れているとか?)
と微妙に不安を感じる。
父は、母を「女神」私を「天使」と呼んでいつも褒め称えてくれていたのに…
(パパも美醜基準が他の人達とは違う変わり者だったの?)
という疑惑が湧き起こり…
本当に現実が
「疑惑通りなのかも知れない」
と感じられるようになるのだから不思議だ。
私の事を
「ブス赤毛」
と呼ぶ
(セルマという名前を呼ばない)
ジャンのせいで私はいつの間にか自分の美醜基準に自信がなくなってしまった。
そんなジャンに対しては、ほんの少しの好意ですら持てない。
勿論、好意的な態度を頑張って演技はするが内心では日々嫌悪感が募る。
ジャンに対しての
「コイツと結婚とか絶対ない」
という思いは日々強まる。
お陰で
(うん。絶対、いつか逃げ出してやる)
という決意も日々固まり続けた。
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露骨に疎外されている、とまでは言わないが…
「なんか、よそ者感がヒシヒシと突きつけられる感じだなぁ…」
とは思う。
アラスターが
「転移魔法陣で欲しい物を注文するように」
と言ってくれていたので
(本当に「欲しい物」を送ってもらえるのかな?)
と疑問に思い
「筆記用具が欲しい」
と、拾った雑巾に炭を擦りつけて字を書いて送った。
すぐに
「注文承りました」
と書かれたメモが転送されてきて
20分後くらいには
植物紙50枚綴
ペン
インク
が送られてきた。
「へぇぇ〜。こうやってママ達は物資調達できてたんだな?」
と改めて転移魔法陣の便利さを痛感した。
(でも…それだと、何故パパとママが死んだと知らせた手紙がおじさんに渡らなかったんだろう?注文以外の手紙は無視するようなシステムなのかな?連絡事項に関しては使い魔を遣わした手紙でのみ受け付けるとか?)
謎である。
私は所詮は箱入りで世間知らず。
北部に逃れてきて多少は世間の厳しさを知ったが、世間の皆様の複雑さや社会システムの複雑さを理解したとは言い難い。
(あの手紙は一体何処に行ったんだろう…)
冒険者ギルドのカードも商人ギルドのカードも
「血液で個人を特定する技術」
が用いられていると専らの評判だが、今の世の中、筆跡鑑定もポピュラーだ。
何せ、冒険者ギルドと商人ギルドのカードに用いられている技術が他でも普及している様子はない。
通常なら
「技術は模倣されて普及する」
ものだが…
「技術力が社会内の技術平均を遥かに凌駕する」
ようなものに関しては延々と利権の独占状態が続くので、社会内のパワーバランスを考慮すると普及しきれない技術も出てくる。
それは諸々の便利な魔道具に関しても言える。
「内部空間拡張」魔法陣が使われた収納袋・鞄なども、高位貴族やお金持ちだけの持ち物であり庶民はその存在も使い方も知らない。
ジャンはそういう高級品をシレッと持っていてシレッと使っている。
思わず
「内部空間拡張機能付き収納袋が欲しい」
と書いて送ると
「ご希望の品の在庫がございません。入荷次第のお届けとなりますので早くても半月以上かかります」
という返信が来たので
「それでも欲しい」
と更に返信した。
まさか本当に注文を受けてもらえるとは思っていなかった。
(にしても「早くても半月以上」か…)
遅い場合は延々と数年待たされるとかありそうだ。
(結構何でもアリなんだなぁ)
と少し注文する事自体が楽しくなった。
(もしかして手紙を送る場合は、手紙とは別にメモ紙に「手紙の配達をお願いします」と書いておく必要があったのかもな…。あと、宛先も封筒に明記しておくとか…)
思い返してみるとーー
私は手紙の封筒に宛名を記入していなかった。
宛名のない手紙を送りつけられた注文受付係は
「手紙を勝手に読んではならない」
「宛名のない手紙は廃棄処分するべし」
などの制限に従って対処した筈だ。
今になってようやく
(手紙の宛先をお祖母様の実家のスミッソン家に指定しておくべきだったんだ…)
と分かってしまった。
手紙がちゃんとスミッソン家に届いて両親の訃報が曾祖母に伝わっていれば…
今頃はまだ両親も生きていたのかも知れないのだ。
(私の判断ミスのせいで、パパとママは蘇生できなかった…?のかな?)
と思った途端にーー
口からーー
叫び声が漏れそうになって…
自分の両手で、自分の口を、塞いだ…。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
そんなの嫌だ…。
「真に警戒すべきは有能な敵ではなく無能な味方だ」
という言葉が不意に脳裏に浮かんだ。
そうーー
間違いなくあの日の私は
最愛の両親にとっての
「無能な味方」だった。
それが急に実感できてしまい
私は、私に、心底から絶望した…。
そんな絶望…。
「ヴァンパイア・ハンターに対する憎悪」
へとすり替えなければ
「生きていく気力すら湧きそうもない…」
と自分でも分かった…。
八つ当たりなのかも知れない。
だけど私はその時
「ヴァンパイア・ハンターどもを必ずブチ殺して復讐してやる」
と心に決めたのだった…。




