表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/116

10

挿絵(By みてみん)


北部は雪に閉ざされている期間が長い。

なのでどうやら雪解けと共に一斉に物流が開始する。


劣悪な環境に置かれて冬越しできずに死んだ奴隷が毎年大勢出ているとかで…

毎年新しく代わりの奴隷が調達されるのも雪解けと共に行われる慣例行事の一つ。


クレアに

「買い出しに行きな」

と命じられて街へ食材の買い出しに行くと、丁度ゾロゾロと奴隷を連れた奴隷商人達が通りかかった。


前世では奴隷という階級は過去の遺物とされていたが、今世では普通に奴隷は現在進行形で社会の至る所で見られる。


犯罪に走る人間が余りにも多いので

「刑務所代わりに奴隷落ちさせて鉱山へ放り込む」

のがこの世界での常態モードだ。


(…偽善的に「奴隷制度なんて受け入れられない!」とか思う転生者もいるかも知れないけど、実際、【地球世界】の刑務所って犯罪者に衣食住を保証する犯罪者天国だったんじゃないかな?)


地球での人権認識に疑問を感じていた私からすれば、この【世界】は

「分かりやすい」

という点ではシンプルで良い気がする。


(地球だと海外ドラマとかで「刑務官が買収されてて一部の服役囚は何不自由なく暮らせる」という仕組みになってたけど、まぁ、普通に世界中で刑務所は「コネ有り犯罪者達の天国」「コネ無し犯罪達の地獄」だったろうな、と予想がつく…)


更生施設としての刑務所は存在意義自体に色々問題があった。

そもそも犯罪者の服役後の再犯率の高さが

「更生施設は存在意義がない」

と立証してるようなものだった。


(それにしても鉱山奴隷って、仕入れても仕入れてもすぐ死ぬんだなぁ)

と完全なる他人事として奴隷達の様子を見てみた。


奴隷達は太々しい。

街の人々を睨み付けながら通り過ぎていく。


(逃げ出したり逆らったりしそうな人達に見えるけど、どうやって管理してるんだろ?)

と、素朴な疑問を感じた。


私が奴隷達を引率してる奴隷商人を見遣るとーー


奴隷商人の方でも私を見たので、バッチリ目が合った。

「エリザベス…」

と奴隷商人の口から呟きが漏れて…


「お前、エリザベスの子だな?セルマ、だったか?どうしてこんな所に居るんだ?」

と奴隷商人が問いかけてきた。


「…ママの知り合い?ですか?」

(奴隷商人のくせに?)


私が不審者を見る目を向けると

「俺はアラスター・スミッソンJr。エリザベスは俺の父方の従姉妹だ。俺は普段は港町のテリナにいるが、奴隷の数があらかた揃うと注文先に出荷する為に国内を回ってる。

ショーンさんやエリザベスと余り顔を合わせる機会は無かったが、転移魔法陣を使った取引では度々お世話になっている」

と説明してくれた。


母から母の従兄弟の名前を聞いた事はないが…

母の伯父・伯母の(祖母の兄・姉の)名前は聞いていた。


その中には確かにアラスターという名前があった。

Jr.というからには父息子で同じ名前なのだろう。

それを思うとーー

このオジサンが母の従兄弟だという話も信憑性が高いと分かった。


「…それがここ最近注文が全く入らなくなってるみたいなんで『もしや天敵に狩られちまったんじゃないだろうな?』って心配してたんだ。

お前さんが生きてるって事は、エリザベスも無事なんだな?いつ北部に移って来たんだ?」


「…あの転移魔法陣て、オジサンの所に繋がってたの?…パパとママが死んだ時に『両親は亡くなりました』って手紙を送った筈だけど、届いてなかったの?…」


「…はぁ?」


「………」


「…冗談、とかじゃ、ないようだな…」


「…私が送った手紙は、何処に行ったんだろ…」


「…商品転送用の魔法陣は持ち歩いてないんだよ。注文が有れば直ぐ送れるように商品保管倉庫側の事務室に備え付けてある。

アングラ商品のやり取りは信用とスピードが大事だから、誰かしら事務室に居て、魔法陣に現れる注文票を受け取れるような体制なんだが…」


「…親戚の人達に訃報が伝わってなかったんだね?」


「ああ。…やっぱり例の天敵に狩られたのか?」


「うん」


「そうか…」


「………」


「それでお前は今、どうしてるんだ?親2人が死んだなら、お前は逃げて来たんだろ?こっちにはスミス家の者もスミッソン家の者もフェアバンクス家の者も居ない筈だが?」


「アッシュクロフト家って家でお世話になってる、というか、お世話してる?感じ」


「奴隷じゃないんだよな?」


「孤児狩りに捕まって、一度孤児院に保護された後『養子』って名目で引き取られたんだけど…」


「うん。この国じゃ『養子』は未成年の無償労働者のことだからな。ある意味で奴隷よりも始末に負えない」


「私、マズイことになってる?」


「かなりな」


「どうしたら良い?」


「孤児じゃないことが証明されて身内が引き取る意向を示せば、地域によっては簡単に養子縁組が解消されて解放されるんだが、北部はちと厄介な土地柄でな」


「本当には引き取ってもらえなくても引き取る気が有るって言って欲しい。今の家、人使いが荒いだけじゃなくて、家の人達も人間性に問題があるんだ」


「…お前、確か8歳だろ?シッカリしてるなぁ…。お前があんまりシッカリしてるんで、ついつい依存してるとか、そういうのもあるのかもな」


「依存されたくない」


「だろうな」


「オジサンから私のお祖父様とかに連絡して欲しい」


「…ミルミドネス伯爵家は敷居が高いが、エリザベスの異母兄が現伯爵その人だからな。エリザベスが亡くなったと言えば忘れ形見のお前を引き取ると言う確率は高いが…」


「…転移魔法陣を創る材料にママの血を使ってたんだよね?もうママは居ないし、私がこのまま北部でのたれ死んだら西部の親戚、みんな困るんじゃない?」


「分かってる」


「なら」


「ああ。直ぐに本家に連絡を取る。と言ってもスミッソン家の本家はシルヴィアス伯爵家だから、ミルミドネス伯爵家へ直通で連絡を取れる訳じゃない。

相手が忙しいと後回しにされて時間がかかるかも知れないが、数日中に養子縁組解消の手続きに必要な書類は揃えられる筈だ。

荷造りして大人しく待っておけよ。っと、その前にアッシュクロフト家とやらの住所を訊いておこうか」


「住所は…」

番地とかがある訳ではないので、近くにある公共施設である乗用馬車乗り場の特徴とアッシュクロフト家の外観を述べた。


「それにしても寒そうだな…。外套一つ与えられていないのか…?」


「着替えの服は野宿してた頃に寝てる間に鞄ごと盗まれてたし、身に付けてた服も孤児狩りにあった時に『分相応な物を身に付けてるとろくな目に遭わない』とか言われて取り上げられたんだ…」


「…北部の裏社会も孤児院もクソだな」


「同情するなら、何か暖かい子供服ください」


「分かった。アッシュクロフト家へ訪問する時までに冬物衣料も揃えておく」


そう約束してもらってから、私はホッとして、クレアの言い付け通りの買い出しを済ませアッシュクロフト家へと帰った…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ