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聖人:織田信長録  作者: 斎藤 恋
元服後:織田信長

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第51話:琉球侵攻

───尾張:那古野城、大広間


「あん?将軍が困窮している?・・・?それがどうしたのだ。」


「あ、いえ、武士として支援などはしないのでしょうか・・?」


「無意味だな。してどうする?なんの見返りもないのだぞ?」


「え?ですが、朝廷のように何かしらの位は頂けるのではないでしょか?」


「あのなぁ・・・、いや、そういえばそういったことも説明しておらなんだか?」


「え、えっと、林様が以前、将軍家の有様に嘆いておられるのを伺いまして・・・」


「なるほどな。だが、当家では将軍家のことには一切手出しせん。当家は既に朝廷の位で成り立っておるしな。

第一、将軍家の位も、今の義昭ではただの紙切れでしかないわ。」


「?朝家から、正式に征夷大将軍の位を受けておられるのでは?」


「今は、三好家に成り手がおらんから、そのままにしておるだけよ。見つかれば即座に廃任であろうよ」



足利義昭の現在の立場はそれほどまでに低い。

朝廷の隆盛もあり、畿内では既に忘れ去られ始めているほどだ。



「では、今後も朝廷の方を中心に?」


「あぁ、そうなるな。もしかすると、三好もそれに倣うかもしれんな・・・。

彼方も武家側・・、いや、将軍家では散々いびられたらしいからな。」



三好家は、長慶が当主だった頃、細川家を裏切り天下の采配をしていたことで、散々、将軍家からの嫌がらせを受けている。


長慶の兄弟も、将軍家による暗殺だったとされるものがある、とも言われるほどだ。


足利義輝は、三好長慶の掌で生かされ続けていたものの、それに対しては生涯感謝などせず、

"三好家討伐"は義輝の人生のスローガンだとすら言えるものになっていた。



当然、他の三好の者もいい気などはしない。

将軍家に対する恨みや憎しみは、骨の髄に刻まれているといっても過言ではなかったろう。



そんな中、将軍家の存在感は日に日に落ちていく

かつては、将軍の就任に対して躍起だった三好家も、ある日、方針の変更を決めた。




結局、信長の予想通り、

この数年後、三好家は朝廷へと献金し、三好の官位を上げることとなる。



三好家は、織田に配慮しつつも、畿内の天下人として足場を固めていくのだった。




────────────────────────────



元亀5年(1579年)春


───琉球王国


南国の青い空、白い海




ある日、そんな光景を埋め尽くしたのは、ひたすらに黒い船だった。


その船の船体は黒く、燃えているかのように煙を上げてこちらに向かってきた。



「お、おい!なんだ、何か来るぞ!!」


平和そのものだった光景を、そんな"黒船"が覆い尽くしていった。




「ふん!せっかく、手紙を届けてやったというのに何の支度もしとらんのか?琉球の者どもは」


船長のひとりだった"井伊直政"は、そんな琉球王国の者たちに失望していた。

久々の戦で盛り上がっていた心に冷や水を浴びせられた気分だったのだ。



「の、ようですな。あれでは、戦にさえなるのかどうか・・・」


同僚の三井長意もそう答える。

三井は、元の名前を牧野康成。



三河一向一揆の際に、今川と織田、武田家に挟まれて潰された三河国人衆は、現在では織田と武田家に拾われているものが多かった。

しかし、当時、逃げ出した際に己の名を捨てるものも多く、牧野・・、いや三井の家もそんな者たちの一つだったと言える。



「はぁ・・やる気がなくなった。此度の総大将は"信雄"であろう?

佐治の血を引く彼の方に、我らの力量を見せつけるいい機会であったものを・・・」



"織田信雄"


史実のそれと名は同じだが、母親が違う織田信長の次男だ。

佐治家の母親から生まれ、生後は傅役とともに佐治水軍で活動していた。



織田水軍の次期統領としての地位をこの頃には固めつつあったといえる。




信雄率いる織田水軍の"機帆船団"


鉄で補強され、黒く塗られた巨大な船体が、海を埋め尽くすように展開している。

その帆桁には、琉球の者達が見たこともなかっ"木瓜紋"の旗がはためき、船体の腹からは不気味な筒がいくつも姿を見せていた。




「な、なんなのです、あれは!」


琉球王国の港湾で務める官吏たちが、震え上がっていた。


これまで、琉球へとやってきた船とは全く違う大きさ。


沈み込みそうなほど黒い船体


もくもくと上がる黒い煙など、彼らの想像もつかない船が琉球の港を囲むように展開していたのだった。



「交渉者を出せ!」


結局、琉球側からはまともな反撃もないまま、織田家の船団は砲門を港側にむけたまま停泊。

そこから小舟で港まで移動した後、その中の1人がそう叫んだ。



「で、では、私めが・・・」


那覇港の副代表であった者が前に出た。



「我らは、織田家の一団だ。

先日、大友家に仲介を頼んだ書状があろう?その返答を受け取りに参った。」



「へ、返答?」


大友家を経由してきた織田家の書状のことは、琉球の宮廷内でも知られていた。

しかし、余りにも強欲傲慢なその書状の内容に、宮廷内では怒りや嘲りが広がっていたのだ。


だが、そんな情報は、港湾の一官吏でしかなかった彼のところにまでは届いておらず、目を泳がせるしかできることはなかったのである。




話にならないとばかりに、船で乗りつけてきた彼は、背後の黒い船団に合図を送った。

その瞬間、"───ドォォォォォン!!"旗艦の大砲が火を噴いた。



その轟音と共に、港倉庫の一角が吹き飛ぶ。

打ち込まれた大砲は、倉庫の外壁を撒き散らし、周囲に砂煙が立ち込めた。



「お主は、返答を持っていない。ということでよいな?」


「え、え、あ、あの・・・」


「今すぐ降伏することをお勧めするぞ?」



通訳を介して行われたその会談は、瞬く間に破談した。


琉球の王に返答を求めることすらなく、織田水軍は、那覇港湾の官吏達を拘束。

逆らう者達は、容赦なく殺害された。



港湾の確保後は、首里城もまともな抵抗もないままに攻め落とされ、織田家は琉球支配を本格的に始めることになる。


ただ、四国などと違い住民の追い出しなどはせず、"二等民"として、織田家領民の下位人種として長い間扱われることとなる。



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