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BOY'S AUTOBIOGRAPHY  作者: 岳元らいと
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22/25

22 体質で本屋と賑やかな仲間(紀井 智明⑨)

・・・・・・・・・・




 シアターから出て、ショッピングモールの買い物エリアがある建物へと繋がる渡り廊下みたいな橋を渡る。

 おれたちがいた映画館エリアは二階で、渡った先も当然二階。

 えーっと……ここは、服が多いけど、ゲーセンとかおもちゃ売り場とかもあったはずだ。

 本屋とか、あとCDやDVDを売ってる店は三階にある。

 映画が終わって、人がどっとシアターの出口から出ていくのを少し自分たちの席で待ってる時にやすが思い出したように本屋に行きたいって言った。

 好きな作家の新しい小説が今日出るんだって。

 それがあったら買いたいって言うから三階に向かうことになったんだ。


 ところで、そのやすは映画が終わってからずっとでっかいあくびを繰り返してる。

 そんなにつまんなかったのかな……?


「やす、そんなに映画つまんなかった……?」

「えっ、何で?」

「いや、ずっとあくびしてるから……」

「ん、ああ。そういうことか。ごめんごめん。ほら、映画館ってさ、暗くなるじゃない?」

「映画だし?」

「ぼく、ああいう暗いけど強烈な光とか明かりがあるところにいると眠くなっちゃうんだよね。何でか分からないけど」


 へー。

 そうだったっけ……映画観に来た時はいつもスクリーンに釘付けだったし、気がつかなかったのか。

 今回はやすのことが気になってしまったから、もしかしたらそういうやすの体質みたいなものに、今まで気にしてなかったことに気づいたのかもしれない。


 そんな会話をしながら、買い物エリアに入ってちょっと進んだ先にある上りのエスカレーターに乗り込む。

 もちろん、手を繋いだままで。




・・・・・・・・・・




 エスカレーターから降りて映画館エリアとは反対側にある本屋に着いたら、さっきのおれみたいに今度はやすが手を離して本棚の並んだ店内へとさっさと行ってしまった。

 さっきのおれってこんな感じだったのかな……やられるとちょっと寂しいかも。

 反省しないとな。


 やすどこだろ……。

 あ、でも今は新しい本探すの楽しんでるかもな。

 漫画コーナーでも見ながら待ってようかな。

 この前新巻買ったから、今は別に欲しいのないな。


 ……って。


「やす!? 何で後ろにいんの!?」

「しーっ。大きな声出さないの」

「あ、ごめん……。本あった?」

「うん、あったよ」


 手に持ってる黒いレジ袋がそうなのかな?

 本は、思ってたより小さいやつなのかも。

 てかもう会計終わってたのかよ。

 どんだけ即買いだよ。


 そんなことを考えてたら、やすは満足そうな顔をしておれに手を差し出してきた。

 やっぱ、おれさっきこんな感じだったんだな……おれはちょっと恥ずかしがってたけど、やすは今本が見つかって満足してる顔だからそこは違うところだけど。

 今度はやすから手を繋いでほしいっていう意思を示してくれた。

 そういえば、おれからばっかだったな今日は。


 今度はおれが手を差し出して、やすからぎゅっと握ってもらった。


「とも、お昼ごはん食べに行こう」




・・・・・・・・・・




 一階にあるフードコートに着いたのは、昼になるちょっと前。

 まだ早いかな? って話しながら来たんだけど、もう結構混んでて、席を探すのに思ったより苦労した。

 やっと座れるとこを見つけて、やすと何を食べるか話した結果おれがラーメンとチャーハン、やすはオムライスが食べたいってことになった。

 二人同時に離れるのはまずいから、おれが先に注文しに行くことにした。


 ここのフードコート、他のショッピングモールを知らないからあれなんだけど、色んな店があるねぇ。

 実は、ここのフードコートに来た回数はそんなに多くないんだよね。

 うちの親とやすと来た時はこのフードコートじゃなくてこの階にある専門店に入ること多いし、ツカサたちとも来たことあるけどそれも少ないし。

 あーラーメンとチャーハン食べたいって思ってたけど……たこ焼きとかファーストフードとか、うわ、アイスもある!


 ……やめよ、大人しくラーメンとチャーハンにしとこ。


「あれ、ともじゃない?」

「あ、ホントだ。ともすけじゃんー」

「んぇ? あっ、シキ・ちはる!」


 何だ、二人も来てたんだ!


 このうさぎみたいな角が生えたハチマキみたいな被り物をしてて鼻に絆創膏貼ってる子は、緑山(みどりやま) 史貴(ふみたか)

 通称「シキ」。

 シキっていうのは、史貴って名前がそう読めるから付けられたんだ。

 シキとは勉強が苦手同士、仲良くやってるんだ。

 あ、そういえばシキは男子だけどぬいぐるみとかかわいいのが好きなんだ。

 お姉さんの影響らしいんだけど、それでも本人は好きだから好きって言い切ってる。

 ちょっとバカだなぁと思うところもあるけど、超いい奴!


 んで、この髪が長くて後ろで束ねてる子は、洲江(すのえ) 千晴(ちはる)っていって幼稚園から一緒なんだ。

 髪長くて見た目が女子みたいだけど、男子だ。

 髪切るのがめんどくさいから切らないだけで、口調も態度も男子そのもの。

 確かお姉さんが二人いて、下にも去年(今年度って言えばいいのかな)の六月に生まれた妹がいるんだっけ。

 女の子ばっかりの中に男一人って……あ、ちはるの父親(おじちゃん)もいるや、それでも大変だなぁ。

 ちなみに今は五年三組で、おれともやすとも違うクラスなんだよね。


「一人なの?」

「違うよシキ。やすと一緒に来たんだ」

「やっすんも来てるのかー」


 ちはるはおれのことを「ともすけ」、やすのことを「やっすん」って呼ぶ(時々みんなと同じ「とも」「やす」って呼び方になる)。

 知ってるとは思うけど、本名じゃないからね!

 ちはるが勝手に呼ぶんだ!

 やすは気にしてないけど、おれはあんま好きじゃないの!

 ともすけだよ!? ともすけって何だよ!?


「何で睨まれてんのオレ」

「何でもない」


 ところで二人は何しに来たんだろ?


「姉さんたちの買いもんの付き添い」

「おいらとちはるは荷物持ちなの」


 あ、そっか。

 シキのお姉さんとちはるの二番目のお姉さんは同じ高校の友達なんだっけ。

 それの付き添い……ってか、荷物持ちかぁ。


「大変だなぁ……」

「「慣れたよ」」


 そう言ってへらっと笑った二人は、このフードコートの近くにある鞄を売ってる店に入っていった。

 何か「やれやれ」って感じが見えたのは……気にしないようにしよっと。



 シキとちはると別れたあと、注文を終えてできたら呼び出しがかかるスマホみたいなやつを持ってやすのいるところに戻ったら、やすは誰かと話していた。

 少し遠くて誰か分からなかったから近づいたら、それはかんぺーだった。


「あっ、ともー。混んでたのー?」

「! 押忍、紀井さんっ」

「うん。思ったより混んでた。かんぺーも来てたんだ?」

「はい!」


 このイガ栗頭の顔とか身体中に傷がある子は、藤原(ふじわら) 寛平(かんぺい)

 傷があるのは、別にイジめられてるんじゃ……触れないでおこうか。

 えっ? いや、イジメじゃないよ?

 かんぺーが強くなるための特訓で、かんぺーが自分からやるって言って今こういう状況なだけで。

 あれ、何かややこしい説明になってるような……?


 そ、そうだ、おれは「かんぺー」って呼んでるけど、やすは「カンペイ」くんって呼んでるんだ、アハハ。


「オーイ、カンペイー。何しとんねん」


 また増えた。


「権田くんも来てたんだ?」

「おっ? ちび丸にちび2号やんけ。オマエらもおったんか」

「ちびって言うな、権田!」


 ほんっとにコイツは!

 コイツはおれのこと「ちび2号」って呼ぶんだ!

 そんで、やすのことは”ちびな丸内“で「ちび丸」って呼ぶんだ!

 ちびって言いやがってぇ……。


 腹立つけど教えてあげる。

 この顔黒関西べ「大阪弁じゃボケちびッ」……っちっ、大阪弁野郎は、権田(ごんだ)ってやt「ちゃんと紹介せぇや、くそちびがッ」……うっせ! いちいち入ってくんな!

 コイツは権田 (しゅん)

 昔やすをイジめてたヤなやつっ。

 顔黒だしっ、不良だしっ、アホだしっ、うっさいしっ、大阪弁だしっ。


「ともそれ不良以外全部関係ない」


 うっ。

 そ、そうだ、かんぺーの傷はコイツがつけたんだ。

 コイツとの特訓でかんぺーはボッコボコのめっためたにされてるんだ。


「あ、いえ、これは……自分が弱いのが原因でして……」

「それにコイツの傷は、そこのちび丸にもやられてる部分もあるわボケッ」

「否定できないからぼくを今の口ゲンカに巻き込まないでもらえるかな」


 もういい……疲れる。

 てか、何でかんぺーと顔黒野郎「ああ!?」……うっさいって! の二人がここにいんの?


「ああ、それは」

「あっ、そうやっ。オマエら朱彦(あきひこ)見んかったか?」

「朱彦くん……って、権田くんの弟だったよね。見てないけど、一緒だったの?」

「ああ。アイツがゲーセン行きたい言うさかい連れてきたったのに。……あんのアホ彦がッ!」


 うわぁ、すげぇイライラしてる。


「半分とものせいだけどね」


 否定できない。


「では自分たちはこれで。お二人で楽しんでいたのに、すみませんでした」

「そんなにかしこまらないでよ、カンペイくん。権田くん、ぼくたちも朱彦くんを見つけたら連絡するよ」

「ああ……すまんな、ちび丸。見つけたら一発ぶん殴ってもええから」

「そこまではしないけどね」


 そう言うと二人はどこかへ行ってしまった。


「なかなか賑やかだったね」


 やすは笑いながらそう言った。


「ぼくも注文してくるね」

「うん。いってらっしゃい」

「いってきます」


 確かに、にぎやかだったなぁ……今このフードコートは他のお客さんもいるからもっとにぎやかだけど。




 ばたばたと賑やかな仲間たち、出番はこれだけかしら。

 やすの買った小説は、実は第1話でその話が出ていました。

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