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私を殺した世界へ  作者: ちゅんた


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第五章 最初の目覚め


光だった


眩しいほどの光


少女は思わず目を閉じた


身体が宙に浮いているような感覚


暖かい


不思議と苦しさはない


火に焼かれていたはずなのに


痛みもない


死んだはずなのに


意識もある


やがて


ゆっくりと瞼を開いた


最初に見えたのは天井だった


見たこともないほど豪華な天井


白を基調とした装飾


金色の細工


美しい絵画


まるで教会のような美しさだった


少女は身体を起こす


柔らかな感触


巨大なベッドだった


思わず手で触れる


こんな寝具を見たことがない


村の藁布団とはまるで違う


夢のようだった


いや、夢なのかもしれない


そう思った


死ぬ直前に見る夢


きっとそうなのだろう


ならば、少しくらい楽しんでもいい


少女はそう考えた


ベッドから降りる


足元には真っ白な絨毯


壁には巨大な鏡


窓には美しいカーテン


何もかもが別世界だった


鏡の前に立つ


そこに映るのは自分


見慣れた顔


見慣れた黒髪


見慣れた瞳


しかし、どこか違う


ほんの少しだけ


何かが変わっている気がした。


その時


部屋の扉が開いた


少女は振り返る


入ってきたのは老執事だった


背筋の伸びた老人


上質な服を着ている


老人は少女を見るなり深々と頭を下げた


「お目覚めになられましたか」


少女は固まった


自分を見ている


しかも、敬意を払っている


人生で一度も向けられたことのない視線だった


「……私に?」


老人は微笑む


「他にどなたがいらっしゃるのですか」


少女は答えられなかった


老人は静かに扉を開いた


「皆様がお待ちです」


少女は導かれるまま部屋を出た


長い廊下


赤い絨毯


豪華な装飾


どこまでも続く屋敷


夢にしては現実感がありすぎた


やがて大広間へ辿り着く


扉が開かれる


少女は息を呑んだ


数十人の人間が並んでいた


男も女も


全員が高価な服を着ている


そして、一斉に頭を下げた


少女は言葉を失った


老人が告げる


「お帰りなさいませ」


静寂


誰も顔を上げない


誰も命令しない


誰も期待しない


誰も何かを押し付けない


ただ、彼女を迎えている


少女は戸惑った


今までの人生では考えられないことだった


すると老人が尋ねる


「まず何をなさいますか?」


少女は反射的に答えようとした


皆が喜びそうなことを


皆が望みそうなことを


だが、言葉が出ない


違う


もう、そうじゃない


胸の奥から別の感情が湧き上がる


小さな衝動


しかし確かな衝動


人生で初めての感覚だった


少女は窓の外を見る


見知らぬ世界


見知らぬ街


見知らぬ時代


知らないことだらけ


だから


思ったまま口にした


「外へ行きたい」


老人は驚かなかった


むしろ嬉しそうに微笑む


「かしこまりました」


その瞬間


少女の胸が高鳴った


誰にも否定されない


誰にも止められない


ただ一つの願いが叶う


それだけで


こんなにも嬉しいのか


屋敷の玄関が開く


眩しい陽光


巨大な庭園


噴水


花々


そして、豪華な馬車


少女は目を輝かせた


幼い頃


森の中から見たことがある


遠くを走る美しい馬車


届かないと思っていた世界


憧れることすら許されないと思っていた世界


それが今、目の前にある


少女はゆっくりと馬車へ近付く


手を伸ばす


磨き上げられた車体に触れる


冷たい


本物だ


夢ではない


その瞬間


少女の口元に笑みが浮かぶ


自然に


抑えられないほどに


そして、人生で初めて


誰の顔色も窺わずに笑った


空は青かった


世界はまるで違って見えた


少女は馬車へ乗り込む


胸が高鳴る


期待でいっぱいだった


知らない世界が待っている


知らない時代が待っている


知らない人生が待っている


馬車が動き出す


少女は窓から流れる景色を眺めながら、小さく呟いた


「面白そう」


その笑顔は


火刑台の上にいた少女のものではなかった


新しい人生を手に入れた者の笑顔だった

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