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『死因:熊。転生先はマンモス時代でした』  作者: 忍絵 奉公


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78/81

第78話 捕虜から敵国の名が判明する


 翌朝。

 太狼街の一角では、捕らえた黒山軍の兵士たちが集められていた。

 戦いから一夜が明けても、彼らの顔には疲労と恐怖が残っている。

 千人でやってきた。

 それなのに。

 太狼国に敗れ、百人以上が戦場で命を落とし、多くの仲間が傷つき、そして三百人以上が捕らえられた。

 誰も、こんな結果になるとは思っていなかった。

 タカシは捕虜たちを見ながら、クロベに尋ねた。

「この中に、黒山軍のことを詳しく知っている奴はいるか?」

「何人か確認しています」

 クロベが一人の男を連れてきた。

 三十代くらいの男だった。

 黒い防具はすでに外されている。

 男は警戒した表情でタカシを見る。

「名前は?」

「……ガルド」

「ガルドか。お前は黒山軍で何をしていた?」

「荷駄隊だ」

「荷駄隊?」

「食料や武器を運ぶ仕事だ」

 タカシは頷いた。

「なら、いろいろ知っていそうだな」

 ガルドの顔が強張った。

「何を聞く?」

「お前たちは、どこの国から来た?」

 ガルドは黙った。

 タカシは急かさなかった。

 しばらくして、ガルドが口を開いた。

「……黒山軍は、国じゃない」

「やっぱりな」

 クロベが静かに呟いた。

「黒山軍は、ある国に仕える軍だ」

「その国の名前は?」

 ガルドはタカシを見る。

 そして、低い声で答えた。

「ヴァルガン王国」

 その名前が、部屋に響いた。

「ヴァルガン王国……」

 タカシは地図にその名前を書き込んだ。

「どんな国だ?」

「この辺りでは最大の国だ」

 ガルドは答えた。

「王都には大きな城がある。王都を中心に、多くの村と町がある」

「王がいるのか?」

「ああ」

「誰だ?」

「ヴァルガン王国の国王、バルガス王だ」

 タカシは黙って聞いていた。

 昨日、ユキが見つけた巨大な街。

 その光景が頭に浮かぶ。

 あれほど大きな勢力なら、国王がいてもおかしくない。

「黒山軍は、その王国の軍隊なのか?」

「正確には違う」

 ガルドが首を振った。

「黒山兵団は、王国軍の中にある独立した兵団だ」

「独立した兵団?」

「ああ。黒い鎧を着ているから、黒山兵団と呼ばれている」

 タカシは考え込んだ。

 つまり。

 昨日戦った千人は。

 巨大な王国の全軍ではなかった。

 その中の一部隊だった。

「兵士は何人いる?」

 ガルドは苦い顔をした。

「王国軍だけなら……一万人以上いる」

「一万人?」

 キバオウが思わず声を上げた。

 部屋にいた者たちがざわめく。

「そんなにいるのか」

 リグも腕を組む。

 ガルドは続けた。

「王国には各地の領主がいる。その領主たちも兵士を持っている」

「つまり、一万人だけじゃない?」

「そういうことだ」

 タカシは地図を見る。

 昨日ユキが見つけた街。

 その周辺にあった無数の村。

 それらすべてがヴァルガン王国の領土なのだろう。

「じゃあ、今回どうして太狼国に来た?」

 タカシが尋ねる。

 ガルドは少し迷った。

「……命令されたからだ」

「誰に?」

「黒山兵団の隊長に」

「なぜ?」

「お前たちが、急激に勢力を広げているからだ」

 タカシの眉が動いた。

「俺たちのことを知っていたのか?」

「ああ」

「いつから?」

「数か月前からだ」

 部屋が静まり返った。

 太狼国が知らない間に。

 向こうは太狼国を調べていた。

 ガルドは続けた。

「鉄を持っている部族がある」

「そう報告されたらしい」

「そして、周辺の部族を次々に従えている」

「だから、先に力を見せて服従させようとした」

 タカシは大きく息を吐いた。

「それで五割の上納を要求したのか」

「そうだ」

 クロベが口を挟む。

「つまり、最初から太狼国を滅ぼすつもりではなく、支配下に置くつもりだった」

「そういうことだ」

 ガルドは頷いた。

 タカシはしばらく黙っていた。

 そして。

「もう一つ聞きたい」

「何だ?」

「ヴァルガン王国は、俺たち以外の国とも戦っているのか?」

 ガルドの表情が変わった。

「……ああ」

「どこと?」

「南西のハルディア王国」

 タカシは地図を見る。

 クロベも地図を覗き込んだ。

「国が二つ……」

 タカシは呟いた。

 これまで太狼国の周囲には、村や部族しかないと思っていた。

 だが。

 違った。

 この世界には。

 太狼国の知らないところで。

 すでに大きな国々が存在している。

 そして、その一つ。

 ヴァルガン王国が。

 すでに太狼国の存在を知っていた。

「クロベ」

「はい」

「地図をもっと大きくするぞ」

 クロベが笑った。

「そうですね」

 タカシは地図を見ながら言った。

「俺たちが知らない世界が、まだまだありそうだ」

 その頃。

 遠く離れたヴァルガン王国では。

 敗走した男が。

 王都へ向かって馬を走らせていた。

 伝えなければならない。

 黒山兵団が。

 千人の兵士が。

 太狼国に敗れたことを。

 そして。

 太狼国が。

 想像以上の力を持っていることを。


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