第66話 海へ誘え
城壁の上。
タカシは大量の大蒜と青唐辛子を並べていた。
「ここにも置け!」
「もっと間隔を詰めろ!」
兵士たちが次々と運んでくる。
大蒜。
青唐辛子。
行者ニンニク。
強烈な匂いを放つ植物を、城壁の周囲に並べていく。
やがて。
城壁をぐるりと囲むように、強烈な匂いの壁ができあがった。
ユキが鼻をひくつかせる。
『人間でも臭いぞ』
「それくらいでいい」
タカシはオロチを見る。
オロチは唐辛子を鼻に突き刺されたまま、猛烈に暴れている。
そして。
城壁へ近づこうとする。
だが。
大蒜と唐辛子の匂いが漂う場所まで来ると、動きが鈍った。
グルルル……。
巨大な頭を左右に振る。
明らかに嫌がっている。
「効いてる」
タカシが呟いた。
クロベは海の方向を見る。
「ならば」
「ん?」
「海へ誘導したら、どうなるんでしょう?」
タカシが考える。
「海か……」
以前、海蛇を狩ったことがある。
だが。
「こいつは山蛇だろ」
「はい」
「多分、泳げるとは思う」
クロベが首を傾げる。
「では、溺死は期待できない?いや8つの首があるから、まともに泳げないな」
「分からない」
タカシはオロチを見る。
「深く潜るかな?」
そこへ。
「俺がやる」
アグニが手を挙げた。
「船で引っ張る」
「船で?」
「頭に投げ輪を引っかける」
アグニが身振りで説明する。
「そのまま船で沖へ引っ張っていく」
タカシが海を見る。
アグニが作っていた大型船。
桶作りを参考に、竜骨から組み上げた船だ。
まだ完成したばかり。
「……いけるか?」
「やるしかない」
アグニが笑った。
「海なら俺の場所だ」
タカシはしばらく考えた。
そして。
「採用する」
作戦が決まった。
海へ誘導する。
そこでアグニが船を使って沖へ引っ張る。
問題は。
どうやって海まで誘導するか。
クロベが地面を見る。
「音です」
「やっぱりか」
「オロチは音と振動を追います」
タカシが頷く。
「なら、海まで音を出し続ければいい」
だが。
それは危険な役目だった。
オロチを怒らせている状態で、近距離から誘導する。
失敗すれば。
追いつかれる。
そこで。
リグが前へ出た。
「俺たちがやる」
後ろには戦士たち。
全員が棍棒を持っている。
「地面を叩く」
ドン!
「音を出す」
ドン!
「オロチを海まで連れていく」
タカシが見つめる。
「危険だぞ」
リグが笑う。
「だから俺たちがやる」
タカシは少し黙った。
そして。
「分かった」
決死隊が組まれた。
リグを先頭に、戦士たちが並ぶ。
棍棒を構える。
「行くぞ!」
ドン!
ドン!
ドン!
地面を叩く。
オロチの頭が動いた。
ギロリ。
しかし目は見えていない。
頼りになるのは。
音。
振動。
リグたちは少しずつ後退する。
ドン!
ドン!
ドン!
オロチが追う。
ズズン。
ズズン。
ズズン。
巨大な体が動き始める。
「そのまま!」
タカシが叫ぶ。
リグたちは少しずつ海へ向かう。
城壁から離れる。
森を抜ける。
海岸へ向かう。
オロチも追ってくる。
ドン!
ドン!
ドン!
音が続く。
そして。
遠くに海が見えてきた。
リグが海を確認する。
「もう少しだ!」
その後方。
アグニが大型船を海へ出していた。
ロープを準備する。
投げ輪を用意する。
タカシは城壁から遠くの光景を見つめていた。
「頼むぞ……」
作戦は。
いよいよ海へ入る。




