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『死因:熊。転生先はマンモス時代でした』  作者: 忍絵 奉公


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第58話 命懸けの挑発


 シロガネとユキは黒い山へ近づいていた。

 焦げ臭い。

 空には灰。

 地面は黒く染まり始めている。

 そして。

 ドォン。

 ドォン。

 木々が倒れる音が響いた。

 二頭は岩陰からゆっくり顔を出す。

 そこにはいた。

 九つ首の大蛇。

 三十メートルを超える巨体。

 九本の首がそれぞれ別々に周囲を見回している。

 ユキが息を呑んだ。

『街へ向かってる……。』

 大蛇はゆっくりと森をなぎ倒しながら進んでいた。

 方向は南東。

 白き谷だ。

 しかし谷は南南東。

 このままでは酒を置いた場所を通らない。

 ユキが小声で言う。

『どうする?』

 シロガネはじっと九つの首を見つめた。

 そして笑った。

『気付かせればいい。』

『え?』

『俺があいつを怒らせる。』

『無茶だ!』

『無茶だから俺が行く。』

 そう言うとシロガネは一気に走り出した。

 大木へ飛び乗る。

 さらに枝へ。

 さらに高い枝へ。

 空中へ跳んだ。

『おおおおおっ!』

 落下の勢いそのままに、前足を突き出す。

 ドゴォッ!!

 一番近い蛇の頭へ強烈な飛び蹴りが炸裂した。

 大蛇の頭が大きく揺れる。

 シロガネは地面へ着地すると、すぐに振り返る。

 一瞬の静寂。

 次の瞬間。

 ギャアアアアアアアッ!!

 1つの首が咆哮した。

 森全体が震える。

 最初に蹴られた首が怒り狂って突進してくる。

 だが。

 残る八つの首も、その勢いで一斉に引っ張られた。

 そして。

 九つの黄色い瞳が同時にシロガネを捉えた。

『来たぞ!』

 ユキが叫ぶ。

 シロガネは笑う。

『予定どおりだ!』

『逃げるぞ!』

 二頭は全力で駆け出した。

 後ろでは巨大な木が次々となぎ倒される。

 ドォン!

 バキィッ!

 ゴゴゴゴゴ……

 九つ首の大蛇が猛烈な勢いで追ってくる。

 土煙が舞い上がる。

 森の獣たちは悲鳴を上げ、一斉に逃げ出した。

 ユキが後ろを振り返る。

『速い!』

『分かってる!』

 シロガネは木々の間を縫うように走る。

 谷まであと少し。

 しかし。

 少しでも足を止めれば。

 その瞬間、九つの牙が二頭を飲み込むだろう。

 人類の未来を懸けた逃走劇が始まった。



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