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『死因:熊。転生先はマンモス時代でした』  作者: 忍絵 奉公


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第56話 クロベの作戦


 会議は続いていた。

 誰も決定打を思いつかない。

 三十メートル。

 九つの首。

 真正面から戦えば、人間に勝ち目はない。

 沈黙を破ったのはクロベだった。

「考えがまとまりました。」

 全員がクロベを見る。

 クロベは地面に木の枝で絵を描いた。

「倒そうとするから難しいんです。」

「動けなくすればいい。」

 タカシが腕を組む。

「具体的には?」

「酒です。」

 リグが吹き出した。

「酒?」

 クロベは真面目だった。

「動物は熟した果実を食べて酔うことがあります。」

「巨大な蛇でも、酒を飲めば判断力は鈍ります。」

 ライナが目を細める。

「飲むか?」

「飲ませます。」

 クロベは地図の一か所を指差した。

「ここです。」

 黒い山から白き谷へ向かう途中の谷だった。

「ここへ酒樽を並べます。」

「匂いで誘導できるかは分かりませんが、肉も一緒に置けば興味を持つはずです。」

 タカシが考え込む。

「酒はどれくらいある?」

 アグニが即答した。

「樽十個あります。」

 リグが笑う。

「宴会なら一日でなくなる量だ。」

 タカシは首を振る。

「今回は宴会じゃない。」

 クロベは続けた。

「全部飲ませます。」

 ライナが思わず笑う。

「九つの頭全部か?」

「ええ。」

「全部が眠れば、それが唯一の好機です。」

 会議室が静まり返る。

 クロベはさらに作戦を書き加えた。

「第一段階。」

「谷へ酒樽を運ぶ。」

「第二段階。」

「獣肉を大量に置いて、大蛇を誘導する。」

「第三段階。」

「酒を飲み、全ての頭が眠るのを待つ。」

「第四段階。」

 クロベは一度息を吸った。

「全ての首を一斉に切り落とします。」

 その言葉に全員が息をのんだ。

 リグが呟く。

「一本だけじゃ駄目か?」

 タカシが首を横に振る。

「九つあるなら、一本だけ切っても残り八本が襲ってくる。」

 ライナも頷いた。

「やるなら一度だ。」

「全て同時。」

 キバオウが草薙の刀を見つめる。

「鉄の武器が必要になるな。」

 タカシは静かに立ち上がった。

「まずは鍛冶場だ。」

「草薙の刀を増やす。」

「それと酒樽十個を絶対に使うな。」

 アグニは苦笑した。

「しばらく禁酒だな。」

 広場から一斉にため息が漏れる。

 酒好きたちには一番つらい命令だった。

 しかし誰も反対しなかった。

 相手は九つ首の怪物。

 白き谷の未来を懸けた戦いが、静かに始まろうとしていた。


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