第50話 女王の決断
宴は最高潮だった。
酒樽が空になり。
笑い声が夜空に響く。
リグは既に出来上がっている。
アグニは地面で寝ていた。
裂牙族の戦士たちは歌っている。
女戦士たちも負けじと騒いでいた。
そんな中。
ライナだけはタカシの隣から離ライナかった。
顔は真っ赤だった。
「お前、本当に変な男だな」
肩を組んでくる。
酒の匂いがした。
「そうか?」
「ああ」
ライナは笑う。
「私より強い男などいなかった」
「たまたまだ」
「違う」
即答だった。
そして周囲を見る。
石積みの城壁。
並ぶ家々。
陶器。
布。
酒。
人々の笑顔。
「強いだけならいた」
ライナは静かに言う。
「だが村まで強くした男はいなかった」
その言葉にタカシは少し照れた。
ライナはそんな様子を見て笑う。
「変な顔だ」
「ほっとけ」
「ふふっ」
女王らしからぬ笑顔だった。
しばらく沈黙が続く。
焚火が揺れる。
夜風が吹く。
そしてライナはぽつりと言った。
「なぁタカシ」
「なんだ」
「私は負けるのが嫌いだ」
「知ってる」
「だが」
一度言葉を切る。
「お前になら負けてもいいと思った」
タカシは驚いた。
ライナほど誇り高い戦士がそんなことを言うとは思わなかった。
ライナは真っ直ぐ見つめてくる。
「私の村とお前の村」
「うん」
「一緒になれば、もっと大きくなれる」
それは同盟の話だった。
そして。
それ以上の意味も含んでいた。
タカシは苦笑する。
「随分急だな」
「私はそういう性格だ」
ライナは豪快に笑った。
周囲ではシリカがこちらを見ていた。
ユナも気づいている。
リグは酔っぱらって全く気づいていない。
ライナは立ち上がった。
そして広場中に聞こえる声で宣言する。
「聞け!」
全員が静かになる。
「私は白き谷と同盟を結ぶ!」
歓声が上がる。
「そして!」
ライナがタカシを指差した。
「私はこいつを気に入った!」
さらに歓声が大きくなる。
シリカが頭を抱えた。
キバオウは爆笑している。
リグは「おおー!」と叫んでいた。
ライナは満足そうに頷く。
「細かい話は明日だ!」
その一言で宴は再開された。
こうして。
白き谷は新たな大勢力との同盟を手に入れたのだった。




