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『死因:熊。転生先はマンモス時代でした』  作者: 忍絵 奉公


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43/64

第43話 赦しと条件


 太狼村の広場。

 捕えた者たちを、すべて並ばせた。

 女。

 子供。

 負傷者。

 そして――長老。

 空気は重い。

 誰も声を出さない。

 *

 俺は一歩前に出る。

 全員を見る。

 そして――大きく息を吸う。

「聞け」

 静寂が落ちる。

「俺たちは、話し合いに行った」

 シリカが横で息を止める。

「だが、お前たちは応じなかった」

「いきなり攻撃してきた」

 ざわ……と揺れる。

 視線が下がる者もいる。

 睨む者もいる。


「だから戦った」

 短く、はっきりと言う。

「お前たちにも、大切な家族がいただろう」

 沈黙。

 子供の泣き声だけが、小さく響く。

「だが――」

 一歩踏み出す。

「俺たちも、自分たちを守らなければならない」


 間を置く。

 全員の目を見る。

 そして――

「……許せ」

 その一言が落ちる。

 風が吹く。

 誰も動かない。


 クロベが後ろで小さく呟く。

『あー……これは効きますね』


■条件

 俺は続ける。

「ここにいれば――食料は与える」

 ざわつく。

 明らかに反応が変わる。

「飢えはない」

「さらに――」

 後ろを指す。

「軍がいる」

「安全だ」

 リグが腕を組んで立っている。

 それだけで説得力がある。


「だが、条件がある」

 空気が締まる。

「仕事をしてもらう」

 当然だ。

 タダではない。


「最初の三十日」

「食料をそのまま渡す」

 シリカが少し驚く。

 だが何も言わない。

「その間に覚えろ」

「やり方を」


「三十日後」

「通貨を渡す」

 黒木貨を掲げる。

 視線が集まる。

「働いた分だけだ」

「それで――食料を交換する」

 長老がじっとそれを見る。

 理解しているのか、いないのか。

 だが目は動かない。


「そして――」

 一番重要な部分。

「この村から出て行ってもいい」

 ざわめきが広がる。

 予想外の一言。

「ただし」

 声を低くする。

「一度出たら――戻ライナい」

 完全に静まる。

「面倒は見ない」

 それが線だ。

 はっきりした。


■反応

 沈黙が続く。

 長い。

 重い。

 やがて――

 一人の女が前に出る。

 子供を抱いている。

『……食べられるのか』

 かすれた声。

「ああ」

 短く答える。

 それだけでいい。


 別の男が言う。

『……働けばいいのか』

「ああ」

 それも単純だ。


 長老がゆっくりと口を開く。

『……変わっている』

 俺を見る。

『だが、筋は通っている』

 そして――

 小さく頷く。

『従おう』

 それで決まった。


■統合開始

 動き始める。

 食料が配られる。

 傷の手当て。

 寝る場所。

 分ける。

 教える。

 混ざる。


 シリカがほっと息をつく。

『……よかった』

「まだだ」

 俺は首を振る。

「始まっただけだ」


 クロベが横で言う。

『あー……いい形ですね』

『強制じゃない』

『でも逃げ道もある』

「逃げるか?」

『残る人の方が多いです』

 断言する。

『人は安定を選びます』


 ユキがぽつり。

『弱いけど、増える』

 シロガネも。

『群れが大きくなる』


 システムが表示される。


【統合プロセス:開始】

新規住民:158

定住意向:中

離脱可能性:低

【経済参加:準備中】

都市レベル:85% → 90%


 火が揺れる。

 人が増える。

 声が増える。

 そして――

 ルールが広がる。


 俺は空を見る。

 曇っている。

 だがその向こうに確実に何かがある。

 この流れは止まらない。



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