第42話 牙の帰還
村の中心。
長老は、静かにこちらを見ていた。
倒れた男たち。
血。
雪。
そして――俺たち。
俺は一歩前に出る。
「なぜ、即攻撃した」
短く問う。
長老は目を細める。
『……外は敵だ』
それだけだった。
シンプルすぎる答え。
だが――それが全てだ。
『来る者は奪う』
『だから先に殺す』
リグが鼻で笑う。
『なるほどな』
キバオウがいれば同じ顔をしただろう。
俺は周囲を見る。
倒れた男たち。
残った女と子供。
怯えている。
だが逃げない。
逃げ場がない。
決める。
「俺たちは勝った」
静かに言う。
「従ってもらう」
長老は目を閉じる。
一瞬だけ。
そして開く。
『……分かった』
それで終わりだった。
■帰還
列ができる。
前に俺たち。
後ろに――捕えた者たち。
負傷者もいる。
歩けない者は支える。
だが逃がさない。
まるで――羊飼いだ。
ユキがぽつりと言う。
『変な群れ』
シロガネも低く言う。
『弱い群れ』
雪を踏む音が続く。
長い列。
沈黙。
泣き声。
風の音。
■白き谷
門が見える。
見張りが気づく。
ざわつく。
当然だ。
数が違う。
増えすぎている。
俺たちは入る。
全員。
そのまま。
中央へ。
タカシが立っていた。
「俺だ」
リグが言う。
シリカたちが戻ってくる。
そしてその後ろの列。
思わず声が出る。
「……戦ったのか?」
リグが肩を回す。
『ああ』
『こいつら、いきなり来やがった』
短く言う。
『一人、やられた』
空気が一瞬で重くなる。
シリカが目を伏せる。
『……ごめんなさい』
「お前のせいじゃない」
すぐに否定する。
「被害は」
リグが淡々と答える。
『死者一』
『負傷二十七』
思ったより重い。
だが――壊滅ではない。
「向こうは」
『男九』
『女九十八』
『子供五十一』
合計――
百五十八。
多い。
クロベが後ろで呟く。
『あー……一気に増えましたね』
「笑えないな」
■収容
とりあえず、場所を決める。
「太狼村に入れる」
空きがある。
隔離もできる。
ミルカドが頷く。
『任せろ』
女たちが連れていかれる。
子供も。
泣いている。
だが暴ライナい。
もう分かっている。
立場を。
長老が最後に振り返る。
『……終わったな』
その言葉に、少しだけ違和感があった。
終わりじゃない。
始まりだ。
■変化
夜。
火を囲む。
静かだ。
いつもの賑やかさがない。
シリカがぽつりと言う。
『……これ、正しかったんですか』
すぐには答えない。
答えらライナい。
クロベが代わりに言う。
『あー……正しいかどうかは、後で決まります』
淡々としている。
『ただ』
一拍。
『規模は一気に上がりました』
システムが表示する。
【人口増加】
389 → 547
【統合状態】
新規集落:強制編入
忠誠:極低
不安定度:高
都市レベル:78% → 85%
ユキが小さく言う。
『ざわざわする』
シロガネも。
『落ち着かない』
その感覚は正しい。
これは安定じゃない。
膨張だ。
リグが酒を一口飲む。
『まぁいいだろ』
『増えた』
シンプルだ。
だがそれだけじゃ済まない。
俺は火を見る。
揺れている。
大きくなればなるほど、
火は――不安定になる。




