第41話 白旗の先
森の奥。
新たに見つかった村へ向かう。
今回は――使者だ。
だが、備えはする。
リグは、念のため後方に兵を配置した。
百。
森の影に伏せる。
「もし白旗を投げたら、決裂だ。その時は頼む」
短く伝える。
キバオウが頷く。
『任せろ』
前に出るのは――
俺。
リグ。
取り巻き二人。
そして――シリカ。
ユキとシロガネもいる。
白い布を木に縛る。
風に揺れる。
「戦う気はない」
それを示す。
リグが肩を回す。
『通じるといいがな』
「通じてほしいな」
進む。
一歩。
また一歩。
森を抜ける。
視界が開ける。
村。
木の柵。
しっかりしている。
外敵を想定している構造だ。
クロベがいないのが惜しい。
分析したがるはずだ。
門まで五十メートル。
その時だった。
動いた。
柵の中から男たちが飛び出してくる。
槍。
叫び。
一直線。
シリカが息を呑む。
『え……!?』
「来るぞ!」
速い。
迷いがない。
完全に敵だ。
リグが前に出る。
『遅い』
一閃。
一人。
二人。
三人。
正確に突く。
倒れる。
だが数が多い。
横。
取り巻きの一人が囲まれる。
『ぐっ――』
五人。
一斉。
刺す。
何度も。
何度も。
止まらない。
シリカが叫ぶ。
『やめて!!』
だが届かない。
リグの顔が変わる。
怒り。
『……チッ』
そして――
白旗を投げた。
合図。
それだけで十分だった。
森が動く。
伏せていた百が、一斉に起きる。
走る。
雪を蹴る。
一直線に――突撃。
リグが笑う。
『遅いんだよ』
突く。
裂く。
倒す。
黒曜石の槍。
貫通する。
止まらない。
相手の槍は違う。
石槍。
叩く。
当てる。
だが刺さらない。
深く入らない。
差がある。
明確に。
百が到達する。
ぶつかる。
乱戦。
叫び。
血。
土が赤くなる。
短い。
本当に短い戦いだった。
数。
武器。
連携。
すべてが上だった。
やがて静かになる。
敵の男たちは、ほぼ倒れた。
息をしている者もいる。
だが戦えない。
リグが肩で息をする。
『はぁ……』
血を払う。
『話が通じねぇやつらだな』
吐き捨てる。
俺は周囲を見る。
被害。
味方も数人やられている。
だが壊滅ではない。
「進むぞ」
リグが頷く。
村へ入る。
中。
静まり返っている。
そして視線。
女。
子供。
震えている。
逃げない。
逃げらライナい。
シリカが小さく言う。
『……怖がってる』
ユキが低く呟く。
『当たり前』
シロガネも。
『弱い側だ』
奥から、一人出てくる。
ゆっくりと。
杖をついている。
頭には羽飾り。
年老いている。
だが目は鋭い。
リグが低く言う。
『あれが頭だな』
長老が止まる。
俺たちを見る。
倒れた男たちを見る。
そして――
口を開く。
『……遅かったか』
その声は、震えていなかった。
シリカが一歩前に出る。
『私たちは――』
だが長老は手を上げて止める。
『分かっている』
短い言葉。
そして続ける。
『お前たちは、“外”だ』
空気が変わる。
これはただの集落じゃない。
何かを知っている。
俺は一歩前に出る。
「話はできるか」
長老は静かに頷いた。
『……できる』
その目が、まっすぐ俺を見る。
『だが』
一拍。
『お前は何者だ』
リグが横で笑う。
『いい質問だ』
シリカが少しだけ息を整える。
ユキは静かに耳を動かす。
シロガネは一歩後ろに下がる。
ここからだ。
戦いは終わった。
だが本当の“接触”は、今から始まる。




