第40話 選択の地図
白き谷の中心。
木の板に刻まれた線が増えていた。
山。
川。
森。
そして――点。
クロベがそれを指でなぞる。
『あー……世界、広がってますね』
■兵役の決定
その日、俺は全体を集めた。
「有事の時、男は全員戦う」
ざわつきが走る。
「年齢は十八から四十」
キバオウが頷く。
『当然だ』
リグも腕を組む。
『数は?』
「百五十七」
シリカが少し息を呑む。
『そんなに……』
だが必要だ。
守るものが増えた。
「将軍は二人」
「リグとキバオウ」
リグが笑う。
『面白い』
キバオウは静かに頷く。
『任せろ』
「指揮は俺が取る」
全員の視線が集まる。
「軍司参謀はクロベ」
その場にいない。
どこかで寝ているはずだ。
アグニがぼそっと言う。
『あー……起きてるといいですね』
「起こせばいい」
■報告
その時。
斥候が走り込んできた。
『報告!』
息が荒い。
だが目は鋭い。
『中規模の村を発見』
空気が変わる。
クロベが即座に地図へ。
『位置は?』
『北東、森の先』
指がそこに置かれる。
新しい点。
リグが低く言う。
『どのくらいだ』
『百前後』
キバオウが鼻を鳴らす。
『取れるな』
シリカが顔をしかめる。
『すぐにそういう……』
■会議
四人が集まる。
俺。
リグ。
キバオウ。
ミルカド。
そしてクロベ。
火を囲む。
今回は酒なし。
完全に“判断”の場だ。
「どうする」
短く問う。
キバオウが先に言う。
『侵略だ』
『数で押せば終わる』
迷いがない。
裂牙族らしい答えだ。
リグは少し考える。
『同盟もありだ』
『強ければな』
現実的だ。
使えるなら使う。
ミルカドが口を開く。
『交易だな』
『食料と布、武器もある』
『戦わずに増やせる』
経済視点だ。
悪くない。
シリカが小さく言う。
『……全部あり得ますね』
その通りだ。
クロベがまとめる。
『あー……選択肢は三つ』
『侵略・同盟・交易』
『どれも正解で、どれもリスクありです』
「だな」
少しだけ考える。
すぐに決めるべきじゃない。
だから――
「使者を出す」
全員が俺を見る。
「まずは様子を見る」
リグが頷く。
『賢い』
キバオウも腕を組む。
『逃げはしないな』
「違う」
俺は首を振る。
「選ぶための準備だ」
■使者選び
誰を出すか。
これが重要だ。
クロベが言う。
『戦えないとダメです』
『でも、話せないと意味ないです』
シリカが手を挙げる。
『私、行きます』
俺は一瞬考える。
そして頷く。
「いい」
リグが笑う。
『あいつなら殺されても戦う』
「縁起でもないこと言うな」
さらに一人。
裂牙族から。
キバオウが選ぶ。
『こいつだ』
無口な男。
だが目が鋭い。
戦士だ。
そして――
ユキ。
『行く』
「なんでだ」
『変なのいたら教える』
シロガネも低く言う。
『守る』
結局――
四人になる。
■出発
朝。
空気が張り詰める。
シリカが軽く振り返る。
『行ってきます』
「ああ」
短く返す。
雪を踏む音。
森へ入る。
姿が消える。
残された側。
俺は地図を見る。
新しい点。
まだ何も分からない。
だが――
確実に“次”がある。
クロベがぽつりと言う。
『あー……分岐ですね』
「だな」
システムが静かに表示する。
【軍編成:完了】
兵数:157
将軍:リグ/キバオウ
参謀:アグニ
【外部接触:開始】
対象:未確認集落
都市レベル:72% → 78%
ユキの気配が遠ざかる。
シロガネの気配も。
そして――
選択の時間が始まる。
侵略か。
同盟か。
交易か。
それとも――
まったく別の未来か。




