第39話 流れの設計
黒木貨が回り始めて、三か月。
白き谷は――変わった。
■国営という形
中央の広場。
クロベが座っている。
前には木箱。
中には黒木貨。
『あー……全部ここに集めます』
「売り上げ、か」
『はい』
酒、布、魚、その他。
すべて一度、クロベの元へ。
そこから――再配布。
月に一度。
『配る側を固定すると、安定します』
つまり。
これはもう――
国営だ。
■価格の調整
最初に動かしたのは、値段だった。
「酒と布、上げる」
リグが眉をひそめる。
『売ライナくなるぞ』
「いい」
クロベが頷く。
『時間がかかるものは、高くするべきです』
酒は仕込みに時間がいる。
布は手間がかかる。
だから――高い。
結果はすぐに出た。
最初は売れる。
だが――
三か月後。
『……誰も買わん』
リグが腕を組む。
酒は余り始めた。
当然だ。
生きるのに必要ない。
代わりに売れたのは――
食料。
干し魚。
肉。
保存食。
ミルカドが笑う。
『そりゃそうだ』
『食わなきゃ死ぬ』
シンプルだ。
だがそれが本質だ。
■調整(ガス抜き)
そこで俺は決めた。
「宴会で出す」
リグが笑う。
『それだな』
余った酒を、放出する。
定期的に。
誰でも飲めるように。
夜。
焚き火。
笑い声。
酒。
ユキが顔をしかめる。
『また変な水』
シロガネは静かに見ている。
シリカは少し笑う。
『こういうの、大事ですね』
「ああ」
“余り”が、“喜び”になる。
これでいい。
■布の広がり
一方で布。
これは違った。
ユナが報告する。
『売れてます』
安定して。
少しずつ。
理由は単純。
使い道が多い。
身体を拭く。
食卓を拭く。
包む。
敷く。
守る。
文化だ。
完全に。
サイズも増えた。
小。
中。
大。
用途ごとに変わる。
そして――
『綿花も育て始めました』
ユナが続ける。
『自分たちで作れます』
シリカが嬉しそうに言う。
『すごい……』
これは強い。
外に頼らない。
内で回る。
■新産業
さらに――
武器。
俺は西の山を指す。
「黒曜石」
光る石。
割れると鋭い。
「これで作る」
裂牙族が動く。
削る。
研ぐ。
尖らせる。
刃が生まれる。
防具も。
獣の皮。
なめす。
重ねる。
守る。
シリカが触る。
『軽い……』
「動ける鎧だ」
これで戦いも変わる。
■人の流れ
人口。
今は――
389人。
子供が80。
クロベが言う。
『あー……問題ないですね』
『増え方、安定してます』
生まれる。
育つ。
死ぬ。
だが減らない。
それが大事だ。
そして――
新しい変化。
リグの村と、裂牙族。
距離が縮まる。
笑い合う。
そして――
くっつく。
シリカが少し驚いた顔をする。
『あの二人……』
「ああ」
カップルだ。
珍しくない。
むしろ――
いい。
クロベが小さく言う。
『あー……混ざりましたね』
「何がだ」
『文化と血です』
それはつまり――
“分かライナくなる”ということだ。
システムが静かに表示する。
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【経済安定:中 → 高】
【人口:389(子供80)】
【産業】
・漁業
・繊維
・酒造
・武器製造(新)
・防具加工(新)
都市レベル:61% → 72%
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ユキが小さく言う。
『もう村じゃない』
シロガネも。
『群れでもない』
シリカが静かに言う。
『……町ですね』
俺は少しだけ笑う。
「ああ」
これはもう――
ただの生存じゃない。
“社会”だ。
そしてそれは、
静かに、だが確実に――
広がっていく。




