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逃走中に拾った男が、どう見ても一般人じゃない  作者: 綾見 恋太郎


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第十話 切れたふり

 午後の光は、古い倉庫街の色をますます薄く見せていた。

 海沿いの埋立地に並ぶ建物は、どれも元の用途を半分だけ失った顔をしている。使われているのか捨てられているのか分からない倉庫。文字の剥げた看板。潮風で白く曇ったシャッター。遠くではコンテナを積んだトレーラーが時々走るが、この一角だけは妙に静かだった。音がないのではない。風と、波と、遠い作業音がある。そのどれもが、人の気配を消す方向に働いていた。

 真壁彰は、停めた車の中から前方を見ていた。

 指定地点の手前。敵が見ている、あるいは聞いている前提で選ばれた場所だ。港湾道路から一本外れた、半分潰れたモーテルの裏手。営業はしているらしいが、看板のネオンは昼間でも半分しか点かず、駐車場には古い車が二台あるだけだった。建物の陰は多く、監視する側には都合がいい。逃げる側には良くない。だから向こうが好む。

 助手席で二階堂壮也がシートベルトを外しながら言った。

「もう一回だけ言う」

 振り返ると、後部座席の九条雅紀が窓の外を見たまま、小さく目だけ動かした。真壁は答えない。二階堂はそれでも続けた。

「本気でやって。芝居っぽいのが一番ばれる」

「……」

「でも、本当に切らないで」

「わかってる」

「その線だけ守って」

 二階堂の声は軽かったが、軽くしないと保てない種類の緊張がそこにあった。真壁は短く息を吐き、ドアに手をかけた。外の空気は乾いているのに、潮の匂いが混じる。冬ではないが、肌に触る風は冷たかった。

 三人が車を降りる。

 誰も必要以上に互いを見ない。見れば調整したくなる。調整すれば、それが芝居になる。いま必要なのは、作った喧嘩ではなく、作戦の形を借りた本物の衝突だった。

 モーテルの裏には、コンクリートが剥げた細い通路がある。壁に沿って古い室外機が並び、錆びた非常階段が二階へ伸びていた。表通りからは半分死角だが、少し離れた位置からなら十分に見える。音も抜ける。二階堂が選んだ場所だった。

「ここでいい」

 二階堂が周囲を一瞥し、立ち位置を調整するように自分だけ半歩引いた。その動きがもう演出だった。真壁はそれを意識し、逆に二階堂を見ないようにした。

 九条は壁際に立ったまま、腕を下ろしている。普段より無防備に見える立ち方だった。そう見えるようにしているのか、そうするしかないのかは分からない。真壁はその判断をしたくなかった。

「始めるぞ」

 二階堂が言い、そして黙る。

 風が一度強く吹き抜けた。モーテルの軋んだ外壁が小さく鳴る。真壁は九条の顔を見た。九条もこちらを見た。そこに合図はない。必要もない。もうここまで来て、何を言うかくらいは互いに分かっていた。

 最初に口を開いたのは九条だった。

「俺が出れば軽くなる」

 声は大きくなかった。だがこの場では、それで十分だった。

 真壁は一拍置いてから言った。

「またそれか」

「また、じゃない。ずっと同じ話だ」

「同じ話を繰り返してるのはお前だ」

「同じ答えを避けているのはお前だろ」

 真壁は九条に近づいた。靴の裏で砂が鳴る。自分の中に、あらかじめ用意していた怒りと、用意していない怒りがあるのが分かった。どこまでが必要で、どこからが勝手に出ているのか、線が曖昧だった。

 本気で怒っていると分かっていた。

 その怒りを見せることが今は必要だった。

 だが必要だから出しているのか、出してしまっているのか、自分でも境目が曖昧だった。

「軽くなるって何がだ」

「盤面」

「またそれを言うのか」

「現実の話をしている」

「人を駒みたいに言うな」

「駒として見てるのは向こうだ。なら利用するしかない」

 九条の声は静かだった。静かだからこそ、真壁の中で何かが擦れる。九条は感情で押してこない。その代わりに、感情を無視した論理だけを置いてくる。その置き方が、真壁にはいつも気に入らなかった。

「お前は、いつもそうやって自分を切る」

「切るんじゃない。使うだけだ」

「同じだ」

「違う」

「違わない」

 真壁は声を荒げた。予定通りかどうかなど、もう分からなかった。

「お前は、少しでも全体が軽くなると思ったら、自分を外す方へ寄る。そういう癖がある」

「癖でやっているわけじゃない」

「じゃあ何だ」

「必要だからだ」

 真壁は笑いそうになって、笑えなかった。必要。合理。成功率。九条はそういう言葉で、自分の身をいつも簡単に勘定に入れる。

「必要なら何でも飲むのか」

「飲むべき時は」

「ふざけるな」

「ふざけてない」

 九条の目がわずかに鋭くなった。ここまではいつもの応酬に近い。だが次に来る言葉が違うと、真壁は直感した。

「じゃあ何を残す」

 九条は真壁を見たまま言った。

「俺が出ないで、何が残る。追跡も、回収も、堀島も、全部こっちに寄っている。俺がいるからだ」

「だから勝手に決めるなと言ってる」

「勝手に決めているのはお前だ」

 真壁の眉が寄る。

「何だと」

「お前は、勝手に俺を残す側に置いている」

「残す?」

「そうだ。お前はいつも、自分の感情で盤面を歪める」

 その言葉は、予定されていた台詞のはずだった。二階堂が組んだ論点の一つでもあった。だが九条がそれを口にした瞬間、真壁には作戦の言葉には聞こえなかった。

「感情で、だと」

「そうだろ。お前は計算の話をしているふりをしながら、最後は気に入るか気に入らないかで止める」

「当たり前だろうが」

「何が」

「人を数で切るよりましだって言ってるんだよ!」

 声が通路に響いた。

 九条が黙る。二階堂はまだ入ってこない。止めるなら今だが、止めない。止めないこと自体が演出なのだと真壁は分かっていた。それでも、二階堂のその冷たさが少しだけ腹立たしかった。

「お前は自分を出せば済むと思ってる」

 真壁は続けた。

「それで全体が軽くなると思ってる。だがな、そういう切り方は結局、あとに全部残るんだよ」

「残る?」

「切られた方にも、切った方にもだ」

「それはお前の話だ」

「そうだ。俺の話でもある」

 九条の呼吸がわずかに止まった。真壁は自分でも、そこまで言うつもりがあったか分からない。ただ出た。止まらなかった。

「お前一人で終わる前提で話すな」

「終わらせるつもりじゃない」

「同じだ。お前がその位置に立つ時点で同じなんだよ」

「だったら何だ。抱えたまま沈めって言うのか」

「そんなことは言ってない」

「言っているのと同じだ」

 九条が一歩、前に出た。真壁も動かない。距離が詰まる。ここまで近づくのは予定より早かったかもしれないが、もう戻せない。

「お前は結局、自分が嫌なだけだ」

 九条が言う。

「俺を出すって形が」

「当たり前だろ」

「俺がいなくなる可能性を、自分の感情で拒否しているだけだ」

「それの何が悪い!」

「悪いとかじゃない。歪むって言っている」

 真壁は一瞬、言葉を失った。

 九条がここまではっきり噛みつくのは珍しかった。いつもなら、自分の身に関わる話でも、もう少し引いて答える。だが今日は違った。違う必要があるからか、それとも本当にそう思っているからか、その区別がつかない。

「お前は、盤面から人を引くことに慣れすぎてる」

 真壁は低く言った。

「慣れてるからそう言える」

「そうしなきゃ残らなかったからだ」

「そのやり方を今ここに持ち込むな」

「持ち込まないで済むなら、最初からやってない」

 真壁は九条の肩を掴みそうになって、寸前で拳を握り直した。ここで触れると早すぎる。まだ違う。

 二階堂がようやく入った。

「はい、そこまで――」

「引っ込んでろ」

 真壁の一言で、二階堂は本当に一瞬だけ止まった。普通なら軽口で割るところだ。だが今日の二階堂は、それをしない。友人としては止めたいが、作戦としては止めきれない。その冷たさが、横顔にだけ出ていた。

「真壁」

 今度は低い声で言う。

「見せるだけでいい」

「見せてるだろ」

「出しすぎるな」

「だったら最初からやらせるな」

 二階堂は何も返さなかった。返せないのではない。返せば、この衝突が薄くなると分かっているからだ。真壁はその判断まで含めて、二階堂らしいと思った。

 九条がそこで言った。

「もういい」

「よくない」

「いい。切るなら切れ」

「だからそういう言い方をやめろって言ってる」

「じゃあ何て言えばいい」

「勝手に終わるな!」

 真壁の声に、モーテルの裏階段で鳩が一羽飛び立った。羽音がやけに大きく聞こえる。

 九条はしばらく真壁を見ていたが、やがて目を逸らした。

「……分かった」

「分かってない」

「お前にそう見えるだけだ」

「またそれか」

「事実だろ」

 九条はそう言って、真壁の横を抜けた。通路の出口の方へ向かう。真壁は一瞬だけ追おうとして、止めた。まだだ、と自分に言い聞かせる。ここで追えば芝居が浅くなる。切れた直後に追うのは不自然すぎる。そう計算したつもりだった。

 二階堂が端末を見た。監視側の反応を拾っているのかもしれない。顔は読めない。

「届いてる」

 小さくそう言った。

 決裂は、向こうに届いたらしい。真壁は息を吐き、ようやく肩の力を抜こうとした。だが抜けなかった。九条が通路の出口を曲がる背中が、視界の端にまだ残っている。

「ここからだ」

 二階堂が言う。

「未練が残るくらいでちょうど――」

 その時だった。

 真壁は、九条の歩き方が変わったのに気づいた。

 ただ離れる歩き方ではない。視線を低くし、壁の死角へ自然に溶けるような角度。大きく逃げるのではなく、この場の構図から自分だけを外すための動きだ。九条は芝居の続きとして離れているのではない。ほんの少しだけ、本当に盤面から消えようとしていた。

「九条!」

 真壁は反射で動いた。

 二階堂が何か言ったが、聞こえなかった。通路を三歩で詰め、角を曲がる直前の九条の腕を掴む。勢いのまま、壁に押し戻した。乾いた音がした。恋愛めいた甘さは一切なかった。ただ、止めるための力だけがあった。

「何してる」

 真壁は低く言った。

「離れただけだ」

「離れ方が違う」

「作戦上、こっちの方が――」

「だから勝手に終わるな」

 九条の腕を掴んだまま、真壁は顔を寄せた。距離が近い。九条は振り払おうとしなかったが、目だけが鋭くこちらを見ている。

「お前一人で軽くした気になるな」

「軽くなるなら」

「なるかどうかを、お前が一人で決めるな」

「真壁」

「俺たちを盤面の外に置くな」

 その言葉で、九条の呼吸が一拍だけ乱れた。

 大きな変化ではない。ただ胸が、わずかに止まったように見えた。それで十分だった。第八話で口をついて出た複数形を、真壁はもう一度使っていた。計算ではない。意識したのでもない。ただ、いま止めるために必要な言葉として出た。

「……置いてない」

 九条が言う。

「置いてる」

「置いてない」

「置いてるから、今そうやって消えようとしたんだろうが」

 九条は目を逸らした。ほんの少しだけ。それだけで、真壁には答えの半分が見えた。

「切れたふりに入ったら、そのまま本当に外れた方が、成功率が上がる。そう思ったな」

「……」

「図星か」

「少しだけだ」

「少しでも同じだ」

 真壁は腕を離さなかった。離した瞬間、また九条が引く気がした。九条はこういう時、感情で飛び出すのではない。静かに、合理の顔をして消える。その消え方が一番厄介だと、真壁はもう知っていた。

「俺たちを外に置くな」

 もう一度言う。

「お前が出るなら、出る前提で全部組む。勝手に削るな」

「お前が言うな」

「何だと」

「お前だって、俺を勝手に残す側に置く」

「残すんじゃない。引き戻してる」

「同じようなもんだ」

「違う」

 真壁はそこでようやく、九条の腕を放した。代わりに肩を押して、壁から離さない位置に立つ。

「お前一人で決めるな」

「……」

 九条は返事をしなかった。だがさっきまでの、あまりにも整った静けさが少しだけ崩れていた。目線が定まらないわけではない。ただ、真壁の横を抜けて行く角度を失っている。

 そこへ二階堂が来た。

「今の」

 言葉が妙に平板だった。怒っているのか呆れているのか、一瞬分からない。

「作戦としては最悪寄り」

「分かってる」

「でも」

 二階堂は二人を見比べ、短く息を吐いた。

「一番人間っぽいから通る」

 真壁は眉を寄せた。

「どっちだ」

「両方。真壁、お前は切ったつもりでも切りきれない顔をした。九条、お前は切られた流れに入ると本当に消えかける。そのどっちも、嫌なくらい本物だった」

「嬉しくない」

「俺も嬉しくないよ」

 二階堂は端末を見た。画面に入った通知を素早く読み、口元だけ動かす。

「反応あり。向こう、今のやり取りを見たか聞いたかしてる。『未練が残ってるのは分かった』だってさ」

「趣味が悪い」

「本当にね」

 二階堂は九条に視線を向けた。

「九条。今の離脱は二度とやらないで」

「……」

「返事」

「やらない」

「たぶんじゃなくて?」

「やらない」

 二階堂は少しだけ眉を上げたが、それ以上は追わなかった。いま必要なのは説教ではない。形を整え直すことだ。

「ここから修正する」

 二階堂は通路の中央へ戻り、二人にも位置を示した。

「向こうから見える構図は、こう。真壁は本気で切ろうとした。でも完全には切れない。だから俺が間に入る余地がある。九条は切られた流れの中で、自分からは動かない。でも放っておくと消える可能性がある。だから管理が要る」

「物みたいに言うな」

 真壁が言うと、二階堂は即座に返した。

「向こうに説明する言葉として言ってる。俺だって好きじゃない」

 それから二階堂は、まるで舞台の立ち位置を直すみたいに細かい調整を始めた。真壁は通路の出口側。九条は壁際。二階堂はその中間。誰が誰を視界に入れるか。どこで遮るか。どこまで近づくと本気の揉み合いに見え、どこからが庇いに見えるか。そんなことまで考えている。

「もう一回、短くやる」

「まだやるのか」

「必要。今の本物を、向こうにとって読みやすい形に薄く乗せる」

 二階堂の声に、さっきまでの友人の色はほとんどなかった。冷たいわけではない。だが演出家の顔になっている。真壁はその横顔を見て、こいつもこいつで無茶をしていると思った。上手いからこそ、嫌な役回りを引き受けるしかない。引き受けて、あとで自分の中に残るものも分かっているはずなのに。

 短い再演は、さっきより静かだった。

 真壁は九条に背を向ける角度で立ち、九条はそれを追わない。二階堂が間に入り、「抱えきれないなら俺が通す」と低く言う。真壁が「好きにしろ」と吐き捨てる。その声に、さっきの本物の熱がまだ残っている。九条は何も言わない。ただ一度だけ視線を下げ、それが「切られた」側の温度として十分に見えた。

「はい、終わり」

 二階堂が小さく言った時には、三人ともさっきより疲れていた。短いはずのやり取りが、妙に体力を削る。

 その直後、端末が震えた。

 二階堂が画面を見る。今度は全員がその表情を待った。二階堂は数秒だけ読み、真壁に画面を見せる。

 表示されていたのは短い文面だった。

『明日二十時。旧第七埠頭第三倉庫裏。仲介役一名まで同伴可。確認対象は先生のみ。余計な人数は切る』

 真壁は奥歯を噛んだ。

「俺は外されたか」

「うん」

「分かってたけど、腹立つな」

「前を切る人を正面から入れないのは、向こうとしては当然」

 二階堂はさらに画面をスクロールした。続きがある。

『確認後、移送可否を判断する』

「移送」

 真壁が吐き捨てるように言う。

「本当に物みたいだな」

「だからこそ、そこに入れる」

 九条が低く言った。真壁はそちらを向いたが、さっきほどの熱はもうなかった。代わりに、冷えた現実だけが残っている。

「行くのは、俺と二階堂か」

「形式上はそうなる」

「形式上じゃなく、本当にそうだろ」

「だから、その外で何をするかを考えるのが君の役目」

 二階堂は端末をポケットに入れた。

「ここから先は、引き渡し地点に行くこと自体が潜入の開始になる。確認される。選別される。九条だけ見られるわけじゃない。俺も見られる」

「堀島も来る」

 九条が言った。

 二階堂と真壁が同時にそちらを見た。九条は通路の先、港の方角を見ていた。

「何でそう思う」

 真壁が訊く。

「渡される形になるなら、あの人は嫌う」

「……」

「自分で来るなら止めない。でも誰かに通される形は壊したがる」

 二階堂が小さく頷いた。

「線とも合う。これ、堀島にも漏れる」

「漏れるじゃなく、最初からどこかで嗅いでいる可能性もある」

「あるね」

 風がまた吹いた。遠くで船の低い汽笛が鳴る。旧第七码頭第三倉庫裏。場所は具体的だ。時間も出た。仲介役一名まで。真壁は外され、二階堂だけが同行を許される。そこに堀島が割り込む可能性が高い。

 ここまで来ると、成功したと言うしかない。芝居は通った。切れたふりは成立した。向こうはそれを信じ、次の段階へ進めてきた。

 だが真壁には、それが成功には思えなかった。

 成功したせいで、引き返せなくなった。

 その感覚だけが、やけにはっきりしている。九条を切ったように見せた。二階堂が拾ったように見せた。その先にあるのは、ただの引き渡しではない。敵の中へ入ることそのものだ。しかも自分は正面から入れない。

「戻るぞ」

 真壁が言うと、二階堂が頷いた。九条も黙って歩き出す。三人は通路を抜け、駐車場へ戻った。

 車に乗り込む直前、真壁は港の奥のクレーン群を見た。動いていないのに、見張っているもののように立っている。そのさらに向こう、倉庫街のどこかに、もう別の目がある気がした。

「来るな」

 真壁が誰にともなく言うと、九条が助手席のドアに手をかけたまま短く返した。

「来る」

 二階堂が運転席に座り、エンジンをかける。

「だったら、来る前提で組むしかない」

 車がゆっくり走り出す。モーテルの看板が後ろへ流れる。通りに出ると、いつも通りの港湾道路だった。大型車が走り、信号が変わり、誰も三人のことなど知らない顔をしている。

 その普通さが、かえって不穏だった。

 切れたふりは成功した。

 成功したから、次は本当に敵の手の届く場所へ行かなければならない。

 真壁は窓の外を見たまま、もう後戻りはできないのだと、ようやく体で理解し始めていた。


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